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泣ける!『ゴースト/ニューヨークの幻』考察【ただの恋愛映画じゃなく,マクベスや『野いちご』からの影響も?】

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泣ける!『ゴースト/ニューヨークの幻』考察【ただの恋愛映画じゃなく,マクベスや『野いちご』からの影響も?】

「素晴らしいことだよ。僕の中にある愛を、君が受け取ってくれる」

 

純粋な思いが観客の心をつかみ、陶芸教室に通う女性が殺到した・・・そんな恋愛映画『ゴースト/ニューヨークの幻』が、テレビ放送されます。

 

この記事では、映画『ゴースト/ニューヨークの幻』のあらすじをご紹介。また、なぜこの作品が大ヒットしたのか? その秘密をシナリオ面から考察します。

 『ゴースト/ニューヨークの幻』BSでのテレビ放送(2023)はいつ?主演女優はどんな人?

『ゴースト/ニューヨークの幻』は1990年のアメリカ映画。

不運にも暴漢に命を奪われた男性が、“幽霊”となってからも恋人を守ろうとする恋愛・ファンタジーです。

映画『ゴースト/ニューヨークの幻』
原題  Ghost
上映時間 128分
配給 パラマウント
監督 ジェリー・ザッカー(『トゥルーナイト』)
脚本 ブルース・ジョエル・ルービン(『ジェイコブス・ラダー』)
主題歌 ライチャス・ブラザーズ「アンチェインド・メロディ」
出演 パトリック・スウェイジ、デミ・ムーア、ウーピー・ゴールドバーグ

恋人モリーを演じた女優は、デミ・ムーア

『ゴースト/ニューヨークの幻』のヒットでトップ女優となった彼女。90年代は男性スターに匹敵する出演料をもらっていました。

 『ゴースト/ニューヨークの幻』のテレビ放送は、2023年2月14日(火)。NHKのBSプレミアム「BSシネマ」にて。
13:00 ~ 15:08

字幕スーパーでの放送となります。

泣ける! 映画『ゴースト/ニューヨークの幻』あらすじ

銀行員のサム(パトリック・スウェイジ)は、かけだしの陶芸家・モリー(デミ・ムーア)と同棲を始めたばかり。同僚のカール(トニー・ゴールドウィン)に引っ越しを手伝ってもらいます。

 

ある日のこと。

サムは勤め先の銀行で、口座データにおかしな金の動きがあることを知ります。

 

それから数日後。

シェイクスピア演劇の『マクベス』を観た、帰り道。モリーは、サムに結婚を切り出します。しかし、「愛してる?」と聞かれたサムは、

「Ditto」(同じく)と答えをはぐらかしてしまいます。

「愛してる」と口に出すことが恥ずかしかったのです。

 

すると、二人の前に暴漢があらわれ、サムともみ合いになります。サムが気づいた時、モリーは傷だらけになったサムの体を抱きながら、泣いています。

サムは死んで、ゴースト(幽霊)になってしまったのです。

 

暴漢の男は、モリーの命も狙っていました。サムは、モリーに危険を知らせようとしますが、幽霊なので伝えることができません。

 

困っていたサムは、『霊媒(れいばい)占い』という看板を見つけます。サムが中に入ると、霊媒師のオダ・メイ(ウーピー・ゴールドバーグ)がインチキ臭い占いをやっており・・・

『ゴースト/ニューヨークの幻』考察【ただの恋愛映画じゃなく,マクベスや『野いちご』からの影響も?】

死んでも愛する人を守り続けるという、純愛。デミ・ムーアの頬を流れる涙。そして、ウーピー・ゴールドバーグの絶妙なコメディ演技・・・『ゴースト/ニューヨークの幻』のヒットの要因はさまざま考えられますが、大きかったのが「ジャンルミックス」映画であること。

恋愛映画だと思って見たら、犯人探しのサスペンス、ファンタジー、ホラーの要素もあってお得!!

