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【シナリオ考察】『ミラベルと魔法だらけの家』伝えたいことは?『百年の孤独』との関連は?

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【シナリオ考察】『ミラベルと魔法だらけの家』伝えたいことは?ビジョンとは?

「誰かの役に立つ方法、って人によって違うのよ」

 

ギフトを持たない女の子の奮闘が、勇気をくれる! ディズニー映画『ミラベルと魔法だらけの家』が、地上波テレビ放送されます。

 

この記事では、映画『ミラベルと魔法だらけの家』が伝えたかっことをシナリオ面から考察します。

ディズニー映画『ミラベルと魔法だらけの家』テレビ放送(2023)はいつ?英語タイトルの意味は?

 『ミラベルと魔法だらけの家』は2021年のアメリカ映画。

魔法一家に生まれながら、家族でただ一人魔法を使えない女の子が、家の危機を救おうとするミュージカルです。

映画『ミラベルと魔法だらけの家』
原題 Encanto
公開日 2021年11月26日
上映時間 102分
監督 ジャレド・ブッシュ、バイロン・ハワード
脚本 チャリーズ・カストロ・スミス、ジャレド・ブッシュ
声の出演 斎藤瑠希、中尾ミエ
受賞歴 アカデミー長編アニメーション部門 作品賞
 『ミラベルと魔法だらけの家』のテレビ放送は、2023年11月17日(金)。日本テレビ系列「金曜ロードショー」にて。
21:00 ~ 22:54

(出典:アンク@金曜ロードショー公式 on X)

原題の【 Encanto 】(エンカント)は、スペイン語で「魔力、魅力」を意味します。

また、ミラベルや家族が住んでいるコロンビアの地域「エンカント」の意味もあります。

『ミラベルと魔法だらけの家』あらすじ【魔法一家で才能を持たない女の子が、魔法の家の異変に気づく】

南米コロンビアの奥地に立つ魔法の家【カシータ】には、マドリガル家が3世代でいっしょに暮らしていました。

マドリガル家に生まれた子供は、5歳になると“ギフト”(=魔法の才能)をもらえます。マドリガル家の長・アルマおばあちゃん(声:中尾ミエ)は、魔法を町の人々のために使うように家族に言い聞かせてきました。

 

そんな中、家族のなかで唯一“魔法のギフト”をもらえなかったのが、ミラベル(声:斎藤瑠希)という女の子です。

 

 

時は流れ、ミラベルは15歳になります。上の姉・イサベラは「花を咲かせるギフト」、2番目の姉・「力(パワー)のギフト」を与えられています。

ある日のこと。いとこのアントニオは、ギフトを授かる儀式で「動物と話せるギフト」をもらいます。何のギフトも持たないミラベルは、ますます引け目を感じます。

 

そのとき!

ミラベルは魔法のロウソクの火が消えかけ、魔法の家【カシータ】の中庭に、屋根がわらが落っこちてくるのを見つけます。

家だけでなく、家族の“異変”に気づいたミラベルは、家族たちに伝えますが・・・

▲クリックすると動画が読み込まれます。

『ミラベルと魔法だらけの家』おもな登場人物&吹き替え声優

ミラベル

声:ステファニー・ベアトリス/吹き替え:斎藤 瑠希(さいとう るき)

マドリガル家で、ただ一人魔法を使えない女の子。

アルマおばあちゃん

声:マリア・セシリア・ボテロ/吹き替え:中尾 ミエ(なかお みえ)

ミラベルの祖母。マドリガル家のあるじ。フリエッタ、ペパ、ブルーノという三つ子を育て、魔法一家の伝統を守ってきた。

イサベラ

声:ダイアン・ゲレロ/吹き替え:平野 綾(ひらの あや)

ミラベルにとって、いちばん上の姉。花を咲かせる魔法が使える。

ルイーサ

声:ジョン・メグナ/吹き替え:ゆめっち(3時のヒロイン)

ミラベルにとって、2番目の姉。大きなカラダで、怪力の魔法が使える。不安を感じると、まぶたが痙攣(けいれん)する

ブルーノ叔父さん

演:ブロック・ピーターズ/声:宮島 史年(みやじま ふみとし)

アルマおばあちゃんの息子で、ミラベルのおじ。未来を見る魔法を使えるが、マドリガル家の不幸ばかり予言するため、家族とは疎遠になっている。

www.disney.co.jp

 

ここから先は、ネタバレを含みます。本編をご覧になるまでは、読まないでください

>> Amazonプライム『ミラベルと魔法だらけの家』(吹き替え版)

【シナリオ考察】『ミラベルと魔法だらけの家』伝えたいことは?“ミラベルのギフト”とは?

主人公のミラベルは、マドリガル家のなかで唯一「魔法のギフト」を持たない存在。

・ミラベルのギフトは何だったのか?

・そもそも、ギフトを持っていなかったのか?

