※この記事は、2021年8月に更新しました。
メグ・ライアンのキュートな魅力が爆発した映画『恋人たちの予感』は、“恋愛コメディの先駆け”となった作品。
いったい、シナリオのどこが優れているのか? 名セリフを登場順にふり返りながら、脚本の構成を考察してゆきます。
『恋人たちの予感』概要 脚本家はどんな人?
『恋人たちの予感』は1989年のアメリカ映画。犬猿の仲だった男女の、10年間に渡るつかず離れずの関係を描いた恋愛コメディです。
映画『恋人たちの予感』 | |
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原題 | When Harry Met Sally... |
製作 | 1989年 |
製作国 | アメリカ |
ジャンル | 恋愛コメディ |
上映時間 | 96分 |
監督 | ロブ・ライナー(『スタンド・バイ・ミー』『ミザリー』) |
脚本 | ノーラ・エフロン(『めぐり逢えたら』) |
出演 | ビリー・クリスタル、メグ・ライアン、キャリー・フィッシャー |
『恋人たちの予感』の脚本を書いたのは、ノーラ・エフロンです。本作でアカデミー脚本賞にノミネートされた彼女は、その後は監督&脚本家として、すぐれた恋愛コメディを発表します。
《ノーラ・エフロンの監督&脚本作品と、出演者》
- 『めぐり逢えたら』(1993)・・・トム・ハンクス、メグ・ライアン
- 『ユー・ガット・メール』(1998)・・・トム・ハンクス、メグ・ライアン
- 『奥さまは魔女』(2005)・・・ニコール・キッドマン、ウィル・フェレル
映画『恋人たちの予感』あらすじ【ネタバレなし】
1977年、シカゴ大学のキャンパス内。
ジャーナリストを志すサリー(メグ・ライアン)は、親友の彼氏・ハリー(ビリー・クリスタル)と車で相乗りして、ニューヨークをめざすことに。
2人は、途中でレストランに立ち寄ります。ウエィトレスがやってくると、サリーは
「ドレッシング添えのサラダと、パイ・ア・ラ・モード。パイは温めて・・・」
と、細かな注文をします。
その様子を見ていたハリーは、
「君は魅力的だ」
と、いきなり口説きます。
2人はふたたび車に乗りますが、「男女間で友情は成り立つか?」をめぐって言い争いになるのでした。
それから5年後。
ニューヨーク誌の記者となったサリーは、空港で恋人のジョーとキスをしていました。そこへ経営コンサルタントとなったハリーが通りがかり、ジョーに声をかけます。
他人のふりをしてその場をやり過ごしたサリーですが、飛行機の中で、ハリーと相席するハメになります。ハリーは、弁護士のヘレンと結婚するつもりだ、と告げます。
飛行機が空港に着くと、ハリーはサリーを夕食に誘ってきます。
婚約者がいるのに口説いてくるなんて!!
イラっとしたサリーは断り、2人はそこでわかれるのでした。
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それから5年後。
サリーは、恋人だったジョーと別れていました。
サリーと親友のマリー(キャリー・フィッシャー)が書店でおしゃべりしていると、じ~っと見つめてくる男性がいます。なんと、ハリーです!!
ハリーも離婚したばかりで、落ち込んでいました。ハリーは10年前に口説いたことを謝罪し、今度はサリーのほうが夕食に誘います。
2人はいつしか、“友達”として付き合うようになりますが・・・
『恋人たちの予感』名言を登場順にふり返る!男女の友情を描いた名シナリオも考察!
