「一度は正しいことをしたい。また僕から逃げないで・・・」
すべてに不満がある青年と、そんな息子と向き合えない両親。
若者の繊細な心を描いた青春映画の名作『理由なき反抗』が、BSプレミアムでテレビ放送されます。
この記事では、『理由なき反抗』のあらすじとキャスト、映画が製作された時代背景についてご紹介します。
- 『理由なき反抗』テレビ放送(2023)はいつ?原題の意味は?原作はある?
- 『理由なき反抗』あらすじ【問題ばかり起こすジムは、不良のリーダーとチキンレースで競うが…】
- 『理由なき反抗』登場人物&キャスト
- 『理由なき反抗』時代背景【1950年代、アメリカ理想の家族像とは?】
- 考察【若者たちの反抗は,“父性の欠如”が理由だった?】
『理由なき反抗』テレビ放送(2023)はいつ?原題の意味は?原作はある?
『理由なき反抗』は1955年のアメリカ映画。
傷つきやすい少年が転校した高校で不良と問題を起こし、周囲とのあつれきに苦しむ人間ドラマです。
映画『理由なき反抗』概要 | |
---|---|
原題 | Rebel Without a Cause |
上映時間 | 119分 |
監督 |
ニコラス・レイ(『大砂塵』) |
音楽 | レナード・ローゼンマン |
出演 | ジェームズ・ディーン、ナタリー・ウッド、サル・ミネオ |
受賞歴 | アカデミー助演男優賞(サル・ミネオ賞(ナタリー・ウッド) |
13:00 ~ 14:52
ロバート・リンドナーという医師が書いた『理由なき反抗 - 犯罪精神病質者の催眠分析』という精神分析の本があります。このタイトルだけを参考にし、ニコラス・レイが10代の若者たちの反抗心や鬱屈した思いを物語にしました。
原題は【 Rebel Without a Cause 】。Rebelは「反逆者」、Causeは「原因」。直訳すれば「原因がない反逆者」となりますので、ストレートな日本語タイトルといえます。
『理由なき反抗』あらすじ【問題ばかり起こすジムは、不良のリーダーとチキンレースで競うが…】
復活祭の真夜中。
17歳のジム・スターク(ジェームス・ディーン)は暴行の容疑で、警察に連行されます。
ジムは警察署で、夜間外出で保護された少女・ジュディ(ナタリー・ウッド)や子犬を撃った疑いをかけられたプレイトー(サル・ミネオ)と知り合います。3人は警察官から説教されたのち、親たちに引き取られて帰宅します。
ジムが喧嘩に明け暮れるせいもあり、スターク家は引っ越しばかり。ジムは話をはぐらかす両親に対し、不満を募らせていました。
さて、翌日。
新しい高校へ転校したジムは、ジュディに話しかけます。しかし、ジュディと親しい不良学生たちから目をつけられます。不良のリーダー・バズから喧嘩を売られたジムは、不良たちと「チキン・ラン」という度胸試しをすることになります。
ジムとバズは、切り立った崖(がけ)まで猛スピードで中古車を走らせ、どちらがギリギリまで車に乗っていられるか、勝負したのです。
ところが!