劇中では、“ミラベルのギフト”については明示されないままです

ポイント!英語の「gift」には、“才能”という意味がある

 

“ミラベルのギフト”とは、「家族を思う心」?「特別じゃないという才能」?

(出典:あひるさん on X)

(出典:るるこさん on X)

 

Xでは、「家族を思う心」や「やさしさ」こそ“ミラベルのギフト”だ、というご意見が目立ちます。

 

ネットの考察記事で興味深かったのは、「特別じゃないという才能」という記事。

>> 「特別じゃない」という名のギフト。『ミラベルと魔法だらけの家』-Whoops-A-Disney!

 

実は、「特別じゃないこと=才能」だということは、映画の冒頭で明示されています。

9分12秒

村の子供たちから、「ミラベルのギフトは何?」と問い詰められ、困るミラベル。

すると、ロバの配達人のおじさんが、おもちゃとお菓子の詰め合わせをプレゼントしてくれます。

「ミラベル! プレゼントだ。マドリガル家の子供でひとりだけギフトを持ってないから、特別に。名付けて、スペシャルじゃないスペシャル!

(⇦ 特別じゃないという特別)

 

映画『ミラベルと魔法だらけの家』の脚本家ジャレッド・ブッシュは、『ズートピア』の脚本も書いています。『ズートピア』では、

「差別を受けている側にも、実は差別意識があるのでは?」

という問題提起をしています。

 

『ミラベルと魔法だらけの家』でも、先入観を捨てて“ものの見方”を変えると、180度見え方が変わってくる、という場面があります。

(※ 本作の伝えたいこと)

 

35分26秒

「重たい荷物が持てなきゃ、私の価値がないの」

ミラベルの2番目の姉・ルイーサは、「怪力のギフト」の持ち主。しかし、実は“ちから自慢”という周囲からのレッテル貼りに苦しんでいたことがわかります。

 

1時間10分16秒

「美しさより真実がほしい。(中略)完璧じゃない生き方を求めても・・・私は私」

ミラベルの上の姉・イサベラは「花を咲かせるギフト」を持ち、“美しい女性の代表格”として描かれています。しかし、完璧な女性でいるより自分らしく生きたい、と吐露します。

 

興味深いのは、ミラベルは確かに家族思いだれど、

ルイーサとイサベラという、家族のなかでも近しい姉妹の“本当の気持ち”に気づいていなかったことがわかります。

 

「特別じゃないという才能」説を、シナリオ目線から深掘りしてゆきます。

キーワードは「ひび割れ」と「ロウソク」、そして「ハグ」です。

【シナリオ考察】ミラベルが“魔法のギフト”を欲しがった時ほど、カシータはひび割れ、ロウソクの火は弱まる

【シナリオ考察】『ミラベルと魔法だらけの家』伝えたいことは?『百年の孤独』との関連は?

映画の冒頭。アルマおばあちゃんは、小さいミラベルにこう語ります。

「このロウソクに、私たち家族の“奇跡”が詰まっているのよ」

 

  • 魔法の家【カシータ】がひび割れる
  • ロウソクの火が弱まる

実をいうと、ミラベルが魔法のギフトを欲しがったとき、家族に不信感を抱いたときに限って、マドリガル家が危機に陥ります。

 

11分44秒

壁に飾られた写真を見るミラベル。写真には、ギフトを授かった家族と、アルマおばあちゃんがそれぞれ1対1で映っています。ギフトがないミラベルの写真は飾られていません。

(私も、魔法のギフトが欲しい!)

 

ミラベルはアルマおばあちゃんに話しかけられ、ロウソクを倒してしまいます(火が弱まる)。

 

22分15秒

アントニオが動物と話せるギフトを授かったあと、アントニオはアルマおばあちゃんとハグします。

(私も、魔法のギフトが欲しい!)

 

ミュージカルシーンのあとの、

25分6秒

カシータの屋根がわらが落ちてきます。

 

52分53秒

イサベラの婚約者・マリアーノを招いた夕食会の席。

ブルーノのビジョンにミラベルが映っていたことが、家族のみんなにバレます。ミラベルの不安は最高潮に!

部屋全体がひび割れます。

 

1時間13分18秒

ミラベルは、自分を理解してくれないアルマおばあちゃんを、強い口調で責めます。

「違うのはおばあちゃんだよ! おばあちゃんがこの家を壊してる。奇跡が消えかけているのは、おばあちゃんのせいだよ!」

道路がひび割れ、ロウソクの火が消えそうになります。

【シナリオ考察】ミラベルと家族のハグは、ミラベルが先入観を捨てた証

1時間4分30秒

ブルーノのビジョンによって、ロウソクの炎が明るくなるには、ミラベルが家族の誰かとハグすることだ、とわかります。

 

37分37秒

“ちから自慢”というステレオタイプな見方をされることに、プレッシャーを感じていたルイーサ。彼女が心のうちを打ち明けると、ミラベルはハグします。

 

1時間11分25秒

イサベラとミラベルのミュージカル・シーン。

「新しい生き方、きっとあるわ」

ミラベルがイサベラの本当の気持ちを受け止め、二人がハグします。

カシータのひび割れが修復され、ロウソクの火は明るくなります。

 

1時間22分51秒

アルマおばあちゃんがなぜ、家族に厳しく接してきたのか?

