「ひどい奴だ。兵役に行く前にぶん殴ってやる」
やり場のない怒り。行き場のない焦燥感。
弱冠27歳のトリュフォーがみずみずしい感性で撮った青春映画『大人は判ってくれない』が、BSでテレビ放送されます。
この記事では、『大人は判ってくれない』のあらすじとキャストをご紹介。また、フランスの映画運動“ヌーヴェルヴァーグ”について、かんたんに解説します。
- 『大人は判ってくれない』NHKのBSプレミアムでの放送(2023)はいつ?監督は誰?
- フランス映画『大人は判ってくれない』あらすじ【行き場のない少年が、居場所を求めてさまよう】
- 『大人は判ってくれない』キャスト
- 『大人は判ってくれない』解説【ヌーヴェルヴァーグの代表的な作品は,何が革命的だったのか?】
『大人は判ってくれない』NHKのBSプレミアムでの放送(2023)はいつ?監督は誰?
『大人は判ってくれない』は1959年のフランス映画。
家庭でも学校でも居場所を見つけられない少年が、さまよう姿を描いた人間ドラマです。
映画『大人は判ってくれない』 | |
---|---|
原題 | Les Quatre Cents Coups |
上映時間 | 99分 |
ジャンル | 人間ドラマ |
監督 | フランソワ・トリュフォー(『アメリカの夜』) |
出演 |
ジャン=ピエール・レオ、パトリック・オーフェー |
受賞歴 |
カンヌ映画祭 監督賞 |
13:00 ~ 14:40
字幕スーパーでの放送です。
監督はフランソワ・トリュフォー。もともとは映画評論家でしたが、のちにヌーヴェルヴァーグ(=フランスの映画運動)の中心的な映画監督となります。
Aujourd'hui sur MUBI, retrouvez le deuxième film de François Truffaut, TIREZ SUR LE PIANISTE (1960), une ode au film noir avec Charles Aznavour dans le rôle d'un pianiste escroc. pic.twitter.com/bcu6M9us98
— MUBI France (@mubifrance) July 9, 2023
フランス映画『大人は判ってくれない』あらすじ【行き場のない少年が、居場所を求めてさまよう】
12歳の少年・アントワーヌ(ジャン=ピエール・レオ)は狭いアパートで親子3人で暮らし。両親の喧嘩が絶えないアパートは、アントワーヌにとって居心地のいい場所ではありません。
学校では担任の先生から“問題児”として扱われており、居場所がありませんでした。
ある日のこと。悪友のルネ(パトリック・オーフェー)と学校をサボったアントワーヌは、街中で母親の浮気を目撃してしまいます。
翌日。欠席した理由を聞かれたアントワーヌは、
「母が死んだのです」
と嘘をつきますが、すぐにバレます。
また、アントワーヌは小説家バルザックを敬愛していました。
あるとき、バルザック調の作文を提出しますが、先生からは「バルザックの丸写しだ」と疑われます。アントワーヌをかばったルネが停学処分となり、アントワーヌはますます居場所がなくなり・・・
『大人は判ってくれない』キャスト
アントワーヌ・ドワネル
演:ジャン=ピエール・レオ
Happy Birthday, Jean-Pierre Léaud! Born on this day in 1944. pic.twitter.com/Ns3SJHGi9e
— MUBI (@mubi) May 28, 2023
主人公。映画と文学が好きな、感受性豊かな少年。両親からも先生からも理解されず、反抗的な態度をとる。
アントワーヌを演じたのは、フランスの俳優ジャン=ピエール・レオ。
オーディションで『大人は判ってくれない』のアントワーヌ役を射止め、その後もアントワーヌ・ドワネルを主人公としたシリーズものに出演します。
《アントワーヌ・ドワネルの冒険》シリーズ
- 『大人は判ってくれない』(1959)・・・本作。
- 『アントワーヌとコレット』(1962)・・・社会復帰したアントワーヌが、少女コレットと出会う。オムニバス映画『二十歳の恋』に収められた短編。
- 『夜霧の恋人たち』(1968)・・・除隊したアントワーヌは、私立探偵になる。
- 『家庭』(1970)・・・アントワーヌは恋人クリスチーヌと結婚するが・・・。
- 『逃げ去る恋』(1979)・・・小説を出版したアントワーヌは、初恋相手に再会する。
ルネ・ビジェー
演:パトリック・オーフェー
