「あなたは? あなたの望みは?」
「いい人間になりたい」
泣ける! ヒューマン・ドラマの名作、映画『ギルバート・グレイプ』がBSでテレビ放送されます。
この記事では、映画『ギルバート・グレイプ』のあらすじご紹介。また、原作と照らし合わせながら、原作者が伝えたかったメッセージを読み解いてゆきます。
- 『ギルバート・グレイプ』BSでのテレビ放送はいつ?原題の意味は?ディカプリオは何歳だった?
- 『ギルバート・グレイプ』あらすじ【家族のために自分を犠牲に!心優しい青年を変える、少女との出会い】
- “ギルバート・グレイプを苦しめていたもの”とは?【いい人になりたい】本当の意味も解説!
『ギルバート・グレイプ』BSでのテレビ放送はいつ?原題の意味は?ディカプリオは何歳だった?
『ギルバート・グレイプ』は1993年のアメリカ映画。
家族の面倒をみるため田舎町を離れられない青年が、少女との出会いをきっかけに人生を見つめ直す、ヒューマン・ドラマです。
自閉症の弟を演じたレオナルド・ディカプリオは、当時19歳。アカデミー助演男優賞にノミネートされています。
映画『ギルバート・グレイプ』 | |
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原題 | What's Eating Gilbert Grape |
製作 | 1993年 |
製作国 | アメリカ |
上映時間 | 117分 |
監督 | ラッセ・ハルストレム(『ショコラ』) |
原作 | ピーター・ヘッジズ『What’s Eating Gilbert Grape』 |
脚本 | ピーター・ヘッジズ |
出演 | ジョニー・デップ、レオナルド・ディカプリオ、ジュリエット・ルイス |
原題は【 What's Eating Gilbert Grape 】。
直訳すると、「何がギルバート・グレイプを食べているのか?」となります。ただ、【 eat 】には、「~を悩ませる、イライラさせる」という使い方もあります。
全体で「何がギルバート・グレイプを苦しめているのか?」という意味になり、作品の主題にもなっています。
映画『ギルバート・グレイプ』のテレビ放送は、2022年4月27日(水)。NHKのBSプレミアムの「BSシネマ」にて。
13:00 ~ 14:59
字幕スーパーでの放送となります。
『ギルバート・グレイプ』あらすじ【家族のために自分を犠牲に!心優しい青年を変える、少女との出会い】
アイオワ州のいなか町、エンドーラ。食料品店ではたらく青年・ギルバート(ジョニー・デップ)は生まれてから24年間、この町から出たことがありません。
ギルバートは、知的障害をもつ弟・アーニー(レオナルド・ディカプリオ)と過食症で動けない母・ボニーの世話をしています。姉と妹の生活も支えています。
家族を捨て、自分だけ町を出るわけにいかなかったのです。
さて、弟アーニーの18歳の誕生日が、次の日曜日にせまっていました。しかし、パーティの準備でなにを受け持つか、言い合いになってしまい、ギルバートはうんざり。
あるとき、アーニーが町の給水塔によじ登り、警察も出動する騒ぎを起こしてしまいます。その様子を見ていたのが、少女・ベッキー(ジュリエット・ルイス)です。
トレーラーに乗って世界を旅していたベッキーは、トレーラーが故障したため、エンドーラの町にとどまることになったのです。
風のように自由なベッキーと出会い、ギルバートの気持ちにも変化が訪れ・・・
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“ギルバート・グレイプを苦しめていたもの”とは?【いい人になりたい】本当の意味も解説!
優しい若者を追いつめる“田舎の閉塞感”! 実はそれだけではない?
中盤。1時間01分32秒。
ベッキーとギルバートはこんな会話を交わします。
ベッキー「あなたの望みを浮かべて」
ギルバート「新しい家を僕の家族に。お袋にエアロビクスを。アーニーに新しい脳を・・・」
ベッキー「自分には? あなたの望みは?」
ギルバート「いい人間になりたい」
弟や太ったママの面倒を見ているギルバート。ただでさえ優しい彼が、「いい人になりたい」なんて・・・
映画だけを見ていると、さびれた田舎の閉塞感が、優しい青年を追いつめている・・・そんな風に受け取れます。
しかし、原作『What's Eating Gilbert Grape』を読むと、この作品はもっと広い意味での社会批判・哲学的示唆に富んでいることがわかります。
不平等と欺瞞(ぎまん)、アメリカ社会への批判? 原作が突き付ける【いい人になりたい】の意味とは?
英語タイトル【 What's Eating Gilbert Grape 】は、「何がギルバートをイライラさせているのか?」という意味でした。
この物語は、ギルバートを苦しめているものの正体を突き止める話、でもあります。
原作を読みすすめると、この問いの答えとして、以下のような候補があげられます。
② ギルバートを苦しめているのは、“いい人であろうとすること”である。
③ ギルバートを苦しめているのは、父と同じように感情を押し殺し、じっと我慢する生き方である。
①は表面的な答え。
③はベッキーに気づかされる答えです。このままじゃ、自殺したお父さんと同じ末路をたどってしまうよ、と。
1. What's Eating Gilbert Grape
— @america (@atamerica) October 7, 2022
Dari poster aja udah eyecatching ya, ada Leonardo Dicaprio dan Johny Depp ya. Tapi film ini agak nano nano dan mengandung bawang. Siap siap baca sinopsisnya........ pic.twitter.com/T5uR5WmnKY
解釈が難しいのが②。
ギルバートは感情を表に出さないキャラクターなので、映画だと本音が見えません。しかし、原作では、たびたび嫌悪感をあらわにします。
- 町を出て行った“偽善者”の友人がキャスターとして成功し、チヤホヤされていることへの怒り。
- 障害者だけの徒競走で、みんなを1位にしようとする、“うわべだけの平等”に対する嫌悪感。
原作には、こんな場面もあります。
星条旗(=アメリカ)を連想させる服を着たアーニーは、障害児たちが集まる仮装大会に参加します。アーニーは、暴力で他の子たちをねじ伏せようとします。でも、アーニーは障害者なので、そこまで怒られません。
これを見たギルバートは、
「弟のふるまいは、“今日のアメリカ”と同じだ。チカラで他者を打ちのめそうとしている・・・」
と、皮肉を言っているのです。
正直者(=いい人)が我慢を強いられ、他人をあざむいている人間のほうが幸せな生活を送っている・・・そんなアメリカ社会の“不平等”に対する怒りが、原作には散りばめられています。
小説を書いたのは、ピーター・ヘッジズ。
彼は映画『ギルバート・グレイプ』の脚本も書いています。ただ、映像化するにあたって“核”となる部分を削っています。
【英語版】を読める人は、ぜひ原作も手に取ってほしい。
80~90年代のアメリカ文学らしく、巧みに使われたメタファーと哲学的示唆。映画とはひと味違う感動があります。