※この記事は、2023年6月に更新しました。
人生が思い通りにいかないと、他人の成功がねたましくなります。
誰かに“言葉のナイフ”を向けたくなったら、観てほしい映画があります。ベルギー映画『トト・ザ・ヒーロー』です。
- 映画『トト・ザ・ヒーロー』の概要、公開日は?
- 映画『トト・ザ・ヒーロー』あらすじ
- 隠れた名作たる理由?『トト・ザ・ヒーロー』解説! ありえないシナリオの構成
- テーマは「人間賛歌」!それでも人生は素晴らしい!
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映画『トト・ザ・ヒーロー』の概要、公開日は?
『トト・ザ・ヒーロー』は1991年製作の映画。
向かいの家の子どもと取り違えられた主人公が、成功した相手を恨み、復讐するまでを描く人間ドラマです。
映画『トト・ザ・ヒーロー』 | |
---|---|
原題 | Toto le heros |
公開日 | 1991年5月16日 |
製作国 | ベルギー、フランス、ドイツ |
上映時間 | 92分 |
監督 | ジャコ・バン・ドルマル『八日目』 |
脚本 | ジャコ・バン・ドルマル |
出演 | ミシェル・ブーケ、ジョー・ド・バケール |
映画『トト・ザ・ヒーロー』あらすじ
病院で取り違え? 幼なじみに向けられた憎悪の理由とは?
老人ホームで暮らすトマは、向かいの家に住むアルフレッドを心の底から憎んでいました。トマは人生を回想します・・・
・・・トマとアルフレッドは、同じ病院で同じ日に生まれました。ところが火事が起き、二人は取り違えられ、まったく別々の人生を歩むことになったのです。
トマの家族は、飛行士のパパと優しいママ、美人の姉アリスとダウン症の弟。つつましいながらも幸せな暮らしです。トマの夢は、TVヒーロー『名探偵トト』となって、世界中を冒険することでした。
僕の大好きな姉を奪うな!
いっぽうのアルフレッドは、スーパーを経営するカント家の子どもとなります。
あるとき。カント家の依頼で、トマのパパは飛行機で外国へ向かいます。しかし、雷雨に見舞われ、パパは帰らぬ人となってしまいます。
(パパの死は、アルフレッドのお父さんのせいだ!)
トマの姉アリスが思春期になったとき。アリスは、近所のアルフレッドと恋仲になります。姉のことが大好きだったトマは、アルフレッドに激しく嫉妬して・・・
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隠れた名作たる理由?『トト・ザ・ヒーロー』解説! ありえないシナリオの構成
娯楽映画の基本は、“因果関係の連鎖”
エンタメ映画の脚本は、通常は「因果関係の連鎖」で成り立っています。たとえば、メル・ギブソン主演の『マッド・マックス』を例にとると・・・
暴走族のチームが、パトカーを奪って逃げる
⇨ 警官のマックスが追いかけると、ボスは運転をミスって事故死
⇨ 逆恨みした暴走族は警察署を襲い、マックスの仲間の命を奪う
⇨ 怖くなったマックスは、家族と逃げようとする
⇨ 暴走族一味が追ってきて、マックスの妻は大ケガする
⇨ マックスは逆ギレして、一味を追う
前のシーンの出来事が主人公(または悪役)の感情を揺さぶり、それが目的を生み、次のシーンの行動へと繋がるのです。
実際の人生は、“偶然の連続”
『トト・ザ・ヒーロー』は違います。前後のつながりがないエピソードを時系列順に並べています。私たちの実際の人生のように、「偶然の連続」で映画が構成されているのです。
本来、「偶然の連続」で物語を作ると、主人公の目的やテーマが見えづらくなり、感情移入できなくなってしまいます。
そこで『トト・ザ・ヒーロー』は、導入部分をミステリー仕立てにしています。冒頭では、老人となったトマが、アルフレッドに拳銃を向ける場面が描かれます。
「なぜ、トマは幼なじみのアルフレッドを憎むようになったのか?」
この謎のおかげで、観客は推理をしながら観ることができます。バラバラのエピソードを並べているのに興味が持続するという、変わった構成となっているのです。
テーマは「人間賛歌」!それでも人生は素晴らしい!
他人にヘイトを向ける前に、自分の人生を肯定しよう
もし、病院の取り違えがなかったら、トマは裕福なカント家にもらわれていました。“最愛の人”であるアリスとは姉弟ではなく、恋人になれたかもしれません。
しかし、飛行士のパパ一家の子供として過ごしたからこそ、得られた幸せもあったはず。
『トト・ザ・ヒーロー』を最後まで観ると伝わってくるのは
「どんな人生だって、素晴らしいものなんだよ」
というメッセージです。
不朽の名作『素晴らしき哉、人生!』のファンタジックな進化系!
アメリカのドラマ映画に、『素晴らしき哉、人生!』(1946年)という名作があります。人生に絶望した男が、天使に“過去”を見せられ、人生を見つめ直すお話です。
テーマは人間賛歌。
「どんな人間だって幸せな時間を過ごし、誰かを幸せにしてきたのではないか?」
そんなことを投げかけてくれる作品です。
『トト・ザ・ヒーロー』もテーマは人間賛歌。
ただ、『素晴らしき哉、人生!』のフランク・キャプラ監督は、ていねいに物語ってゆく職人タイプ。
『トト・ザ・ヒーロー』のジャコ・バン・ドルマル監督は、CMディレクターのような演出をします。音楽に合わせて花が踊ったり、ミニチュアの兵士の振動で、不穏な空気を表したり・・・ビジュアルでイメージを喚起する、まさに映像作家!
ラストの演出には、ぶったまげました。冒険者に憧れていたトマが、思わぬ形で大冒険します。
新しい!こんな豊かな表現方法があるなんて!!
『百万円と苦虫女』のタナダユキ監督は、『トト・ザ・ヒーロー』のおかげで映画製作をつづけられたと語っています。それだけクリエーターに影響を与えた作品です。
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