ジムは崖から落ちる瞬間に飛び出しますが、バズは谷底に落ちてゆき・・・
『理由なき反抗』登場人物&キャスト
ジム・スターク
演:ジェームズ・ディーン
主人公。問題行動ばかり起こす17歳の少年。意志の弱い父親に不満を持っている。
ジムを演じたのは、アメリカの俳優ジェームズ・ディーン。
「孤独」や「やり場のない怒り」を見事に表現し、若者たちから熱烈に支持された名優です。24歳の若さでこの世を去っています。交通事故死でした。
James Dean
— Emir Han (@RealEmirHan) December 17, 2020
East of Eden (1955) pic.twitter.com/wXSvyGC93U
・『エデンの東』(1955)・・・兄ばかり可愛がる父親に鬱屈した思いを抱える青年の、人間ドラマ。
・『理由なき反抗』(1955)・・・本作。
・『ジャイアンツ』(1956)・・・牧場主の妻となった名家の娘が、苦難に立ち向かってゆく人間ドラマ。ジェームス・ディーンは、主人公に思いをよせるカウボーイの役。
ジュディ
演:ナタリー・ウッド
不良少年たちと付き合っている少女。近所に引っ越してきたジムが、気になりだす。
父親とうまくいってない。
ジュディを演じたのは、アメリカの女優ナタリー・ウッド。
Natalie Wood. 1961 pic.twitter.com/xWsyiKYM5n
— NotablePhotos (@NotablePhotos) September 17, 2023
子役として出演した『三十四丁目の奇蹟』(1947)でスターとなり、『ウエスト・サイド物語』(1960)にも主演しています。
・『捜索者』(1956)・・・南北戦争に従軍していた男が、インディアンの部族にさらわれた姪を助けにゆく西部劇。
・『ウエスト・サイド物語』(1960)・・・ニューヨークを舞台に、イタリア系とプエルトルコ系の少年団の抗争を描くミュージカル。
プレイトー・クロフォード
演:サル・ミネオ
ジムの友だちとなる少年。
両親は別居中で家におらず、家政婦に育てられている。
フランク・スターク(ジムの父親)
演:ジム・バッカス
Jim Backus earlier played James Dean's father in "Rebel Without a Cause" (1955): pic.twitter.com/bUaDvCcPE6
— Michael Beschloss (@BeschlossDC) December 16, 2022
ジムの父親。意志が弱く、ジムはそんな父が情けない。
キャロル・スターク(ジムの母親)
演:アン・ドーラン
ジムの母親。引越しをくり返すのは、ジムが問題行動を起こすから。
バズ・ガンダーソン
演:コリー・アレン
不良軍団のリーダー。ジュディがジムに関心があるのが、気に食わない。ジムに喧嘩をふっかけ、「チキン・ラン」で勝負するが・・・
グーン
演:デニス・ホッパー
バズが率いる不良軍団のひとり。
『理由なき反抗』時代背景【1950年代、アメリカ理想の家族像とは?】
映画『理由なき反抗』が公開されたのは、1955年。
1950年代、アメリカの中流家庭では、“理想とされる家族像”がありました。
- 稼ぎ頭で、部下からも慕われるパパ。
- 夫を献身的に支え、面倒見のよいママ。
- 2人の子供。
当時のドラマ『パパは何でも知っている』(1949~1954年)は、アメリカが理想とする家族を描いています(=ドラマでは子供は3人いますけど)。
>> 『パパは何でも知っている』(Father Knows Best) - 世界サブカルチャー史 - NHK
▲クリックすると動画が読み込まれます。
この反動として、1960年代にウーマンリブ(女性解放運動)が起こります。
家事や育児をこなすのは当然とされていた女性たちが「社会の風潮からの解放」「男性からの解放」を訴えて、運動を起こしたのです。
ここから先は、ややネタバレを含む内容になっています。本編をご覧になってからお読みください。
考察【若者たちの反抗は,“父性の欠如”が理由だった?】
『理由なき反抗』が作られた時代が「ウーマンリブまでの過渡期」だったと考えると、若者たちが“反抗した理由”が見えてきます。
劇中に登場する3人の若者、ジム、ジュディ、プレイトーはいずれも家庭に不満を持っています。
- ジム・・・立場が弱く、母親の顔色ばかりうかがっている父親にいらだつ
- ジュディ・・・父親に(スキンシップとして)キスをせがむが、冷たくされ、家を出る
- プレイトー・・・両親は家に不在。父からは養育費だけが送られてくる
3人の父親は、ドラマで描かれるような理想の父親ではありません。
だからこそ、3人は“強くやさしいパパ”を求めて反抗します。ジムは家族問題だけでいらだっている訳ではありませんが、根っこには父への不満があるのです。
物語の終盤。プレイトーは父の机から拳銃を持ちだします。
拳銃は“父性の象徴”です。
最終盤。3人の反抗は警察も動き出す騒動となりますが、プレイトーは(父性の象徴である)拳銃から弾を抜きます。つまり、『理由なき反抗』では、“父性の欠如”が裏テーマになっているのです。
ジムの父・フランクが、エプロンを着て家事を手伝っている姿は、まさに“父性の欠如”を表現しています。
フランクは、妻に頭が上がらず、事なかれ主義の自分を変えたいと思っています。見方を変えれば、『理由なき反抗』は父フランクが、“失った父性を取り戻す物語”ともいえるのです。