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『MIU404』『アンナチュラル』脚本家・野木亜紀子はここがスゴい!

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『MIU404』『アンナチュラル』脚本家・野木亜紀子はここがスゴい!

演技力のない俳優の起用。マンガ原作ばかり・・・そんな民放ドラマが多い中、ひときわ異彩を放っている作品があります。TBSの金曜ドラマ『MIU404』です。

 

『MIU404』は、初動捜査のプロフェッショナルたちの活躍を描いた刑事ドラマ。脚本は、『アンナチュラル』『逃げるは恥だが役に立つ』の野木亜紀子 氏です。原作はなく、彼女のオリジナル脚本となっています。

 

テーマの選び方&時代の切り取り方がスゴい!

 

『アンナチュラル』では、不条理な死に巻きこまれた被害者の遺族が、その理不尽な喪失感とどう向き合ってゆくかが描かれました。

 

『MIU404』の脚本は、何をテーマに書かれているのでしょうか?

 

たとえば、第4話。裏世界に足を踏み入れてしまったホステスが、違法カジノで人生を狂わされてゆきます。彼女は賭博に関する罪で逮捕されますが、同じ違法行為を行なっていた上場企業の役員や官僚は罪に問われません。

 

 

 

第5話では、ベトナム人留学生がWワークしながら学費をかせぐ実態が描かれます。「安い外国の労働力が、わたしたち日本人の生活を便利にするために利用されている」、という強烈なメッセージが突きつけられます。

 

 

第7話では、指名手配犯を追っていた伊吹(綾野剛)と志摩(星野源)が、ホームレスの男性から情報提供を受けます。この回では、同じように貧しい生活を送っていた経済的弱者なのに、「犯罪を起こした人間は注目されるけれど、まっとうに生きている弱者には誰も見向きもしない」ということが鮮明になります。

 

『MIU404』で、野木亜紀子が一貫して描いているテーマ。それは、まっとうに生きようともがいているけれど生活が豊かにならない、そんな社会的弱者の報われない思いです。

 

 

人間ドラマを深めるための脚本テクニックがスゴい!

 

 野木亜紀子 氏は、とにかく時間の省略がうまい脚本家です。ふつうの刑事ドラマなら尺を取るべきシーンで、徹底的な“時間”カットが行われています。

 

  1. 関係者への聞きこみ ⇨ 複数の目撃者から証言を得ている様子を、編集で短くする
  2. 犯行のあらまし ⇨ 刑事たちのモノローグで説明する

 

刑事が自分たちの足で、関係者に聞きこみをする・・・刑事ドラマでは必要な手順です。 野木亜紀子 脚本はこの時間をできるだけ短くします。重要な証言部分だけをピックアップして、短いカットで繋いでゆくのです。

 

また、どんな事件があったかを示す時は、回想シーンを多用します。<刑事が供述書を読み上げる>という形で、事件の概要をサラっと説明します。

 

こうすることで、主要キャラクターである伊吹や志摩たちの会話に尺を取れるようになります。被害者や社会的弱者のドラマ部分に、時間を割くことができます。

 

当たり前のシーンから時間をカットし、浮いた時間を人間ドラマを深めるために使う・・・脚本家・野木亜紀子の“時短テクニック”は、『アンナチュラル』でも至るところに使われています。

 

 

 とくに『アンナチュラル』第4話は上手い。すでに聞きこみを終えた弁護士が主人公のもとを訪れ、事件の概要を短時間で説明してしまいます。事件の発端から3人の容疑者の紹介までを 、1回の回想シーンだけで処理する手際のよさ。鳥肌ものです。

 

Amazonプライムビデオで『アンナチュラル』を観る

 

  『アンナチュラル』は2020年8月現在、Amazonプライムビデオで配信されています。

 

民放ドラマの視聴者層に合わせたチューニングがスゴい!

 

民放のドラマの多くは、「F1層」をターゲットに作られています。「F1層」とは、20歳から34歳までの女性を指します。なぜ「F1層」をターゲットにしているかというと、購買力が高いからです。ドラマの合間には、化粧品やお菓子などのCMがばんばん流れます。

 

しかし、「F1層」は難しいストーリーを嫌う傾向にあります。ベタな恋愛ドラマだったり、パターンの決まった推理ドラマのほうか好まれます。本来なら、『MIU404』のようなゴリゴリの社会派ドラマは、視聴率を取れません。

 

野木亜紀子 脚本はここでも一工夫。意図的に、刑事たちの会話レベルを下げています。現実社会なら、いい年した大人(しかも刑事)が「メロンパン10個がどうのこうの・・・」みたいなくだらない会話で盛り上がらないでしょう。しかし、中学生でも親しみやすいコメディタッチの会話を入れることで、シリアスなテーマとのバランスを取っています。

 

 

 

野木亜紀子 脚本の本来の持ち味は、シリアスさ・陰鬱さです。NHKドラマ『フェイクニュース』ではSNSの闇が暴かれましたし、デビュー作『さよならロビンソンクルーソー』でも社会の底辺で生きる若者の絶望が描かれていました。おちゃらけた会話はなく、ひたすら暗い雰囲気でドラマは進行します。

 

しかし、シリアス一本では民放ドラマではやっていけません。野木氏自身が、視聴者層に合わせて、作品の雰囲気をチューニングしているのでしょう。それに加えて、TBSのプロデューサーが彼女の脚本を民放むけに調整できているのだと思います。