映画ときどき海外ドラマ

テレビ放送や動画配信など、おうちで映画を楽しむブログ

笑わないガルボが笑った!白黒コメディ映画『二ノチカ』

二ノチカ

80年近くも前に作られたのに、まったく古さを感じさせない映画があります。

 

今回ご紹介するのは、エルンスト・ルビッチ監督の名作コメディ映画『二ノチカ』です。

 

エルンスト・ルビッチ監督『二ノチカ』の概要

 

映画『二ノチカ』は、立場の違う男女がひかれあい、お互いが変わってゆく様を描いたロマンティック・コメディ。背景には共産主義体制の滑稽さが描かれていて、ソビエト連邦を風刺した内容となっています。

 

二ノチカ
原題 Ninotchka
製作国 アメリカ
公開年 1939年
上映時間 110分
監督 エルンスト・ルビッチ
原案 メルヒオル・レンジェル
脚本 ビリーワイルダー他
出演 グレタ・ガルボ、メルヴィン・ダグラス

 

監督のエルンスト・ルビッチはドイツ出身。洗練されたセリフ運びで、軽やかなコメディ作品を世に送り出しています。

 

注目は、脚本にクレジットされているビリー・ワイルダー。のちに、『お熱いのがお好き』(1959)『アパートの鍵貸します』(1960)などの傑作コメディを生みだすことになります。

 

 

 『二ノチカ』のあらすじとレビュー

 

 簡単なあらすじ

 

ソビエト連邦から、ブリヤノフ、イラノフ、コバルスキーという3人の役人がパリにやってきます。彼らの目的は、ロシア革命のときに貴族から没収した宝石類を売って、お金にすること。食糧難に苦しむ母国を救うためでした。

 

3人はパリの高級ホテルに泊まり、そこの金庫に宝石を隠します。

 

そのころ。パリにはロシアから亡命してきたスワナ大公妃が住んでいました。大公妃は、ホテルのボーイをしている昔の忠臣から、自分のものだった宝石が売り出されようとしていることを知らされます。

 

大公妃は、宝石の所有権を主張。彼女の愛人であるレオン伯爵(メルヴィン・ダグラス)は裁判所に働きかけます。さらにレオンは、ブリヤノフ、イラノフ、コバルスキーと宝石商の商談の場に乗りこみ、売買をやめさせます。

 

レオンは、3人に豪華な食事を与え、踊り子の娘たちを部屋に招き入れます。資本主義のぜいたくを味わわせて、味方につけようというのです。

 

しびれを切らしたロシア政府は、3人のお目付け役として“特命全権大使”を送りこみます。ブリヤノフ、イラノフ、コバルスキーが駅まで迎えに行くと、現れたのはなんと、女性共産党員二ノチカ(グレタ・ガルボ)でした。

 

 

二ノチカは、パリの進んだ技術を視察するため、あちこちに足を運びます。あるとき、交差点で赤信号を待っていた二ノチカに、レオンが声をかけます。レオンは、二ノチカにひと目ぼれ。裁判で争うことになる相手とも知らず、彼女を口説こうとするのでした・・・

 

面白い! 圧倒的なメジャー性!

 

『二ノチカ』は、ソビエト連邦の社会主義体制を豪快に笑い飛ばすような作品です。

 

しかし、表向きはあくまでオーソドックスな恋愛映画。資本主義社会で育ったプレイボーイと、厳格な共産党員の“笑わない”女性がひかれ合ってゆく物語です。

 

『二ノチカ』を名作たらしめているのは、そのバランス感覚。

 

恋愛を“生物学的な化学反応”と捉えているような堅物の女性が、まったく異なる文化に触れ、表情がやわらかくなってゆきます。彼女が初めて笑うシーンは、本作の見どころのひとつです。演出が見事で、心をわしづかみにされます。

 

レオンのほうも、資本主義の矛盾に気づいてゆきます。財産や血筋で雇用関係が成り立っていることに疑問を持ち、執事の待遇を変えてあげようとします。

 

 資本主義 > 共産主義だけど、共産主義の価値観すべてを否定しない

 

 製作国はアメリカですが、監督はドイツ出身。原案はハンガリー。主演のグレタ・ガルボはスウェーデン出身。多国籍の人材が製作に関わっているためか、一方的な価値観の押しつけがなく、後味をさわやかなものにしています。

 

ソビエト政府から派遣されたブリヤノフ、イラノフ、コバルスキーの3人もいい味だしています。酔っぱらってすぐに上司の悪口を言うところなど、笑かしてくれます。

 

ソビエト連邦に関しては、中学で習う程度の知識があればじゅうぶん。とにかく、人物配置や性格付けがわかりやすいので、時代を越えた面白さがあります。

 

 

 小津安二郎や三谷幸喜も憧れた?

 

『二ノチカ』は、いわゆる“ウェルメイド”なコメディ映画です。ドタバタアクションで笑わせるのではなく、ボケ・ツッコミの漫才調で笑わせるのでもありません。

 

あくまで「登場人物の設定や、脚本の構成の巧みさ」で笑わせるタイプの作品です。

 

脚本に参加したビリー・ワイルダーを始め、フランソワ・トリュフォー、小津安二郎なども影響を受けています。三谷幸喜さんも、和田誠との対談をまとめた書籍『これもまた別の話』の中で、ルビッチへの憧れを語っています。