と感じるお客さんが多かったのです。

 

『ゴースト/ニューヨークの幻』の脚本がジャンル・ミックスとなった背景には、ある“2つの名作”が関係しています。

“同じく”しか言えなかった後悔は、イングマール・ベルイマン監督『野いちご』の影響!

『ゴースト/ニューヨークの幻』の脚本家ブルース・ジョエル・ルービンが10代だった頃、影響を受けた監督がいます。スウェーデンを代表する映画監督イングマール・ベルイマンです。

 

ベルイマンが1957年に監督した『野いちご』という傑作があります。ストーリーはこんな感じ。

医学研究に人生をささげてきた老教授・イサクは、長年の功績をたたえられ、名誉学位を授かることになります。イサクは息子夫婦の運転する車に乗って、授与式の行われる会場へ向かうのですが・・・

 

▲クリックすると動画が読み込まれます。

 

関連:よく似た“2人の女”の話? 二重人格の話? ベルイマンの革命的映画を考察!

www.entafukuzou.com

 

会場へ向かう道すがら、イサクは激しい後悔と“死のイメージ”に苦しみます。

イサクは若い頃、愛する人に思いを告げられず、弟に婚約者を奪われた過去があります。そのあと結婚した妻には無関心だったため、浮気されています。

 

『野いちご』は、晩年にさしかかった老人が、恋人や家族に愛情を示せなかったことを後悔する映画。いわば、“生者の後悔”

『ゴースト/ニューヨークの幻』のサムは、恋人のモリーに「愛してる」と告げられなかったことを後悔します。

こちらは、“死者の後悔”

泣ける!『ゴースト/ニューヨークの幻』考察【ただの恋愛映画じゃなく,イングマール・ベルイマン監督『野いちご』からの影響も?】

 

「思いを伝える」というテーマはそのままに、“死者を主人公にする”という発想でひねりを加えたのです。

 

このアイディアにひと役買っているのが、戯曲『マクベス』です。

“暗殺した側”が主人公:シェイクスピア悲劇『マクベス』、命を奪われた“被害者”が主人公:『ゴースト/ニューヨークの幻』!

16分47秒。

カールに今夜の予定を聞かれたサムは、

「モリーとマクベスを観にゆく」

と答えます。

 

わざわざ『マクベス』を引用したのは、物語の構造に関係があるからです。

 

マクベス』はシェイクスピアの四代悲劇のひとつ。ストーリーはこんな感じ。

スコットランドの将軍・マクベスは、荒野で出会った3人の魔女から、

「あなたは、いずれ王になるお方だ」

と、告げられます。

 

野心にとり憑かれたマクベスとマクベス夫人は、ダンカン国王の命を奪います。さらに、“子孫が王になる”と予言された側近のバンクォーも暗殺します。

脅威となりそうな者を排除してゆくマクベスでしたが、バンクォーの亡霊にさいなまれるようになり、マクベス夫人も夢遊病になってしまいます。

泣ける!『ゴースト/ニューヨークの幻』考察【ただの恋愛映画じゃなく,シェイクスピアのマクベスからの影響も?】

 

権力者となるため、邪魔者を次々と始末していった暴君が『マクベス』の主人公。

いっぽうの『ゴースト/ニューヨークの幻』は、命を奪われた“犠牲者”のほうを主人公に設定しています。“どっちの目線に立つか”、という視点のアレンジなのです。

まとめ

脚本家は古い映画をよく見ます。シェイクスピアの戯曲や古典小説もたくさん読んでいます。何十年、何百年と親しまれている名作には、現代に通ずる“物語の型”があることを知っているからです。

だからこそ、男女の設定を逆にしたり、舞台を現代に置き換えたり・・・といったアレンジがハリウッドではよく行なわれます。

 

『ゴースト/ニューヨークの幻』のヒットの陰にも、

  • イングマール・ベルイマン監督の映画『野いちご』
  • シェイクスピアの戯曲『マクベス』

という2つの名作の存在があったのです。