「素晴らしいことだよ。僕の中にある愛を、君が受け取ってくれる」
純粋な思いが観客の心をつかみ、陶芸教室に通う女性が殺到した・・・そんな恋愛映画『ゴースト/ニューヨークの幻』が、テレビ放送されます。
この記事では、映画『ゴースト/ニューヨークの幻』のあらすじをご紹介。また、なぜこの作品が大ヒットしたのか? その秘密をシナリオ面から考察します。
- 『ゴースト/ニューヨークの幻』BSでのテレビ放送(2023)はいつ?主演女優はどんな人?
- 泣ける! 映画『ゴースト/ニューヨークの幻』あらすじ
- 『ゴースト/ニューヨークの幻』考察【ただの恋愛映画じゃなく,マクベスや『野いちご』からの影響も?】
- まとめ
『ゴースト/ニューヨークの幻』BSでのテレビ放送(2023)はいつ?主演女優はどんな人?
『ゴースト/ニューヨークの幻』は1990年のアメリカ映画。
不運にも暴漢に命を奪われた男性が、“幽霊”となってからも恋人を守ろうとする恋愛・ファンタジーです。
映画『ゴースト/ニューヨークの幻』 | |
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原題 | Ghost |
上映時間 | 128分 |
配給 | パラマウント |
監督 | ジェリー・ザッカー(『トゥルーナイト』) |
脚本 | ブルース・ジョエル・ルービン(『ジェイコブス・ラダー』) |
主題歌 | ライチャス・ブラザーズ「アンチェインド・メロディ」 |
出演 | パトリック・スウェイジ、デミ・ムーア、ウーピー・ゴールドバーグ |
恋人モリーを演じた女優は、デミ・ムーア。
Bringing it back to 1984. Happy Golden Globes! pic.twitter.com/vLZIDC4HUa
— Demi Moore (@justdemi) February 28, 2021
『ゴースト/ニューヨークの幻』のヒットでトップ女優となった彼女。90年代は男性スターに匹敵する出演料をもらっていました。
13:00 ~ 15:08
字幕スーパーでの放送となります。
泣ける! 映画『ゴースト/ニューヨークの幻』あらすじ
銀行員のサム(パトリック・スウェイジ)は、かけだしの陶芸家・モリー(デミ・ムーア)と同棲を始めたばかり。同僚のカール(トニー・ゴールドウィン)に引っ越しを手伝ってもらいます。
ある日のこと。
サムは勤め先の銀行で、口座データにおかしな金の動きがあることを知ります。
それから数日後。
シェイクスピア演劇の『マクベス』を観た、帰り道。モリーは、サムに結婚を切り出します。しかし、「愛してる?」と聞かれたサムは、
「Ditto」(同じく)と答えをはぐらかしてしまいます。
「愛してる」と口に出すことが恥ずかしかったのです。
すると、二人の前に暴漢があらわれ、サムともみ合いになります。サムが気づいた時、モリーは傷だらけになったサムの体を抱きながら、泣いています。
サムは死んで、ゴースト(幽霊)になってしまったのです。
暴漢の男は、モリーの命も狙っていました。サムは、モリーに危険を知らせようとしますが、幽霊なので伝えることができません。
困っていたサムは、『霊媒(れいばい)占い』という看板を見つけます。サムが中に入ると、霊媒師のオダ・メイ(ウーピー・ゴールドバーグ)がインチキ臭い占いをやっており・・・
『ゴースト/ニューヨークの幻』考察【ただの恋愛映画じゃなく,マクベスや『野いちご』からの影響も?】
死んでも愛する人を守り続けるという、純愛。デミ・ムーアの頬を流れる涙。そして、ウーピー・ゴールドバーグの絶妙なコメディ演技・・・『ゴースト/ニューヨークの幻』のヒットの要因はさまざま考えられますが、大きかったのが「ジャンルミックス」映画であること。
恋愛映画だと思って見たら、犯人探しのサスペンス、ファンタジー、ホラーの要素もあってお得!!
と感じるお客さんが多かったのです。
『ゴースト/ニューヨークの幻』の脚本がジャンル・ミックスとなった背景には、ある“2つの名作”が関係しています。
“同じく”しか言えなかった後悔は、イングマール・ベルイマン監督『野いちご』の影響!
『ゴースト/ニューヨークの幻』の脚本家ブルース・ジョエル・ルービンが10代だった頃、影響を受けた監督がいます。スウェーデンを代表する映画監督イングマール・ベルイマンです。
ベルイマンが1957年に監督した『野いちご』という傑作があります。ストーリーはこんな感じ。
医学研究に人生をささげてきた老教授・イサクは、長年の功績をたたえられ、名誉学位を授かることになります。イサクは息子夫婦の運転する車に乗って、授与式の行われる会場へ向かうのですが・・・
▲クリックすると動画が読み込まれます。
関連:よく似た“2人の女”の話? 二重人格の話? ベルイマンの革命的映画を考察!
会場へ向かう道すがら、イサクは激しい後悔と“死のイメージ”に苦しみます。
イサクは若い頃、愛する人に思いを告げられず、弟に婚約者を奪われた過去があります。そのあと結婚した妻には無関心だったため、浮気されています。
『野いちご』は、晩年にさしかかった老人が、恋人や家族に愛情を示せなかったことを後悔する映画。いわば、“生者の後悔”。
『ゴースト/ニューヨークの幻』のサムは、恋人のモリーに「愛してる」と告げられなかったことを後悔します。
こちらは、“死者の後悔”。
「思いを伝える」というテーマはそのままに、“死者を主人公にする”という発想でひねりを加えたのです。
このアイディアにひと役買っているのが、戯曲『マクベス』です。
“暗殺した側”が主人公:シェイクスピア悲劇『マクベス』、命を奪われた“被害者”が主人公:『ゴースト/ニューヨークの幻』!
16分47秒。
カールに今夜の予定を聞かれたサムは、
「モリーとマクベスを観にゆく」
と答えます。
わざわざ『マクベス』を引用したのは、物語の構造に関係があるからです。
『マクベス』はシェイクスピアの四代悲劇のひとつ。ストーリーはこんな感じ。
スコットランドの将軍・マクベスは、荒野で出会った3人の魔女から、
「あなたは、いずれ王になるお方だ」
と、告げられます。
野心にとり憑かれたマクベスとマクベス夫人は、ダンカン国王の命を奪います。さらに、“子孫が王になる”と予言された側近のバンクォーも暗殺します。
脅威となりそうな者を排除してゆくマクベスでしたが、バンクォーの亡霊にさいなまれるようになり、マクベス夫人も夢遊病になってしまいます。
権力者となるため、邪魔者を次々と始末していった暴君が『マクベス』の主人公。
いっぽうの『ゴースト/ニューヨークの幻』は、命を奪われた“犠牲者”のほうを主人公に設定しています。“どっちの目線に立つか”、という視点のアレンジなのです。
まとめ
脚本家は古い映画をよく見ます。シェイクスピアの戯曲や古典小説もたくさん読んでいます。何十年、何百年と親しまれている名作には、現代に通ずる“物語の型”があることを知っているからです。
だからこそ、男女の設定を逆にしたり、舞台を現代に置き換えたり・・・といったアレンジがハリウッドではよく行なわれます。
『ゴースト/ニューヨークの幻』のヒットの陰にも、
- イングマール・ベルイマン監督の映画『野いちご』
- シェイクスピアの戯曲『マクベス』
という2つの名作の存在があったのです。