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白黒映画『レディ・イヴ』往年のスクリューボールコメディを堪能!

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レディ・イヴとスクリューボール・コメディ

「影響を受けた作品は?」と聞かれると、 現在活躍する映画監督たちはびっくりするほど古い映画を挙げます。

 

 今回とりあげる『レディ・イヴ』も、そんな白黒映画のひとつ。恋愛コメディの原型ともいえる作品です。

 

映画『レディ・イヴ』概要

 『レディ・イヴ』は、1941年に制作されたアメリカ映画。詐欺師の女がお金持ちの御曹司をだまそうとするものの、結局は恋に落ちてしまう、というスクリューボール・コメディです。

レディ・イヴ
原題 The Lady Eve
製作国 アメリカ
公開年 1941年
上映時間 93分
監督 プレンストン・スタージェス
脚本 プレンストン・スタージェス
出演 バーバラ・スタンウィック、ヘンリーフォンダ

 監督は、プレストン・スタージェス。脚本家としてキャリアをスタートさせ、政治コメディ『偉大なるマッギンテイ』で監督デビュー。本作のほか、『サリヴァンの旅』『パームビーチ・ストーリー』などの恋愛コメディをヒットさせています。

「スクリューボールコメディ」って、何だっけ?

 サイレント映画の時代、コメディの主流と言えば、「スラップスティック・コメディ」でした。チャップリンやバスター・キートンに代表される、叩いたり、追いかけられたり、体を張って大げさな動きで笑わせるタイプの作品です。

 

これに対し、洗練された男女のセリフと巧みなストーリーテリングで観客を楽しませるのが「ソフィストケイティッド・コメディ」です。代表的な監督が、エルンスト・ルビッチやビリー・ワイルダーです。

 伏線を駆使し小道具なども使う、いわゆる“洗練された”タイプの作品です。

 

関連:“ウェルメイドな”風刺コメディ、ここにあり!

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 これとは別に、男女の型破りな行動が大さわぎを起こすような作品を、「スクリューボール・コメディ」と呼びます。野球やクリケットの“スクリューボール”が予想もつかない方向に曲がってゆくことから、こう名付けられました。

 ハワード・ホークス監督の『赤ちゃん教育』(1938)や、フランク・キャプラ監督の『或る夜の出来事』(1934)などが、「スクリューボール・コメディ」の代表作です。

 『レディ・イヴ』あらすじと感想

 あらすじ

 チャーリー・パイクは、エール(※)会社の御曹司。(⇦ 「エール」とはビールの一種で、苦みや泡のもととなるホップを加えてない醸造酒のこと)

 チャーリーは大金持ちの息子ですが、社交界にも女性にも興味なし。ヘビの研究家として1年間の現地調査を終え、豪華客船でアメリカへ帰る途中でした。

 

そんなパイクからお金を巻き上げようとする者たちがいました。ハリントンとその娘・ジーンという、悪名高い詐欺師の親子でした。二人はいかさまカードゲームでチャーリーをだまし、まんまと大金をせしめます。

 1年ものあいだ女性と接点のなかったチャーリーは、ジーンにめろめろ。会った次の日にプロポーズします。遊びのつもりだったジーンも、チャーリーの真面目な性格に惹かれてゆきます。

 

しかし、ジーンのことを監視している人物がいました。パイク家の執事・マグジーです。お目付け役の彼は、チャーリーに悪い虫がつかないように見張っていたのです。相思相愛になりかけたジーンとチャーリーですが、ジーンの正体がバラされ、二人は破局してしまいます。

 

「あんなヤツ、大嫌いよ!」

 

大勢の前で恥をかかされたジーンは、チャーリーを逆恨みします。詐欺師仲間と組んで、仕返しを計画するのです。ジーンは、イギリス出身のアルフレッド卿の姪っ子『レディ・イヴ』になりすまし、“別人として”チャーリーの前に現れるのですが・・・

スクリューボールコメディを堪能!

 『レディ・イヴ』が制作されたのが、1941年。サイレント映画(無声映画)が終わりを告げ、トーキー(発声映画)へ移行する過渡期にあたります。

 男女のおしゃれな会話で笑わせつつ、体を張ったドタバタ調コメディの名残もあります。堅物のチャーリーは何度もズッコケ、食器をのせたお盆に頭からぶつかったりします。演じるヘンリー・フォンダがずっと真面目な顔なので、そのギャップも面白い。

 

また、詐欺師のジーンはチャーリーの前に2度現れます。最初は“大佐の娘”として、2回目は“名家の娘”として・・・二人は形を変えて、2度恋愛しています。くっついたり離れたりをくり返す、いまの恋愛コメディの型に近いものがあります。

 生真面目なチャーリーが、ジーンから過去の恋愛遍歴を聞かされる場面は笑ったなぁ。

「16歳のときにかけおちしたの」

 

「いまならバーマンのことも話せるわ」

「ハーマン? 誰?」

「バーマンよ、(さっき話した)ハーマンの友だち」

(⇦  次から次へと過去の男の名前が出てきて、それをチャーリーがこらえながら聞いてゆく)

 

 それにしても、ジーンを演じるバーバラ・スタンウィックは、気品のある女優さんですね。ジーンは現代でいうところの“ビッチ”なのですが、不思議と嫌味がありません。本来なら悪女だけど、観ているうちにエールを送りたくなってきます。エール会社だけに。