アルフレッド・ヒッチコック監督の『サイコ』(1960)は、サスペンス映画史に残る名作。ジャネット・リー演じるOLが、シャワー室で刃物をもった何者かに襲われるシーンはあまりにも有名です。
ヒッチコックの演出力もあり、あれほど観客に恐怖と驚きを与えた映画もないでしょう。
その『サイコ』に続編があると知り、Amazonプライムで見つけたので視聴しました。有名作品の続編というと色眼鏡で見られがちですが・・・なかなかどうして、面白かった!
監督は?小説とは別物?映画『サイコ2』概要
『サイコ2』は1983年のアメリカ映画。精神病院から退院したノーマン・ベイツの周りで起こる奇怪な事件の真相に迫る、サイコ・スリラーです。
映画『サイコ2』 | |
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原題 | Psycho II |
公開 | 1983年 |
製作国 | アメリカ |
ジャンル | ホラー、サイコ・スリラー |
上映時間 | 113分 |
監督 | リチャード・フランクリン(TVシリーズ『The Lost World 』) |
脚本 | トム・ホランド(TVドラマ『ランゴリアーズ』) |
出演 | アンソニー・パーキンス、ヴェラ・マイルズ |
前作『サイコ』はロバート・ブロックの同名小説を原作としています。
小説『サイコ2』の場合、ノーマンの主治医がハリウッドのコンサルタント業を請け負う話で、ホラー映画を皮肉るような内容になっています。
しかし、映画『サイコ2』は小説から大きく離れ、実家に戻ったノーマンが心の病と葛藤するストーリーとなっています。
監督はオーストラリア出身で、TVドラマを中心に撮っていたリチャード・フランクリン。彼自身がヒッチコックの熱烈なファンだったこともあり、前作の雰囲気をそのまま引き継いでいます。
映画『サイコ2』あらすじ【ネタバレなし】
【ベイツ・モーテル】の所有者であったノーマン・ベイツ(アンソニー・パーキンス)は、22年ものあいだ精神病院に入っていました。そんな彼が社会復帰することになります。
ノーマンは主治医のレイモンドのすすめで、実家ちかくのレストランで働くことになります。若いウェイトレスのメアリー(ヴェラ・マイルズ)と知り合ったノーマンは、同棲中の彼氏に追い出されたメアリーを【ベイツ・モーテル】へ泊めてあげようとします。
ところが、ノーマンの入院中に【ベイツ・モーテル】の運営を任されていたトゥーミーが、怪しげな客ばかり泊めていました。
怒ったノーマンはトゥーミーを解雇し、メアリーをモーテルに宿泊させます。
ノーマンは、いまだ心の病と闘っていました。ときおり亡くなったはずの母の怒声がノーマンの耳に響き、彼を苦しめていたのです。幻覚を見ることもありました。
そんな中、屋敷でメモが見つかります。
「あのアバズレを追い出さないと、私が命を奪うよ! 母より」
うろたえるノーマンのもとに、“母を名乗る人物”から電話がかかってきて・・・
『サイコ2』感想!がんばれサイコパス!人物の“二面性”が生むミスリードが巧み!
興味深いのは、“サイコパス”であるノーマンを同情すべき存在として描いているところ。理解の及ばない“犯罪者”としてではなく、病気に苦しむ“一個の人間”として扱っているのです。
ノーマンは、自分が解雇した中年男・トゥーミーから、執拗に嫌がらせを受けます。
ノーマン <<< トゥーミー
となり、あくどさの印象値ではトゥーミーのほうが上。
嫌味な男にいじめられ続ける主人公を、思わず応援したくなります。
「がんばれサイコパス! やり返してやれ!」
かと思うと、ウェイトレスのメアリーから見たノーマンは、いつ暴発するかわからない精神病患者。ノーマンが心の病と闘っていると理解しつつ、ひとたび彼がナイフを手に取ると“恐怖の対象”となってしまいます。
ナイフがキラリ✨と光っただけで、怖え~っ!!
また、ノーマンから見たメアリーにも二面性があります。病気の自分を理解してくれる素直な子であると感じつつも、何か意図があって自分に近づいているのでは、と疑いも抱くのです。
やがて、ノーマンの周囲で住民が不審な死を遂げていくと・・・
- “サイコパス”のノーマン・ベイツの仕業か?
- ノーマンに恨みを抱く誰かが、彼に罪を着せようとしているのか?
ノーマンやメアリーに感情移入しつつも、“どちらも信用できない”という設定が、ハラハラドキドキを引っ張ってくれます。
ただし、突如おとずれる「ショッキング・シーン」は、おしっこチビリそうなほど怖いです。子供が見たらトラウマになるので、鑑賞には注意してください。
ちなみに『サイコ』にはまだ続編があり、
- 『サイコ3/怨霊の囁き』(1986年)
- 『サイコ4』(1990年)TV映画
と、4作目まで作られています。