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黒沢清 監督おすすめ映画&ドラマ7選!『CURE』『回路』『花子さん』『カリスマ』など

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黒沢清 監督おすすめ映画&ドラマ7選!『CURE』『回路』『降霊』『カリスマ』など

映画『スパイの妻』でベネチア映画祭銀獅子賞をとった、黒沢清 監督。これまで、ヨーロッパでは評価されていましたが、日本での知名度はイマイチでした。

 これから黒沢清 作品を観てみようという人のために、おすすめ作品をピックアップしました。

黒沢清と黒澤明は親戚?

自主映画から監督の道へ

黒沢清は、1955年生まれの映画監督。立教大学の自主映画サークル「パロイディアス・ユニティ」で腕をみがき、ぴあフィルムフェスティバルで入選。映画監督の道を歩みます。

黒沢清 監督と『七人の侍』の黒澤明 監督とは、全くの他人です。親戚関係もありません。「沢」の字も違いますし。 

黒沢清 監督の特徴【哲学的なホラー】

黒沢清 作品の代名詞は、「静謐なホラー」です。“びっくりどーん!!”と驚かせるのではなく、哲学的要素を混ぜながら、じわりと迫ってくる恐怖。怪奇現象そのものより、恐怖体験をきっかけにして“負の感情”をあぶり出してゆくのが得意です。

【黒沢清 監督】おすすめ映画&ドラマ7選

本ページでは、黒沢清 監督がオリジナル脚本を書いている映画・ドラマを中心に選びました。なお、2024年1月30日(火)より、BS松竹東急で黒沢清 監督の『回路』『CURE』『ドッペルゲンガー』がテレビ放送されます。

(出典:映画ナタリー on X)

>> TV映画 放映カレンダー(BS・地上波)

学校の怪談「花子さん」(テレビドラマ)

  • ジャンル:ホラー
  • 製作年:1994年
  • 出演:京野ことみ、馬淵英里何、加瀬亮、加藤晴彦

取り壊しの決まった小学校の校舎に、3人の若者(京野ことみ、加瀬亮、馬淵英里何)が不法侵入します。女の一人は、花子さんを呼び出そうとします。

「花子さん、出てきてください。そしてどうか、私の願いを聞いてください」

 

若者たちは、小学校の時にいじめて、すでに亡くなっいる女の子の霊に悩まされていました。花子さんを召喚し、霊を追い払ってもらおうというのですが・・・

 

 

『学校の怪談』は、1994年に放送された連続ドラマ

1話ごとに監督がかわっており、清水崇(『呪怨』)や中田秀夫(『リング』)といったホラー監督が演出しています。黒沢清が監督したのが、第3回の「花子さん」。わずか24分の短編ですが、これが怖い。 

 

本作はDVD化されていません。『リアリスティックホラー 学校の怪談 I』というタイトルで、VHSは発売されています。第1巻に「花子さん」と「私のジュリエット」の2作が収録。メルカリだったら、見つかるかも。

>> 学校の怪談VHS-メルカリ

探すときは、映画版『学校の怪談』と間違えないように!

『CURE』

  • ジャンル:ホラー
  • 製作年:1997年
  • 上映時間:111分
  • 出演:役所広司、萩原聖人、うじきつよし、でんでん

娼婦が殺される事件が発生し、犯人が捕まります。遺体には✕印が刻まれていました。ところが、捕まった男には犯行の記憶がなく、動機も不明。

すぐ後に、似たような事件が発生します。被害者には、同じ✕の傷跡。やはり、捕まった男は犯行の記憶がなく、心神喪失でした。ゆきづまった刑事の高部(役所広司)は、精神科医の佐久間(うじきつよし)に相談します。

 

催眠術(マインドコントロール)で、彼らに犯行をおこなわせた者がいるんじゃないか?」

佐久間は、驚きの推理をします。

調べるうち、高部は間宮(萩原聖人)という男と接触します。記憶障害を患っている間宮と関わるうち、高部の心もむしばまれてゆき・・・

(出典:cinesthetic. on X)

 

間宮を通して、人間が秘めた凶暴性があらわになってゆきます。ギャップが怖え~!! タイトルの『CURE』は、“癒す”という意味ですが・・・

どこが“cure”(癒す)だよ。ぜんぜん逆じゃねーか!!(笑) 

『降霊』(テレビドラマ)

  • ジャンル:ホラー
  • 製作年:1999年 
  • 出演:役所広司、風吹ジュン

テレビの効果音の技師(役所広司)と(風吹ジュン)は、郊外で暮らす平凡な夫婦。しかし、妻には、死んだ人間の霊を自分の体に降ろす「降霊術」の能力がありました。

 

その頃、街では少女誘拐事件が起こっていました。技師の妻は、ひょんなことから女の子を見つけます。夫婦はすぐに警察に告げず、自分たちで犯人を捕まえようとします。やがて、歯車が狂い出し・・・