Supplemental features for THE 400 BLOWS include two audio commentaries; rare audition footage of Jean-Pierre Léaud, Patrick Auffay, and Richard Kanayan; newsreel footage from the film's showing at Cannes; interviews with Truffaut; and more! pic.twitter.com/Y6N2mHjSlW
— Criterion Channel (@criterionchannl) April 11, 2018
アントワーヌの悪友。
ジュリアン・ドワネル
演:アルベール・レミー
アントワーヌの父親。
ジルベルト・ドワネル
演:ブルーノ・カービー
アントワーヌの母親。
『大人は判ってくれない』解説【ヌーヴェルヴァーグの代表的な作品は,何が革命的だったのか?】
「ヌーヴェルヴァーグ」(新しい波)とは、1950年代末から始まったフランスの映画運動のこと。当時の主流だった映画製作に反発した若い映画作家たちが、新しいスタイルの映画づくりに挑んだ流れを指します。
旧来は、「詩的リアリズム」という表現方法が主流でした。大型のセットを組んだスタジオ撮影では、奥行きや距離感を強調させるために、あえてパースペクティブにゆがみを持たせていました。
Le 11 novembre 1898, #RenéClair est né à Paris. "Sous les toits de Paris" (1930) https://t.co/pRlPEQd0l0 vía @YouTube pic.twitter.com/iMwKjZTfiV
— Juan Ferrer (@JuanFerrerVila) November 11, 2017
(⇧ ルネ・クレール監督の『巴里の屋根の下』(1930)。奥行きを感じさせるため、あえてセットの建物をゆがめている)
これに対して「ヌーヴェルヴァーグ」では、ロケーション撮影(≒手持ちカメラなど)でリアリティを持たせます。また、ストーリーをガチガチに固めるのではなく、即興演出(≒アドリブ)にも対応。撮影と同時に音も録音する同時録音も特徴的です。
"A esto se reduce todo: no detenerse nunca"
— literland (@literlandweb1) July 17, 2021
Roberto Bolaño
🎬"Les quatre cents coups", François Truffaut (1959) pic.twitter.com/bvUgFUldC4
『大人は判ってくれない』では、主人公アントワーヌが歩く、走るシーンが多用されています。
- 親友ルネと、どこまでも街中を歩く
- 鑑別所を脱走し、海に向かって走る、走る
少年の行き場のなさを、セリフではなく“身体表現として”見せています。
ヌーヴェルヴァーグの代表的な作品、ゴダールの『勝手にしやがれ』(1960)。虚無感をかかえた自転車泥棒が、破滅してゆく姿を描いています。
Jean-Luc Godard.
— Paname Paris (@ParisAMDParis) September 10, 2021
Jean-Paul Belmondo et Jean Seberg sur les Champs-Élysées dans À bout de souffle 1960 #Paris pic.twitter.com/UkwU6tMZtV
ジャンプカット(=映像が急に飛ぶ)を多用し、革命的な撮影手法で衝撃を与えました(右からきた車が、次の瞬間、左に去ってゆくなど)。
ヌーヴェルヴァーグ時代のフランス映画を観るなら、TSUTAYAのDVDレンタル【TSUTAYA DISCAS】がおすすめ。
動画配信では扱っていないレア映画も、すぐにレンタルできます。
・『夜と霧』(1956)・・・アラン・レネ監督。強制収容所で起こったユダヤ人虐殺を告発するドキュメンタリー。現在と過去をモンタージュでつなぐ。
・『死刑台のエレベーター』(1957)・・・ルイ・マル監督。社長夫人と不倫している男が、自殺に見せかけて社長を殺すが、トラブルに巻き込まれるサスペンス。
・『いとこ同志』(1959)・・・クロード・シャブロル監督。勉強熱心なシャルルとプレイボーイのポール。正反対ないとこ同士がパリで同居するうち、片方が殺意を抱くサスペンス。
・『気狂いピエロ』(1965)・・・ジャン=リュック・ゴダール監督。結婚にうんざりした男がかつての恋人と一夜を過ごすが、殺人事件に巻きこまれ・・・。男女の逃避行を描く、不条理な人間ドラマ。
Pierrot le Fou (1965) - Jean-Luc Godard pic.twitter.com/cPSvQUQvQW
— Le Club (@Leclubofficiel) July 15, 2023
(⇧ 映画ファンに衝撃を与えたゴダールの『気狂いピエロ』)