「私の恋の相手は幽霊。彼の幽霊に恋をしてる」
アカデミー作品賞に輝いたドラマ映画『イングリッシュ・ペイシェント』が、BSでテレビ放送されます。
この記事では、『イングリッシュ・ペイシェント』のあらすじとキャスト、原作小説との違いついてお伝えします。
- 『イングリッシュ・ペイシェント』テレビ放送(2024)はいつ?上映時間は?
- 『イングリッシュ・ペイシェント』あらすじ【全身にやけどを負った男“イギリス人の患者”に秘められた過去とは?】
- 【主人公を演じたのは?アカデミー賞を獲ったジュリエット・ビノシュとは?】登場人物&キャスト
- 【原作小説『イギリス人の患者』との違いは?】映画『イングリッシュ・ペイシェント』
『イングリッシュ・ペイシェント』テレビ放送(2024)はいつ?上映時間は?
『イングリッシュ・ペイシェント』は1996年のアメリカ映画。
フロリダの刑務所に入れられた男が、理不尽なルールに反抗してゆく人間ドラマです。
映画『イングリッシュ・ペイシェント』概要 | |
---|---|
原題 | The English Patient |
上映時間 | 162分(2時間42分) |
監督 |
アンソニー・ミンゲラ(『コールド マウンテン』) |
原作 | マイケル・オンダーチェ『イギリス人の患者』 |
音楽 | ガブリエル・ヤレド(『ベティ・ブルー』) |
出演 | レイフ・ファインズ、ジュリエット・ビノシュ |
受賞歴 | アカデミー作品賞、助演女優賞(ジュリエット・ビノシュ)、撮影賞 |
13:00 ~ 15:43
映画の上映時間は、2時間42分です。
『イングリッシュ・ペイシェント』あらすじ【全身にやけどを負った男“イギリス人の患者”に秘められた過去とは?】
1944年。第二次大戦末期のイタリア。
飛行機事故によって全身にやけどを負った男(レイフ・ファインズ)が、野戦病院に運びこまれてきます。患者は英語を話せるものの、名前は思い出せません。
カナダ人看護師のハナ(ジュリエット・ビノシュ)は、部隊を移動しながらの看病は患者のためにならない、と考えます。
ハナは部隊を離れ、廃墟となった修道院に患者を運びこみます。
男は“英国人の患者”(イングリッシュ・ペイシェント)と名付けられ、ハナの献身的な看護を受けます。
男は、少しずつ失った記憶を取り戻してゆきます・・・
・・・1930年代、男はサハラ砂漠の地図を作るため、考古学調査隊の一員としてリビアの砂漠を探検していました。調査には、考古学者のジェフリーとその妻・キャサリン(クリスティン・スコット・トーマス)も加わります。
「あんな形容詞の少ない論文は初めて」
出会って早々、キャサリンは男の書いた論文を皮肉ります。
やがて男は、教養があり大胆なキャサリンにひかれてゆきますが・・・
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【主人公を演じたのは?アカデミー賞を獲ったジュリエット・ビノシュとは?】登場人物&キャスト
吹き替えはDVD版のもの。NHK BSでの放送は字幕です。
ラズロ・アルマシー/イギリス人の患者
演:レイフ・ファインズ/吹き替え:津嘉山 正種(つがやま まさね)
主人公。飛行機事故でやけどを負い、寝たきりになった男。記憶がほとんどないが英語を話すことから、「イングリッシュ・ペイシェント」(イギリス人の患者)と呼ばれる。
“イギリス人の患者”を演じたのは、イギリスの俳優レイフ・ファインズです。
舞台俳優としてキャリアをスタートさせ、ハリウッド映画にも数多く出演する実力派俳優。シェイクスピアやイプセンなど、文芸作品を得意としています。
・『シンドラーのリスト』(1993)・・・ナチスによるユダヤ人大虐殺から、多くの命を救った実業家の半生を描く戦争ドラマ。
・『ナイロビの蜂』(2005)・・・イギリスの外交官が、製薬会社の不正がからんだ陰謀に挑むサスペンス。
・『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』(2005)・・・ハリーが魔法学校の対抗試合に出場する、シリーズ4作目。ファインズは、ハリーの宿敵・ヴォルデモート役。
ハナ
演:ジュリエット・ビノシュ/吹き替え:山像 かおり(やまがた かおり)
Juliette Binoche
— Emir Han (@RealEmirHan) May 1, 2023
The English Patient (1996) pic.twitter.com/KC1yyqicqT
(出典:Emir Han on X)
カナダ人の看護師。野戦病院で負傷兵の看護をしていた。“イギリス人の患者”を看取るため、修道院に残って看病をつづける。
ハナを演じるのは、フランスの俳優ジュリエット・ビノシュ。カンヌ、ヴェネチア、ベルリンの三大映画祭、アカデミー賞でも女優賞を獲った国際派女優です。
侯 孝賢(ホオ・シャオシェン=台湾)、ラッセ・ハルストレム(スウェーデン)、アッバス・キアロスタミ(イラン)、ミヒャエル・ハネケ(ドイツ)、といった世界的名監督の作品に出演しています。
・『ポンヌフの恋人』(1991)・・・パリのセーヌ川を舞台に、ホームレスの青年と美大生の純愛を描く。
・『ショコラ』(2000)・・・古いしきたりを重んじる村に不思議なチョコレートを売る母娘がやってきて、変化をもたらすファンタジー。
・『真実』(2019)・・・自伝を出版したフランスの大女優とその娘のあいだに隠された秘話を描くドラマ映画。是枝裕和 監督。
『ショコラ』の記事では、ジュリエット・ビノシュ出演のおすすめ映画も紹介しています。