 

1999年に放送された、2時間のテレビドラマ。有名になりたい妻と、彼女を尊重する夫。事件をきっかけに、お互いに抑えていた負の感情がむき出しになってゆきます。 

『カリスマ』(1999年)

  • ジャンル:人間ドラマ
  • 製作年:1999年
  • 上映時間:104分
  • 出演:役所広司、池内博之、大杉漣

人質をとった立てこもり事件が発生。刑事の蓮池(役所広司)は、犯人も人質も死なせてしまい、心に傷を負います。森をさまよっていた蓮池が見つけたのが、「カリスマ」と呼ばれる木でした。芽から毒素を放ち、周りの木々を枯らしてしまうという不思議な木。

 住人たちは「カリスマ」を伐採しようとしますが、木を守ろうとする青年(池内博之)がいました。蓮池は奇妙な木をめぐる住人たちの争いに巻きこまれてゆき・・・

 

劇中、住民が「カリスマ」の木を運ぼうとするシーンがあります。これは、ソビエト連邦の名匠・タルコフスキーの超難解映画『サクリファイス』(1986年)と、構図がそっくり。どう見ても、意識している!

(出典: DepressedBergman on X)

 タルコフスキーは『サクリファイス』のテーマについて、

「人々はどうやったら理解し合えるのか? それは譲り合いの精神でしょう。みずからを捧げ、犠牲にすることのできない人間は頼るものがないのです」

と語っています。

 

映画『カリスマ』が製作されたのは1999年ですが、テーマは現代的です。この作品を読み解くと・・・

  • 自分の幸せだけを考え、自己犠牲の精神が欠けた現代人。
  • インフルエンサーに陶酔し、彼らの悪い部分さえ肯定してしまう熱狂的ファン。

こんな人たちを皮肉っているように感じます。

『回路』 

  • ジャンル:ホラー
  • 製作年:2000年
  •  上映時間:118分
  • 出演:加藤晴彦、麻生久美子、有坂来瞳、小雪

観葉植物を販売しているくミチ(麻生久美子)の同僚・田口が自殺します。田口の部屋に壁には、黒い影が残されていました。影からは、

「タスケテ! タスケテ!」

という声だけが聞こえます。

 

いっぽう。大学生の川島(加藤晴彦)はパソコン関連のアルバイトをしていました。川島は、“幽霊に会わせてあげる”と吹聴する怪しげなサイトにアクセスします。

 やがて、ミチや川島の身近な人々が、黒い影だけ残して次々と姿を消してゆきます。

 

 死ぬことの恐怖よりも、残された人間の“孤独”をテーマとしている本作。ジャンルこそホラーですが、哲学的な問いかけは純文学の味わい。これこそ、黒沢清 節! 

『アカルイミライ』

  • ジャンル:人間ドラマ
  • 制作年:2003年
  • 上映時間:115分
  • 出演:オダギリジョー、浅野忠信、藤竜也

おしぼり工場ではたらく仁村(オダギリジョー)は、不安を抱えながら生きていました。あるとき、仁村は同僚の有田(浅野忠信)からアカクラゲを譲り受けます。

 

その後、有田はおしぼり工場の社長を殺した容疑で逮捕されてしまいます。心を許せる友を失い、路頭に迷ったままクラゲの飼育に没頭する仁村。やがて彼のもとに、有田の父親(藤竜也)があらわれ・・・

 

 未来に不安を抱える青年と、友人の父親との奇妙な人間ドラマ。時間の経過を淡々と追うドキュメンタリータッチの演出の中に、感情の揺れが見えてきます。こんなに暗い話なのに、じわじわ染み出してくる“明るさ”は何なのだろう?

『ドッペルゲンガー』(2003年)

  • ジャンル:ホラー
  • 製作年:2003年
  • 上映時間:107分
  • 出演:役所広司、永作博美、ユースケ・サンタマリア

デザイン会社に勤める由佳(永作博美)は、なくなった弟のドッペルゲンガー(=分身)と暮らしていました。

 

いっぽう。医療機器メーカーで働く早崎(役所広司)は、義手のついたロボットの開発を進めています。研究ははかどらず、ノイローゼ気味になっていた早崎の前に“もう一人の自分”が現われます。早崎のドッペルゲンガーは暴走し、由佳の弟のドッペルゲンガーを攻撃! 倒してしまいます。

 自分の分身を怖れるようになった早崎は、ドッペルゲンガーを抹殺しようと試みますが・・・

本人と分身。2つの人格を演じわける俳優の力量がスゴイ! 役所広司もユースケ・サンタマリアも上手すぎる!

まとめ

 黒沢作品は、わかりやすいエンタメではありません。哲学的な思考はヨーロッパの芸術映画に近いものがありますし、自主映画のテイストを残した“純和製ホラー”ともいえます。

 映画が伝える深いテーマを考察してみたい人には、おすすめの映画作家です。