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恋愛映画『二ノチカ』あらすじと解説!共産主義を皮肉った内容とは?

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二ノチカ

※この記事は、2021年5月に更新しました。

80年以上も前に作られたのに、まったく古さを感じさせない映画があります。

この記事では、映画『二ノチカ』のあらすじをご紹介。エルンスト・ルビッチ監督や女優のグレタ・ガルボ、共産主義を皮肉った内容についても解説します。

外国映画『二ノチカ』NHKのBSでの放送はいつ?原題は? 上映時間は?

 『二ノチカ』は1939年のアメリカ映画。

立場の違う男女がひかれあい、お互いが成長してゆくロマンティック・コメディです。背景には“共産主義体制の滑稽さ”が描かれていて、ソビエト連邦を風刺した内容となっています。

二ノチカ
原題 Ninotchka
製作国 アメリカ
公開年 1939年
上映時間 110分
監督 エルンスト・ルビッチ
原案 メルヒオル・レンジェル
脚本 ビリー・ワイルダー
出演 グレタ・ガルボ、メルヴィン・ダグラス

 

『二ノチカ』のテレビ放送は、2021年5月22日()の深夜。NHKのBSプレミアムの「BSシネマ」にて。

24:00 ~ 25:52

 『二ノチカ』の内容【ネタバレなし】

ソビエト連邦から、ブリヤノフ、イラノフ、コバルスキーという3人の役人がパリにやってきます。彼らの目的は、ロシア革命のときに貴族から没収した宝石類を、現金に変えること。食糧難に苦しむ母国を救うためでした。

 

そのころ。パリにはロシアから亡命してきたスワナ大公妃が住んでいました。大公妃は、かつての家来から、自分が所有していた宝石が売り出されようとしていることを知らされます。

大公妃は、宝石の所有権を主張します。

大公妃の愛人・レオン伯爵(メルヴィン・ダグラス)は、ブリヤノフ、イラノフ、コバルスキーのいるホテルへゆき、豪華な食事を与え、踊り子たちを部屋に招き入れます。資本主義のぜいたくを味わわせて、味方につけ、宝石の換金をやめさせようというのです。

 

いつまで経っても、宝石が現金化されない!

しびれを切らしたロシア政府は、3人の監視役として“特命全権大使”を送りこみます。ブリヤノフ、イラノフ、コバルスキーが駅まで迎えに行くと、現れたのはなんと、女性の共産党員二ノチカ(グレタ・ガルボ)でした。

 

 二ノチカは、パリの進んだ技術を視察するため、あちこちに足を運びます。

あるとき、交差点で赤信号を待っていた二ノチカに、レオンが声をかけます。レオンは、二ノチカにひと目ぼれ。裁判で争うことになる相手とも知らず、彼女を口説こうとしますが・・・

『二ノチカ』解説:共産主義を皮肉っているが、すべてを否定しない!

 『二ノチカ』は、ソビエト連邦の社会主義体制を笑い飛ばすような作品です。ソビエトから派遣されたブリヤノフ、イラノフ、コバルスキーの3人が、お酒を飲んで愚痴る場面があります。

  • 言いたいことも言えない
  • 欲望をおさえて暮らしているので、ストレスが溜まっている

共産主義の“負の部分”を、笑いを交えて浮き彫りにしています。

(出典:Classic Movie Hub on X)

しかし、表向きはオーソドックスな恋愛映画。資本主義社会で育ったプレイボーイと、共産党員の“笑わない”女性がひかれ合ってゆく物語です。

 

『二ノチカ』を名作たらしめているのは、そのバランス感覚です。

 

恋愛を“生物学的な化学反応”と捉えているお堅い女性が、まったく異なる文化に触れ、表情がやわらかくなってゆきます。彼女が初めて笑うシーンは、本作の見どころのひとつ。

(⇦ 古沢良太 脚本で杏 主演のドラマ『デート〜恋とはどんなものかしら〜』は、設定はこのまんま!)

 

レオンのほうも、資本主義の矛盾に気づいてゆきます。財産や血筋で雇用関係が成り立っていることに疑問を持ち、執事の待遇を変えてあげようとします。

 

 資本主義 > 共産主義だけど、共産主義の価値観すべてを否定しない

 

 製作国はアメリカですが、監督はドイツ出身。原案はハンガリー。主演のグレタ・ガルボはスウェーデン出身。多国籍の人材が製作に関わっているためか、

「共産主義もおかしいけど、資本主義にもよくないところ、あるよね?」

と、どちらにも配慮したバランスとなっています。

一方的な価値観の押し付けがないので、後味をさわやかなものにしています。

監督のエルンスト・ルビッチ、女優のグレタ・ガルボとは?

監督のエルンスト・ルビッチはドイツ出身。洗練されたセリフ運びで、軽やかなコメディを世に送り出しています。特に、ポーランドの劇団員たちがナチスにひと泡ふかそうと奮闘する『生きるべきか死ぬべきか』(1942)は、風刺コメディの傑作です。

『二ノチカ』は、いわゆる“ウェルメイド”なコメディ映画。ドタバタ劇やボケ・ツッコミで笑わせるのはなく、あくまで「人物の設定や、構成の巧みさ」で笑わせるタイプの作品です。

 脚本に参加したビリー・ワイルダーを始め、フランソワ・トリュフォー、小津安二郎なども影響を受けています。三谷幸喜も書籍『これもまた別の話』の中で、ルビッチへの憧れを語っています。

 

 グレタ・ガルボは、サイレント映画からトーキー(セリフ、音楽などが入った映画)初期に活躍した女優さん。スウェーデン出身ですが、1926年にハリウッドに招かれています。『肉体と悪魔』(1926)、『マタハリ』(1931)、『グランド・ホテル』 『アンナ・カレニナ』(1935)などの代表作があります。