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【これだけは観ろ】映画『アンダーグラウンド』BSプレミアムで放送!ユーゴ内戦を,強烈なブラックユーモアで描く

【これだけは観ろ】映画『アンダーグラウンド』BSプレミアムで放送!ユーゴ内戦を,強烈なブラックユーモアで描く、完全版との違い

旧ユーゴスラヴィアの激動の歴史をフィクションを交えて描く、映画『アンダーグラウンド』が、NHKのBSプレミアムで放送されます。

「20世紀ベスト10に入る映画だ!」「いや、生涯No.1だよ」

と、映画評論家たちも絶賛しています。

この記事では、映画『アンダーグラウンド』のあらすじと、旧ユーゴスラヴィアの歴史的背景をお伝えします。また、この映画の何がスゴいのか、解説してゆきます。

映画『アンダーグラウンド』BSプレミアムでのテレビ放送は,いつ?

 『アンダーグランド』は1995年の映画。親友をだまして共産党の幹部に登りつめてゆく男の半生を、ユーゴスラビアの歴史に絡めて描きます。

映画『アンダーグラウンド』
原題 Underground
製作 1995年
製作国 フランス、ドイツ、ハンガリー、ユーゴスラヴィア、ブルガリア
ジャンル 戦争ドラマ、政治風刺コメディ
上映時間 170分
監督 エミール・クストリッツァ(『パパは、出張中!』『黒猫・白猫』)
音楽 ゴラン・ブレゴヴィッチ
受賞歴

カンヌ映画祭 パルム・ドール

出演  ミキ・マノイロヴィッチ、ラザル・リストフスキー、ミリャナ・ヤコヴィッチ

映画『アンダーグラウンド』のテレビ放送は、2021年8月26日(木)。NHKのBSプレミアムの「BSシネマ」にて。

13:00 ~ 15:51

映画『アンダーグラウンド』あらすじ:避難民たちをだまし、地下で50年間も武器を密造させる!

1941年。ナチスに侵攻されたベオグラード(現・セルビアの首都)。

共産党員のマルコは電気技師のクロを入党させ、パルチザン(=解放軍)の中で頭角をあらわしてゆきます。

 

ベオグラードはナチスから爆撃を受け、焼け野原となってしまいます。マルコは弟のイヴァンや親友のクロ、避難民たちを地下へかくまい、武器の密造を行なわせます。

 

さて、マルコとクロは女優のナタリアに憧れていました。障害者の弟がいるナタリアは、ナチスの将校・フランツと付き合っています。

クロはナタリアを奪還しようとしますが、ナチスに捕われ、拷問を受けます。マルコは医師に変装し、クロを救出!しかし、戦闘でケガを負ってしまったクロは、地下で静養することになります。

 

その頃。

地上では、チトー大統領のもと、ナチスとの戦争を勝ち抜いた解放軍は【ユーゴスラヴィア社会主義連邦共和国】を建国します。マルコもチトーの側近として出世します。

 

そのいっぽう。マルコは、クロや地下の住民に対しては、

「ナチとの戦争はまだ続いている」

と嘘をつきます。彼らに地下生活をさせたまま、何十年も武器を密造させていたのです・・・

 

▲クリックすると動画が読み込まれます。

 

考察:【何がスゴいのか?】ユーゴ内戦を,強烈なブラックユーモアで描く

映画『アンダーグラウンド』の本当の凄さは、ユーゴスラビアの歴史を知らないと伝わりません。かんたんに歴史の流れを説明します。

 

ユーゴスラビアはもともと多民族国家で、つねに分裂の危険性をはらんでいました。

それでも、カリスマ的指導者チトーのおかげで、どうにか1つの国としてまとまっていたのです。

【これだけは観ろ】映画『アンダーグラウンド』BSプレミアムで放送!ユーゴ内戦を,強烈なブラックユーモアで描く

 

ところが、1980年にチトーが亡くなると、各民族が独立をめざして、あちこちで内戦が起きます。特に悲惨だったのが、1992年から1995年まで続いたボスニア紛争です。

ボスニアには、ムスリム人・セルビア人・クロアチア人という異なる民族が暮らしていました。

 

「独立したいムスリム・クロアチア人」 VS「阻止したいセルビア人」

 

という血みどろの戦いがくり広げられます。ちょっと前まで隣人だった者どうしが、“民族が違う”だけで殺し合いを始めたのです。

 

『アンダーグラウンド』の終盤。

マルコに裏切られた親友のクロや弟のイヴァンは、マルコに報復しようとします。これは、「セルビア人」VS「クロアチア人」のメタファー(隠喩)となっています。

 

 

映画『アンダーグラウンド』の素晴らしさ。

それは、「立場が変われば、見方も変わる」と教えてくれるところです。国際社会とはまったく異なる価値観があることを、私たちに知らしめてくれるのです。

 

クロアチアが独立の動きを見せたとき、NATOはクロアチア側を支援しました。独立をくい止めようとする“セルビア=悪”とし、ユーゴに空爆を行なったのです。

しかし、サラエボ出身のエミール・クストリッツァ監督は、“分裂=祖国が失われてしまった”という当事者ならではの見方を示します。

【これだけは観ろ】映画『アンダーグラウンド』BSプレミアムで放送!ユーゴ内戦を,強烈なブラックユーモアで描く、完全版との違い

分断されていなければ、別の民族とも同じ国のなかで暮らせていたかもしれない・・・そんな監督の想いが、伝わってきます。

 

 

冷戦時代、東側諸国と西側諸国の“中立地帯”だった旧ユーゴスラヴィア。

周辺のヨーロッパ諸国にとっては、ユーゴ内に軍事拠点をおければ、この地域で優位に立てます。決して、人道的な理由だけで民族の独立を支援したわけではないのです。

 

『アンダーグラウンド』では劇中、記録映像が何度か出てきます。あれはただの引用ではありません。

  • ナチスよりNATO(=ヨーロッパの軍事同盟)の空爆のほうが激しかったこと
  • 国際社会が“独裁者”とみなしていたチトーの葬儀に、東西を問わず、各国の首脳が参列したこと

を示唆しています。これは、ヨーロッパに対する皮肉でもあるのです。

考察:【何がスゴいのか?】耳をつんざくジプシー音楽、神演出がスゲェ!!

作曲を担当したのは、映画音楽家ゴラン・ブレゴヴィッチです。

とにかく大音量で、耳をつんざくジプシー音楽が頭から離れません。初めて『アンダーグラウンド』の曲を聴いたとき、あまりの中毒性にサントラを手放せませんでした。

そして、エミール・クストリッツァの神演出。ダヴィンチの「最後の晩餐」やシャガールの「結婚式」など、名画を思わせるような構図が登場します。

セリフではなく、映像に伏線を張っているのもスゴい。

  • 電線をかみ切るクロ ⇨ 
  • ふざけて、首吊りのマネごとをするイヴァン ⇨
  • 踊りながら回るマルコとナタリア ⇨

前半の演出を踏まえたような神シーンが、後半に出てきます。

 

 

www.entafukuzou.com

上のリンク先では、エミール・クストリッツァ監督のハイテンション映画『黒猫・白猫』も紹介しています。12項目目で読めます。