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映画『マラドーナ』解説!“神の手”ゴールの裏にあった元アルゼンチン代表の革命家魂

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映画『マラドーナ』解説!“神の手”ゴールの裏にあった革命家魂

伝説の5人抜きドリブル。対戦相手のサポーターに「Fack you!」のポーズ。神の手ゴール。コカイン使用。記者会見で、放送禁止用語でメディアを侮辱。

 

アルゼンチンの元サッカー選手ディエゴ・マラドーナは、エピソードに事欠きません。傍若無人。エネルギッシュ。子供がそのまま大人になったような人物です。そんな彼に、まったく違った一面があることを教えてくれる映画があります。

 

2008年公開のドキュメンタリー映画『マラドーナ』です。

 

 

ドキュメンタリー映画『マラドーナ』概要

 

『マラドーナ』は、2008年公開の映画。『アンダーグラウンド』で知られる エミール・クストリッツァ監督が聞き手となり、サッカー界のスーパースター、ディエゴ・マラドーナの実像にせまってゆくドキュメンタリーです。

映画『マラドーナ』
原題 Maradona by Kusturica
製作国 スペイン、フランス
製作年 2008年
上映時間 95分
監督 エミール・クストリッツァ

ただ、この映画は通常のドキュメンタリー映画に比べて、やや説明不足です。予備知識がないと、わかりづらい面があります。

 

そこで、

  • マラドーナの“神の手ゴール”の背景
  • 聞き手の映画監督 エミール・クストリッツァとは?

 の2点に絞り、解説してゆきたいと思います。

 

 

解説!“神の手”ゴールの裏にあったフォークランド紛争と、革命家魂

 

マラドーナを伝説のサッカー選手たらしめているのが、2つのゴールです。

 

ひとつが、“神の手”ゴール。ゴール前に上がった、相手DFのクリアミス。相手キーパーと競り合う形になったマラドーナは、左手の拳で先に触り、ゴールに押しこみます。

 

主審はハンドに気づかず、ゴールを認めてしまいます。

 

そのわずか、4分後。センターライン付近でボールを受けたマラドーナ。クルっと反転して2人をかわすと、そのままドリブルで加速。緩急で2人のDFをかわし、最後はキーパーまでかわしてゴール。これが、“5人抜き”ゴールです。

 

なんと、この2つの伝説的なゴールが生まれたのは、同じ試合です。1986年のメキシコW杯の準々決勝で、アルゼンチンの対戦相手はイングランド代表でした。

 

www.youtube.com

 

当時、イギリスとアルゼンチンは、政治的に対立していました。1982年の3月、イギリス領だったフォークランド諸島の領有をめぐって、イギリスとアルゼンチンの間で3か月に渡る紛争が起こります。

 

イギリスは陸・海・空軍を動員、さらにアメリカ軍、NATO軍も加わり、アルゼンチン軍を撃退します。アルゼンチンは88人の兵士を失いました。

 

マラドーナの2つのゴールには、「命を奪われた母国の若者のかたき討ち」という信念があったのです。ただの試合ではなくて戦争。スポーツマン精神に欠けるとか、そんな言葉では片付けられない背景があったのです。

 

選手を引退してからも、マラドーナはイギリスやアメリカの政治家と会おうとはしません。ブッシュ大統領の在任時は、抗議集会にも参加しています。西側諸国や政治家に媚びないという革命家魂は、“悪童”というマラドーナのイメージを覆すものでした。

 

 

 

解説!西側諸国への反抗?監督エミール・クストリッツァの逆襲

 

マラドーナのインタビュアーとして登場する、背の高いひげ面の男。彼の立ち位置がわからないと、このドキュメンタリー映画の本質は見えてきません。エミール・クストリッツァとは、何者でしょうか? 

 

エミール・クストリッツァの監督作品

  • 『ドリー・ベルを憶えている?』(1981)
  • 『パパは、出張中! 』(1985)
  • 『アリゾナ・ドリーム 』(1992)
  • 『アンダーグラウンド』(1995)
  • 『黒猫・白猫 』(1998)
  • 『ライフ・イズ・ミラクル』(2004)
  • 『ウェディング・ベルを鳴らせ!』(2007) 
  • 『オン・ザ・ミルキー・ロード』(2016)

 

エミール・クストリッツァは、旧ユーゴスラヴィアのサラエボ出身の映画監督。『パパは出張中!』(1985)と『アンダーグラウンド』(1995)で、カンヌ映画祭のパルムドール(=最高賞)を受賞しています。ジプシー音楽を主体としたバンド、「エミール・クストリッツァ&ノー・スモーキング・オーケストラ」のメンバーとしても活躍しています。

 

映画『アンダーグラウンド』は、第二次大戦からユーゴの内戦まで、激動の50年を描いた人間ドラマです。耳をつんざく音楽、強烈なブラックユーモア、圧倒的なビジュアルセンス。生きる活力が湧いてくる人間賛歌。映画史に残る大傑作です。

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ところが、クストリッツァは『アンダーグラウンド』で名声を得たと同時に、プロパガンダ的な内容が欧米の一部から非難されてしまいます。

 

ユーゴスラビア紛争の元となったのは、

「ユーゴスラビア連邦を維持したいセルビア人 」対

「独立したいクロアチア人、クロアチア人と宗教の違うムスリム人など、各民族」

という対立構造です。

 

 

アメリカやNATO軍は、独立をめざす民族側を支援。1999年には、アルバニア人を救うという名目で、セルビア全土を空爆しています。国際社会がセルビアを“悪者あつかい”するようになったのは、アメリカのPR会社が世論を導いた、とする説もあります。

 

 

いっぽうで映画『アンダーグラウンド』には、分裂する前の祖国を懐かしむような描写があり、セルビア寄りだと非難されたのです。この作品以降、クストリッツァ作品からは政治的メッセージや強烈なブラック・ユーモアが薄れてしまいました。

 

クストリッツァには、自分の望むような映画製作がやり難くなったという、じくじたる思いがあったはずです。

 

映画『マラドーナ』には、マラドーナの伝説のゴールを通じて、サッチャーブッシュを揶揄する表現が出てきます。大国や政治家に媚びないマラドーナを通して、一方的な価値観を押し付けるアメリカやNATO側を非難しているように見えます。

 

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