『イカとクジラ』のノア・バームバック監督の最新作『マリッジ・ストーリー』の配信が始まりました。
この記事では、「アカデミー賞有力」とも言われる映画『マリッジ・ストーリー』のあらすじとキャスト、映画を視聴した感想について述べたいと思います。
アカデミー賞最有力? 『マリッジ・ストーリー』の概要
『マリッジストーリー』の概要
『マリッジ・ストーリー』は、2019年製作の映画。子供の親権や財産分与をめぐり、離婚調停することになった一組の夫婦を描いた人間ドラマです。
マリッジ・ストーリー | |
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原題 | Marriage Story |
製作国 | アメリカ、イギリス |
配信開始 | 2019年 |
ジャンル | ドラマ |
上映時間 | 136分 |
監督 | ノア・バームバック |
脚本 | ノア・バームバック |
出演 | スカーレット・ヨハンソン、アダム・ドライバー |
ノア・バームバック監督の繊細な人間描写は高く評価されていて、すでにゴールデングローブ賞の作品賞・脚本賞などにノミネートされています。
2020年のアカデミー賞でも、作品賞の有力候補とみられています。
アカデミー賞のノミネート発表は2020年1月13日、授賞式は2020年2月9日(現地時間)に行なわれる予定です。
配信はNetflix! amazonでは見られない?
『マリッジ・ストーリー』はイオンシネマなど一部の映画館でも公開されますが、基本的には動画配信サービスNetflix(ネットフリックス)での配信となります。
Netflixのオリジナル映画ですので、amazonプライムビデオなど他の動画配信サービスでは視聴できません。
『マリッジストーリー』あらすじとレビュー
簡単なあらすじ
舞台の演出家・脚本家であるチャーリーと、その妻で劇団女優のニコール。二人はお互いの長所を認め合っていました。
チャーリーは、ニコールのことを人の話をよく聞き、相手を気遣える人だと評価していました。いっぽうのニコールは、チャーリーのことを意志が強く几帳面な人だと評価していました。
しかし、チャーリとニコールはお互いに対して不満を抱き、長所すらも欠点に見えるようになってしまいます。二人は離婚を決意。ひとり息子の親権や財産をめぐって、離婚調停を進めることになります。
ニコールは、離婚専門の弁護士・ノラに依頼し、チャーリーが受け取る国からの支援金の半分を要求します。
これに対し、チャーリーは仕事のためNYへ拠点を移そうとしたことから、息子のヘンリーの親権を失いかけます。チャーリーはベテラン弁護士のバートに依頼し、ヘンリーと会える時間を確保しようとします。
ニコールもチャーリーも、自分の要求が通ればそれでいい、と思っていました。お互いを傷つけることが目的ではありません。しかし、離婚裁判において権利を主張するということは、徹底的に相手をおとしめることを意味していたのです・・・
キャスト
監督のノア・バームバックをして、「キャストこそ本作の特殊効果だ」と言わしめた魅力的な俳優陣。主演2人はもちろんですが、彼らを支える弁護士役にも注目。ローラ・ダーン演じる弁護士ノラが、めちゃくちゃカッコよかった!
ニコール・・・スカーレット・ヨハンソン
元・映画女優。チャーリーとの交際をきっかけに映画をやめ、彼の劇団の舞台俳優へと転身する。
チャーリー・・・アダム・ドライバー
舞台の演出家であり脚本家。地道な演劇活動が評価され、国からの支援を受けることになる。
ノラ・ファンショー・・・ローラ・ダーン
離婚専門弁護士。ニコールを弁護する。
バート・スピッツ・・・アラン・アルダ
チャーリーの最初の弁護士。老齢でおだやか。
ジェイ・マロッタ・・・レイ・リオッタ
チャーリーの2番目の弁護士。舌鋒するどく、徹底的に訴訟相手をたたきのめす。
感想・・・愛することは憎むこと!
冒頭。チャーリーとニコールの独白(=心の声) で、お互いの長所をホメ合っているシーン。
・ニコールの飲まないのに紅茶を入れるところ。すごい腕力でビンの蓋をあけるところ。
・チャーリーの、ゲームで子供相手にもどなってしまう負けず嫌いなところ。他人の話を聞き流してしまう、意志の強いところ。
独白(=心の声)と映像が逆というユーモラスな演出で、長所と短所が紙一重であることを示します。
ニコールが離婚にふみ切った一番の理由は、自分の話を聞いてもらえなかったこと。
「子どもは誰かの所有物ではないのに、わたしは誰かの所有物」
と、弁護士のノラに悩みを打ち明けます。
面白いのはニコールがチャーリーを毛嫌いしはじめたのに、ニコールの姉や母はチャーリーをまだ大好きだということ。裁判所命令の封筒を渡すことさえ、苦労します。
クライマックスは、上映開始から1時間35分あたりのシークエンス。長引く調停でお互いを傷つけ合い、疲弊した二人はチャーリーの部屋でひさびさに二人だけの時間を過ごします。
打ち解けたと思いきや、チャーリーの1回限りの浮気が持ち出され、一色即発状態に。
「あなたとのセックスを思い出しただけで鳥肌が立つ!」
「君はたとえ僕と正反対の男を見つけたとしても、数年後には歯向かう!」
ニコールとチャーリーはエゴをむき出しにして罵り合ったあと・・・初めて隠してもっていた心情を吐露しあいます。
観客の感情をジェットコースターのように揺さぶる構成が見事で、鳥肌が立ちました。そして、号泣しました。
心理描写を辛辣に、やさしい目線で描くノア・バームバック演出
わたしがノア・バームバック監督作をみるのは、これが3度目。
1作目は、『イカとクジラ』。教職で元・作家の夫と、新進作家の妻の関係が悪化。子供たちや親まで巻きこんでの離婚騒動を描いたコメディタッチのドラマです。
家族がまっぷたつに分かれ、そのひずみが子供たちの学校生活にも表れてしまうというストーリーテリングが見事で、全米批評家協会賞で脚本賞を受賞しています。
2作目は、『フランシス・ハ』。都会で自由奔放に生きている女の子が、実は周りのみんなから敬遠されている、というお話。好き勝手生きるがゆえに孤独を抱える主人公が痛々しいのですが、どこまでもユーモラスな演出で描かれます。
初めてこの作品を観たとき、パッケージの主人公のように街へかけ出したい衝動にかられたことを、鮮明に覚えています。
ノア・バームバック演出は、おそろしいまでに人間観察眼にすぐれているのですが、目線がやさしいのが特徴です。洗練された会話の中に知的なユーモアがあります。人生のどん底を描いているのに、なぜか前向きな気持ちになれるという、めずらしい作品です。