アメリカでは、ケーブルテレビで往年の名作映画がくり返し放送されています。だから、若い人も古い映画を知っているし、世代間で“文化の断絶”が起きにくいのだと思います。
今回ご紹介するのは、フランク・キャプラ監督の白黒映画『或る夜の出来事』です。
スクリューボール・コメディ『或る夜の出来事』概要
『或る夜の出来事』は、1934年のアメリカ映画です。大富豪の娘と新聞記者の男が逃避行。いがみ合いつつもお互いに惹かれてゆく様子が描かれています。上映時間は105分。
或る夜の出来事 | |
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原題 | It Happened One Night |
製作国 | アメリカ |
製作年 | 1934年 |
上映時間 | 105分 |
監督 | フランク・キャプラ |
脚本 | ロバート・リスキン |
出演 | クラーク・ゲーブル、クローデット・コルベール |
監督は、『素晴らしき哉、人生!』のフランク・キャプラ。彼とよくタッグを組んでいたロバート・リスキンが脚本を担当しています。
本作は、『スクリューボール・コメディ』の代表作として知られています。住む世界の異なる男女や、常識にとらわれない人物が登場して、思いもよらぬ方向へ話が進んでゆくコメディです。
『或る夜の出来事』のストーリー
大富豪の娘・エリー(クローデット・コルベール)は、父親の反対を退け、プレイボーイの飛行士と婚約します。父はエリーをヨットに閉じこめますが、反発したエリーは海に飛びこみ脱出。ニューヨーク行きの夜行バスに逃げこみます。
そこで乗り合わせたのが、クビになったばかりの新聞記者ピーター(クラーク・ゲーブル)でした。エリーとピーターは出会った時から、喧嘩ばかり。お互いの第一印象はサイアク。
それでも、2人で行動を共にすることになり・・・
シナリオを考察!『ローマの休日』『卒業』にも影響を与えた?
有名監督も大好き! フランク・キャプラ
脚本上うまいなと思うのは、ピーターの“新聞記者”という設定が、物語をちゃんと前に動かしているところです。
- エリーが失踪中の富豪の娘であることを、新聞の紙面で知る
- スクープが欲しいピーターは、エリーと行動を共にする
ピーターは、お金持ちの傲慢な態度がキライ。でも、特ダネが欲しいから、ウマが合わないエリーと一緒にいます。職業が目的を生み、目的が物語を前に進めています。
映画を包むあたたかな雰囲気も、キャプラ作品の特徴。夜行バスに乗り合わせた見ず知らずの乗客たちが、みなで声を揃えて歌うシーンは幸せな気持ちになれます。
スピルバーグ、スコセッシ、黒澤明、成瀬巳喜男、イーストウッド、ワイルダー、細田守まで・・・映画監督がこぞってキャプラに憧れるのも納得です。
『ローマの休日』『卒業』へも影響を与えた?
世間知らずのお嬢さまが逃げ出し、たまたま新聞記者の男性と出会う。記者はスクープのためにお嬢さまに近づき、反目しつつも惹かれ合う・・・
『或る夜の出来事』(1934年)の物語構造は、『ローマの休日』(1953年)とかなり似ています。
また、クライマックスの結婚式の場面は、『卒業』(1967年)とも酷似しています。宮崎アニメ『カリオストロの城』(1979年)にも似たような場面がありました。