『恋人たちの予感』の脚本は、どこが優れているのか? 2点につきます。
- キャラクター性を浮かび上がらせるセリフ
- 「好き」 ⇆「嫌い」の感情のつなひき
名言をふり返りつつ、巧みな脚本のテクニックを分析してゆきます。
〖名言①〗ハリー「他人の人生を記事にするのかい?」
大学生のサリーは、親友アマンダの彼氏・ハリーと同乗して、NYに行くことになります。将来の夢を熱弁するサリーに、ハリーは冷めた口調で語ります。
サリー「(NYに行って)ジャーナリストの勉強を・・・」
ハリー「他人の人生を記事にするのかい?」
〖 名言②〗ハリー「僕は本を買うと、結末を先に読む」
「名言①」に続くシーン。友だちのアマンダから、ハリーのことを“暗い人”だと聞いていたサリー。そのことを告げると、ハリーは自慢げに語ります。
ハリー「僕は本を買うと、結末を先に読む。読み終わる前に死ぬと困る」
「名言①」と「名言②」は、ハリーが人生に冷めた悲観主義者であることを表現しています。
‘When Harry Met Sally’ is perfect any season but especially in autumn. https://t.co/y4EI38yMo8
— British Vogue (@BritishVogue) October 3, 2022
〖名言③〗マリー「夫を取られて平気なの?」
ジョーと別れたばかりで、いまは誰とも付き合う気はない、と語るサリー。そんなサリーに対して、女友だちのマリーはこう諭します。
マリー「どこかにあんたの(未来の)彼氏がいて、捕まえないと他の女に取られるのよ。(未来の)夫を取られて平気なの?」
失恋して落ち込んでいたら、いい男を他の女に取られちゃうよ。
という内容を、「夫を取られて平気なの?」というセリフで言い表しています。まだ出会ってもない相手を、“夫”と表現。肉食系女子・マリーらしい。
〖名言④〗サリー「彼って結婚を望まない男だと思っていたけど、ホントは私と結婚したくなかっただけなのよ」
真夜中のこと。昔の恋人・ジョーが結婚すると知ったサリーは寂しくなって、ハリーに電話します。ハリーはすぐにサリーの家へかけつけます。
サリー「彼(ジョー)って結婚を望まない男だと思っていたけど、ホントは私と結婚したくなかっただけなのよ!」
サリーは自分には欠点があるから捨てられたんだ、と嘆きます。
サリー「(ジョーは)なぜ私と結婚しようと思わなかったの? 理屈っぽいから?」
ハリー「魅力的じゃないか」
サリー「自分の考えを曲げない」
ハリー「長所だよ」
かつては、サリーのことを“オーダーの名人”と、皮肉っていたハリー。それが、本気で褒めるように変化しています。
もっとも重要なターニングポイントが、映画の2/3にあたる箇所にきています。
〖名言⑤〗ハリー「サンドイッチの注文に1時間半。でも君が好きだ。(中略)一日の最後におしゃべりしたい相手は、君だ」
大晦日の夜。
サリーこそが、自分にとって大切な人なんだ!
そう気づいたハリーは居ても立っても居られなくなり、サリーがいるパーティ会場まで走ってゆきます。
会場に着いたハリーは自分の気持ちを伝えますが、サリーは戸惑います。帰ろうとするサリーに対して、ハリーは・・・
ハリー「じゃあ、これならどうだ?サンドイッチの注文に一時間半。でも君が好きだ。僕を見るときの額のしわ。僕の衣服に染みつく君の香水の香り。
一日の最後におしゃべりしたい相手は、君だ!」
サリーが自分の欠点だと思っていたことを、すべて肯定してゆくハリー。オセロの盤上で、黒石がいっきに白石に裏返ってゆくような気持ちよさ!!
〖名言⑥〗サリー「あなたなんか死ぬほど大っ嫌いよ。本当に大嫌い・・・」
ハリーの突然の告白を受けて、サリーはどう返答していいかわかりません。
サリー「ほらね。あなたって人は・・・いつも憎めなくなることを言うんだから! あなたなんか死ぬほど大っ嫌いよ。本当に大嫌い・・・」
サリーは「大っ嫌い」を連発しようとしますが、言葉にならなくなってゆきます。自分の気持ちに嘘をつけないことの表れ。最高のクライマックス!!
大晦日の夜に、ハリーがサリーの元へ走ってゆき、クライマックスで「蛍の光」が流れる・・・
この一連のシークエンスは、名作コメデイ『アパートの鍵貸します』(1960)へのオマージュとなっています。『アパートの鍵貸します』とは、男女の設定が逆になっています。
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