キャサリン・クリフトン
演:クリスティン・スコット・トーマス/吹き替え:戸田 恵子
考古学者ジェフリーの妻。“イギリス人の患者”(アルマシー伯爵)と、リビアの砂漠で出会う。
名セリフ「苦しんでるのは自分だけだと思っているの?」
キャサリンを演じるのは、イギリスの俳優クリスティン・スコット・トーマス。
パリで舞台を学んでいたことから、フランス語も堪能です。
・『フォー・ウェディング』(1994)・・・結婚に前向きになれない男性を通して、結婚の意味を問うロマンティック・コメディ。
・『ミッション:インポッシブル』(2000)・・・チームを崩壊させられたIMFのエージェントが、事件の黒幕を暴くスパイ・アクション。スコット・トーマスはチームの初期メンバー、サラ役。
・『サラの鍵』(2010)・・・アメリカ人のジャーナリストがパリで起こったユダヤ人迫害事件の真相を調べる、戦争ドラマ。
デヴィッド・カラヴァッジョ
演:ウィレム・デフォー/吹き替え:野沢 那智(のざわ なち)
ハナの父の友人で、元泥棒。
カナダ軍でスパイ活動をしていたが、ナチスに捕まり、拷問を受けた。
キップ
演:ナヴィーン・アンドリュース/吹き替え:江原 正士(えばら まさし)
爆弾処理の専門家。ハナと“イギリス人の患者”が暮らす修道院にやってくる。
Naveen Andrews, o eterno Sayid de 'Lost', fala sobre seu papel na nova série 'Sense8'. http://t.co/VtYTk6WVXr pic.twitter.com/EQDGOFuIXF
— Jornal O Globo (@JornalOGlobo) June 14, 2015
(出典:Jornal O Globo on X)
ナヴィーン・アンドリュースは、インド系イギリス人。大ヒットドラマ『LOST』では主要メンバーのひとり、サイードを演じています。
ジェフリー・クリフトン
演:コリン・ファース/吹き替え:大塚 芳忠(おおつか ほうちゅう)
Colin & Kristin
— Michael Warburton (@MichaelWarbur17) December 16, 2023
THE ENGLISH PATIENT (1996) pic.twitter.com/rgA6L1GeZI
(出典: Michael Warburton on X)
考古学者で、キャサリンの夫。
コリン・ファースは、のちに『英国王のスピーチ』(2010)や『キングスマン』(2014)などに出演するスター俳優となります。
【原作小説『イギリス人の患者』との違いは?】映画『イングリッシュ・ペイシェント』
『イングリッシュ・ペイシェント』には、映画でなければ表現できないようなシーンがあります。
たとえば、1時間51分34秒。
真っ暗な修道院のなか。たいまつを持った看護師のハナが、ロープウェイのように縦横無尽に移動し、宗教画を見てまわるシーンがあります。
不発弾があるかもしれない、修道院。ハナと若い工兵・キップを、やさしく見守る宗教画。「死」と「生」が同居しているような、美しい映像表現です。
いっぽうで、「話のすじを追いにくい」という意見も聞きます。
『イングリッシュ・ペイシェント』の脚本は、ハリウッドの大作映画にはめずらしく、三幕構成をとっていません(日本でいうなら、起承転結が見えにくい)。
〈映画『イングリッシュ・ペイシェント』の構成〉
- 現代パートはハナと、一部は元・泥棒のカラヴァッジョ
- 過去パートはやけどの男(=イギリス人の患者)
を主人公とし、過去と現在が交互に描かれます。
テーマらしきものが見えてくる場面も、限られています。
1時間45分35秒。
「エジプト人は植民地化を嫌い、我々を追い出したがっている。英国の称号など、欲しくないだろ?」
マイケル・オンダーチェの原作小説『イギリス人の患者』は、さらに話のすじを追いにくくなっています。
〈小説『イギリス人の患者』の構成〉
- 看護師のハナ
- 元泥棒、スパイのカラヴァッジョ
- インド生まれの工兵・キップ
- やけどの男(=イギリス人の患者)
の4人を主人公とし、映画版よりも現在と過去を行ったり来たり・・・
心の傷、国家、歴史と個人、愛といやし。目的を持って行動しているというより、“魂の再生”を描いているので、ストーリーを理解しにくい構造になっています。
もちろん、難しく読むこともできます。
・インド生まれのキップがイギリスの戦争を闘っていることから、イギリスの植民地政策を批判しているのではないか?
・ヘロドトスの『歴史』、タキトゥスの『年代記』などを引用していることから、西洋の歴史観とは違う、個人によった“新たな歴史観”を提示しているのではないか?
【参照】『The English Patient』における「歴史」と「物語」
しかし、原作『イギリス人の患者』最大の魅力は、詩的で美しい文章です。
p62
その世界からは、二人の男が惑星に見えた。
p118
父は、お腹をすかせた幽霊。曖昧で不確かな存在。
p128
恋愛物語は、心を見失う二人の物語ではない。無口なもう一人の住人の物語だ。
p167
その無言の暗号が女には好ましい。
p169
負い目。返してない借金。果てしてない約束。
短いセンテンスの羅列がもたらす、心地よい余韻。
たとえるなら、つながりのないピース同士をくっつけたのに、奇跡的に美しいモザイク模様が完成したジグソーパズル。
読後感のよい小説に出会いかたには、おすすめです。
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