夫・ペドロを失い、同じ思いを味わわせたくなかった・・・ミラベルは、アルマの秘められた思いを知ります。

ミラベル「おばあちゃんがいたからこそ、家族になれた」

アルマ「ペドロは願いを叶えてくれたのね。ミラベル、あなたが答えだったの」

アルマとミラベルは、ハグします。

 

アルマがペドロの死を受け入れ、前に進もうとすると・・・川のほとりを、何百匹という黄色い蝶が舞います。

【シナリオ考察】ガルシア=マルケスの小説『百年の孤独』と、黄色い蝶

ガルシア=マルケスの小説『百年の孤独』と、黄色い蝶

『百年の孤独』とは、コロンビアのノーベル賞作家ガブリエル・ガルシア=マルケスの長編小説。架空の村・マコンドにやってきたブエンディア家が、村を開拓し、やがて没落してゆくまでの6代100年の歴史が記される、壮大な群像劇です。

 

エピソードの中では、いとこ同士の結婚や、おいと叔母の“禁断の愛”も描かれます。

 

『ミラベルと魔法だらけの家』でも、『百年の孤独』をモデルにしたとわかる描写があります。

57分25秒

ブルーノの部屋で、ネズミたちがメロドラマを演じる。

「絶対に結ばれないんだ。彼の実の叔母なんだよ。でも、記憶喪失。叔母だってことを覚えていない。禁じられた愛、ってヤツかな」

 

『百年の孤独』の2/3ぐらいに、こんなエピソードが登場します。

ブエンディア家の5代目世代の娘・メメは、バナナ会社の見習い工・マウリシオ・バビロニアという男と恋に落ちます。メメは、マウリシオ・バビロニアと出会う前に、必ず黄色い蝶が現われることに気づきます。

 

演奏会でも、映画館でも、ミサでも、メメは黄色い蝶を見つければ、マウリシオ・バビロニアを探すことができました。しかし、二人はそうそう会う機会がありません。

やがて、メメの知らないところでマウリシオ・バビロニアは警官に撃たれ、わびしく死んでゆきます。

(※ コロンビアの歴史上の事件“バナナ虐殺”をモチーフにしている)

 

しばらくのあいだ、メメの浴室の周りでは、黄色い蝶が飛び回っていました。しかし、最後の1匹も扇風機の羽にあたってバラバラになったとき、メメはマウリシオ・バビロニアの死を受け入れます。

(参照:『百年の孤独』p329~p342より)

\“20世紀最高の文学”との呼び声も高い、ノーベル文学賞受賞作/

 

『ミラベルと魔法だらけの家』に登場する黄色い蝶は、アルマの夫・ペドロの象徴。

  • アルマが腰に付けているのは、蝶のブローチ
  • ペドロの遺影には、3匹の蝶
  • 若い頃のアルマは、黄色い蝶がペドロのもとへ飛んでゆくのを見る
  • アルマがペドロの死を受け入れると、黄色い蝶が空を舞う

「家族の本当の気持ちに気づくこと」がミラベルの成長だとすれば、「夫・ペドロの死を受け入れること」がアルマの成長となっています。

特別な能力がないと、人を助けられないのか?】ストーリーのジャンルは、「金の羊毛」

『ミラベルと魔法だらけの家』伝えたいことは?、ストーリーは“金の羊毛”ジャンル

ハリウッドの脚本家ブレイク・スナイダーの定義によれば、映画のストーリーは10のジャンルに絞られます。

このうち、『ミラベルと魔法だらけの家』は「金の羊毛」ジャンルに当てはまります。

 

「金の羊毛」はギリシャ神話に出てくる言葉で、英雄イアソンとアルゴ船の乗組員がやっとの思いで盗み出した金の羊毛のこと。

転じて、シナリオの世界では、

「“何か”を求めて旅に出るけれど、最終的に発見するのは別のもの(=自分が初めから持っていたもの)」

というタイプのストーリーを指します。

 

代表的な映画が、オズの魔法使い(1939)です。

主人公ドロシーのお供になるカカシ、ブリキ、ライオンは、それぞれ欲しいものがありました。カカシは頭脳を、ブリキは心を、ライオンは勇気を求めていました。

しかし、彼らは自分が欲していたものを初めから持っていたことに気づきます。

 

『ミラベルと魔法だらけの家』では、ミラベルは必死に「魔法のギフト」を求めます。しかし、「特別じゃないという才能」は初めから備わっていたことがわかります。

(=才能がなくても、見方を変えることで家族の本心に気づける)