「次のA~Eのうち、本文の内容と一致するものを選べ」
「次の1~5のうち、筆者の主張と一致するものには〇、一致しないものには✕をつけよ」
大学受験の長文読解では、このような設問がよく出題されます。配点も高いケースが多く、合否を左右する問題です。
この記事では、筆者の主張や論理展開を読み解くうえで“強力な武器”となる、「長文の型」についてご紹介します。
- 【はじめに】大学受験の英語長文の学習法
- 筆者の主張を読み解くコツ①【エッセイ型の長文】
- 筆者の主張を読み解くコツ②【論文タイプの長文】PREP法
- 筆者の主張を読み解くコツ③【2つの異なる立場があるテーマの長文】PREP“譲歩”型
- まとめ
【はじめに】大学受験の英語長文の学習法
大学受験の英語長文の問題は、ものすごく良くできています。
本文の内容を問うていても、実際には単語や文法の基礎知識がなければ、選択肢を判別できなかったりします。
これからご紹介する英語長文の「型」は、単語や文法の基礎力、そして構文を見抜くチカラがあって初めて役立つ知識です。
下記のリンク先では、偏差値50の人が早慶レベルの長文読解力をつけるまでのロードマップをご紹介しています。
筆者の主張を読み解くコツ①【エッセイ型の長文】
日本語で「エッセイ」というと、自由な形式で書かれた散文をイメージします。
しかし、英語で「エッセイ」(essay)というと、(何かしらの課題に対する)短い評論・小論文を意味しており、決まった「型」を持ちます。
英語のエッセイ(essay)の基本的なフォーマット
・Introduction(導入)
・Body paragraph(ボディ パラグラフ)
・Conclusion(結論)
英語のエッセイ(essay)は、「Introduction」(導入)、2~5つのパラグラフからなる「Body paragraph」(本論、メイン)、「Conclusion」(結論)の3つのパートから成ります。
1.イントロダクション(導入)
エッセイ(essay)の導入部分。
読者の興味をひくような書き出しで始まり、自分が述べたいテーマについての主張(thesis sentence)も含まれます。“導入”とは呼ばれているものの、実際は“結論”とほぼ同じ。
よくあるパターンが、疑問文を冒頭に持ってきて、それに答えてゆくスタイル。
2.ボディ・パラグラフ(本論、メイン)
エッセイ(essay)のメインとなる部分。
導入で述べた主張について、論点をもとに理由や根拠を述べてゆくパート。筆者の主張をサポートするような具体例や事例を挙げてゆきます。
ボディ・パラグラフは複数のパラグラフから成りますが、「1つのパラグラフには1つのトピック」というルールがあります。
たとえば、第3パラグラフで具体例①を述べたとします。具体例②について述べるとき(=トピックを変えるとき)は段落も変え、第4パラグラフで述べるのが原則です。
3.コンクルージョン(結論)
エッセイ(essay)の総まとめとなる部分。
ボディ・パラグラフで触れた内容をまとめ、結論を述べます。まったく同じ言い回しは避けながら、導入で述べた主張(thesis sentence)を言い換えます。
英語のエッセイの基本型とは、シンプルにいうと、
② 結論の根拠となる具体例
③ もういちど結論
という流れを持っています。
筆者の主張を読み解くコツ②【論文タイプの長文】PREP法
PREP法(プレップ法)とは、特にビジネス文書やプレゼンテーションでよく用いられる長文の型です。
PREP法(プレップ法)のフォーマット
・Point(結論)
・Reason(理由)
・Example(具体例)
・Point(もういちど結論)
最初に結論を伝えて、ひと通り具体例を述べたあと、最後にもういちど結論を述べます。
Point、Reason、Example、Pointの頭文字をとって「PREP法」と名付けられています。
主張が伝わりやすいことから、筆者があるジャンルの専門家で、読者を説得したいときによく用いられます。
英語のブログも、この型をよく使います。
1.Point(結論)
長文の要点にあたる部分。
筆者は何がしかのtopic(論点)を設定し、自分の主張を先に述べておきます。
たとえば、
「自転車のヘルメット着用は義務付けるべきか?」
といった問いかけからスタートし、どちらの立場を取るのか明確にしておきます。
2.Reason(理由)
Pointで述べた主張の裏付けとなる根拠・理由を示します。
3.Example(具体例)
Reasonを裏付けるため、数字・資料などのデータ、具体例を挙げるパート。
ここでも、「1つのパラグラフには1つのトピック」というルールに基づき、具体例をいくつか書くなら、その度にパラグラフを分けるのが原則です。
4.Point(もういちど結論)
筆者の主張を裏付ける具体例・詳細を述べたあと、もういちど最初に述べた結論をくり返します。
厳密にいうと、英語の医学論文、科学論文にはそれぞれ、また別の「型」があります。
しかし、突きつめると、PREP法(プレップ法)とほぼ似たような構成となります。つまり、PREP法(プレップ法)の「型」さえ知っておけば、“論理の流れ”がわかるようになります。
