ヴィム・ベンダース。テオ・アンゲロプロス。北野武・・・
名画座で流れる有名監督を想起させるような、中国映画があります。長江の雄大な景色をバックに、時代に取り残される人々を描く『長江哀歌』(ちょうこうエレジー)です。
この記事では、味わい深い中国映画『長江哀歌』のあらすじと魅力をご紹介します。
- 映画『長江哀歌』テレビ放送(2022)はいつ?北野武との関連性は?
- wikiよりわかる!『長江哀歌』あらすじ【沈みゆく町で,妻子を探す男&音信不通の夫を探す女】
- 『長江哀歌』感想【UFOやロケットも登場するミニシアター系?】
映画『長江哀歌』テレビ放送(2022)はいつ?北野武との関連性は?
『長江哀歌』(ちょうこうエレジー)は2006年の中国映画。タイトルの“哀歌”は「あいか」ではなく、「エレジー」。“悲しい気持ちをこめた歌”という意味です。
水力発電のダム建設にともない、沈みゆく運命にある町で生きる人々を描く人間ドラマです。
映画『長江哀歌』 | |
---|---|
原題 | 三峡好人(=三峡のお人好し) |
公開 | 2006年 |
ジャンル | ヒューマンドラマ |
上映時間 | 108分 |
監督 | 賈 樟柯(ジャ・ジャンクー)(『罪の手ざわり』) |
出演 | チャオ・タオ、ハン・サンミン |
受賞歴 | ヴェネチア映画祭 金獅子賞(最高賞) |
13:00 ~ 14:53
『長江哀歌』は、北野映画を製作してきた「オフィス北野」が配給しています。ジャ・ジャンクー監督も、北野武のファンであることを公言しています。
『長江哀歌』の劇中、Tシャツ姿のおっさん二人がバイクに乗って走るシーンがあります。『キッズ・リターン』で落ちこぼれ二人が自転車でグラウンドを走るシーンに、どこか似ているんですね。
Kids Return (1996)
— Gonzalo Gossweiler (@Gossweiler) February 18, 2021
Kizzu ritân (キッズ・リターン)
Dirección y guion: Takeshi Kitano.
Música: Joe Hisaishi. pic.twitter.com/cbplP8PKCU
wikiよりわかる!『長江哀歌』あらすじ【沈みゆく町で,妻子を探す男&音信不通の夫を探す女】
長江の本流には3つの峡谷が連なっており、“三峡”(さんきょう)と呼ばれる地帯があります。三峡の付近では、1993年から「三峡ダム」という巨大ダムの建設が始まりました。しかし、ダム建設により、ダムの底に沈むとみられる町や村もあり、住民たちも強制移住させられることになっています。
炭鉱夫のサンミン(ハン・サンミン)は16年前に別れた妻・ヤオメイや娘に会うため、三峡の町にやってきます。しかし、ヤオメイの家はすでに水の底に沈んでいます。役所で調べても、妻の消息はわからず。
サンミンは解体作業の仕事をみつけ、しばらくこの町に留まることにします。いずれ、妻や娘に再会できると思ったからです。
いっぽう。三峡の町・奉節(ほうせつ)の港に、看護師のシェン・ホン(チャオ・タオ)がやってきます。シェンは、三峡の工場に出稼ぎに出たきり帰らぬ夫を探しにきたのですが・・・
▲クリックすると動画が読み込まれます。
『長江哀歌』感想【UFOやロケットも登場するミニシアター系?】
大型ダムの開発に揺れる三峡の町では、解体作業がすすめられています。自治体から強制移住を命じられ、仕事のツテがある人たちは町を去っています。いっぽうで貧しい人々は取り残され、なけなしの仕事に従事しています。
物語の中心は、サンミンという中年男性とシェン・ホンという看護師の人探し。サンミンは16年前に別れた妻子を探し、シェン・ホンは出稼ぎにいったまま音信不通となった夫を探しています。
サンミンは仕事を通じてヤクザ映画にあこがれる若者と知り合い、シェン・ホンは不良に絡まれていた若者を救います。他人を助けている余裕はない時でも、ゆるやかな人と人とのつながりにホッとする・・・・
いわゆる“ミニシアター系”。
わかりやすいメッセージもなく、劇的な起承転結もない。見た人が、自分で“何か”を感じ取る映画です。そうかと思うと、作風と不釣り合いなシーンも挿入されます。
- 突然、ロケットのように飛び立つビル。
- 三峡の上空に飛来するUFO。
- サーカスのロープ芸のように、1本のロープの上を渡る男性。
唐突に出てくるファンタジーのようなシーンについて、ジャ・ジャンクー監督は
中国社会の発展があまりにも早いので、発展に伴って理不尽な出来事や理屈では説明できない出来事、あまりにも現実離れした出来事が、頻繁に発生しているから
と、答えています。
>> 『長江哀歌』インタビュー|シネマファクトリー[Cinema Factory]
発展著しい中国社会から取り残された人々を描く映画は、多々あります。ただ、感情の起伏さえ抑え、あっと驚くビジュアルで楽しませてくれる演出は、唯一無二!
鑑賞後、しばらく誰ともしゃべりたくない、と思わせてくれる余韻。こういう映画を観たかった!