筆者の主張を読み解くコツ③【2つの異なる立場があるテーマの長文】PREP“譲歩”型
PREP法(プレップ法)の応用バージョン。
相反する2つの意見があって、どちらか一方だけが正しいとは言い切れないテーマを扱う場合。
PREP“譲歩”型のフォーマット
・Point(結論)
・“譲歩”(反対意見への配慮)
・Reason(理由)
・Example(具体例)
・Point(もういちど結論)
AとB、2つの立場があるようなテーマで、筆者が自分の意見だけを主張すると、押しつけがましい印象を与えてしまいます。
そこで、反対の意見をもつ人たちに「譲歩」することによって、相手の立場を認めつつも自分の意見を伝えることができます。
日本語の「譲歩」は“意見をゆずって妥協すること”を意味します。
しかし、英語の「譲歩」は、都合の悪い部分は相手の主張も認めつつも、その後しっかり自己主張します。
PREP“譲歩”型の論理展開で、よくあるパターン
わかりやすいように、PREP“譲歩型”の論理展開の例を、日本語でご紹介します。
② “譲歩”:確かに、にぎやかなほうが楽しいときもある
③ Reason:しかしながら、群れないことにメリットを感じて、「ぼっち」を選ぶ人だっているのだ
④ Exampleその1:「ぼっち」は、独力で判断するクセがつく
Exampleその2:空気を読んで、キャラを演じずに済む
Exampleその3:失敗したときはみずから責任を負うので、人として自立できる
⑤ Point:ゆえに、「ぼっち」はデメリットばかりではない
この長文の筆者は、「ぼっち」にもメリットはある、という考えの持ち主。
しかし、人によって意見が分かれるようなテーマの場合、一方的に主張するのは身勝手な印象を与えてしまいます。
そこで、論を展開する前に、反対派の意見にも一理あることを述べておきます。これが
“譲歩”です。自分の論の欠点は認めておきつつ、自分の主張はちゃんと通します。
実は、PREP“譲歩”型の英語長文は、早慶レベルのような難関大学で好んで出題されます。これは、出題者の気持ちになるとわかります。
「AとB、2つの意見のうち、筆者はどちらの立場を取っているのか?」
ん? 本文にはAという表現もあるし、Bという表現もあるぞ。どっちだ?
読解力がある受験生でないと、見極めるのは難しくなります。それだけハイレベルな問題を作成しやすいのです。
PREP“譲歩”型の見分け方【ディスコース・マーカーを知っておこう】
「ディスコース・マーカー」とは、長文において“論理展開をしめす目印”となる言葉のこと。文と文の論理をつなぐ接続詞や副詞を指します。
第2パートの“譲歩”で使われやすいディスコース・マーカー
・Certainly 確かに
・Indeed 確かに
・Of course~ もちろん~だ
・Some people say~ 一般的には~と言われている
第3パートの「Reason」の冒頭で使われやすい、“逆接”のディスコース・マーカー
・However----- しかしながら
・Nevertheless----- それにも関わらず
・All the same----- それでもやはり
“譲歩”と“逆接”はセットで使われることが多く、
- 確かに~だ。しかし、私は-----だと思う
- ~のようだが、しかし-----
のように論理を展開します。大事なのは、「しかし」の後。
第2パートで一般論(=筆者とは反対の意見)を述べておき、第3パートで逆接のあと、筆者の主張へと持ってゆく論理構成です。
もし、第2パートの冒頭に“譲歩”のディスコース・マーカーがあり、第3パートの冒頭に“逆接”のディスコース・マーカーがあれば、しめたもの。
筆者の主張は、逆接の接続詞のすぐ後にきます。内容一致問題で、もっとも問われやすいのはこの箇所。難関大学でも得点しやすくなります。
まとめ
長文の「型」を知っておくと、筆者の主張を見失いにくくなります。
特にPREP法(プレップ法)の型を覚えておけば、「論文タイプ」「意見主張型」の長文にかなり強くなります。
「型」を見抜くチカラを養うには、入試本番と同じ分量の英語長文を解いておく必要があります。
1.赤本を解いて、実力と問題の傾向を知っておく
2.基本の英単語を覚える
3.英文法の基礎をかためる
4.精読(英文解釈)の練習
5.赤本で問題演習、英文法の問題演習
そこで、上の表でいう4の精読(英文解釈)までひと通り勉強したなら、あとは赤本で演習するのがおススメ。
できれば、過去20年ぶんの赤本をそろえます。
そして、「型」を意識しながら長文読解に取り組むのです。志望校の好むテーマや問題の傾向、分量、設問の形式を知るのに、赤本ほどの教材はありません。
いま読んでいるパラグラフは、長文全体のうち
“譲歩”にあたるのか?
Reason(理由)にあたるのか?
それともExample(具体例)にあたるのか?
「型」を見抜くことで、筆者の論理展開が手に取るようにわかります。英文解釈をひと通り勉強したのに点数が上がらない、という人は「型」を意識してみてください。