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『カイジ ファイナルゲーム』預金封鎖とは?日本の財政より脚本が破綻している?

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人気マンガ『賭博黙示録カイジ』の実写映画・第3弾となる『カイジ ファイナルゲーム』が、地上波テレビ放送されます。

 

興行収入20億円越えの大ヒット!!  この記事では、そんな実写映画『カイジ ファイナルゲーム』のあらすじとキャストをご紹介しま・・・ざわざわ・・・

 

ちょ、待てよ!!

 なんだ、この脚本は・・・あらすじ紹介どころじゃない。いくらなんでも、 ひどすぎませんか!?

 

『カイジ ファイナルゲーム』あらすじ【ネタバレなし】

“預金封鎖”で、国民の資産と国の借金を相殺せよ・・・!?

 東京オリンピックが終わったあと、急激に景気が悪化した日本。国の借金は1,500兆円を越え、物価は上昇。お金も持つ者と持たざる者の格差は、ますます広がっていました。

 

派遣会社で働くカイジ(藤原竜也)も、貧しさに苦しむ一人でした。カイジの雇い主である派遣会社社長・黒崎(吉田鋼太郎)は、社員たちを“クズ”扱いし、給料の7割をさく取していたのです。

 国の借金は膨らむいっぽうで、政府も策を見出せずにいます。そんな中、首相首席補佐官の高倉(福士蒼汰)は、貯金や保険などの国民の個人資産と、国や地方が抱える負債が同額であることに目をつけます。

 

国民の資産(貯金・保険など) = 国の借金

 

そこで高倉は、銀行預金の引き出しに制限をかける「預金封鎖」という政策を打ち出します。貯金を下ろせないようにして国民の資産を奪い、それを国の借金の返済にあてようというのです。

 さらに高倉は、これまでの通貨【円】に代わる新しい紙幣【帝円】をつくり、一部のエリート層だけに新紙幣を渡そうと考えていました。

野心のカイジ&強運の加奈子、究極のギャンブル“最後の審判”に挑む!

 そのころ。

 

ひと晩で大金を稼ぐことができるゲーム「バベルの塔」に挑んだカイジは、見事に勝利。人生を変えることができるという、“魔法のキー”を入手します。

 

カイジは同じく“魔法のキー”を手に入れた加奈子(関水渚)とともに、不動産王の東郷(伊武雅刀)の屋敷に連れていかれます。

 東郷は、「預金封鎖」法案の成立をくい止めようとしていました。そこで、政治家たちを味方につけるべく、賄賂(わいろ)を渡そうと考えます。

 

東郷はその資金を調達するため、カイジと加奈子の2人に、【帝愛ランド】で行われているギャンブルに参加させるのでした・・・

『カイジ ファイナルゲーム』登場人物とキャスト

伊藤 カイジ・・・藤原 竜也(ふじわら たつや) 

主人公。友人の借金の保証人になったことから、肩代わりするハメに。一発逆転で大金を得るため、帝愛グループの主催するゲームに参加する。

高倉 浩介・・・福士 蒼汰(ふくし そうた) 

首相首席補佐官。影の総理ともよばれる。「預金封鎖」政策をすすめ、資産家やエリートたちを味方につけようとする。接待ゲーム<ゴールドじゃんけん>が得意。

桐野 加奈子・・・関水 渚(せきみず なぎさ)

大阪で行われた「若者救済イベント」の勝者。強運の持ち主。東郷の導きにより、カイジと行動を共にすることになる。 

黒崎 義裕(くろさき よしひろ)・・・吉田 鋼太郎(よしだ こうたろう) 

帝愛グループの最高幹部の一人。カイジが働く派遣会社の社長。わずか数年で業界のトップに立ち、“派遣王”と呼ばれる。

東郷 滋(とうごう しげる)・・・伊武 雅刀(いぶ まさとう)

“不動産王”。財を築くことばかり考えていたが、余命わずかと知ってからは変わった。若者救済イベントとして、<バベルの塔>というゲームを開催する。 

 

預金封鎖とは?戦後日本とキプロスでの実例をわかりやすく解説

 「預金封鎖」とは・・・ある日突然、政府が銀行口座を凍結し、貯金や不動産など私たちの財産を没収する行為です。

とんでもない政策に聞こえますが、

1946年には、戦後の日本で

1990年にはブラジルで

2013年にはキプロスで

など、各国で行なわれています。

 

ここでは、1946年の戦後日本、2013年のキプロスの2例をご紹介します。

戦後日本の預金封鎖とは? もうひとつの狙いは財産税?

カイジファイナルゲーム、戦後日本の預金封鎖とは?

戦時中。

 日本は戦費を調達するために国債を乱発し、財政が悪化しました。

 

政府は国の借金を返し、急激なインフレ(物価の上昇)を抑えるため、1946年に「預金封鎖」を実行します。

① まず、預金を封鎖して、銀行からお金を引き出せなくします。

② 次に、旧円から新円に切り替えます。銀行で新円に換えなければ、旧円はただの紙クズ。これによって、自宅でタンス預金している人や、封鎖前にお金を引き出した人の脱税を防ぎます。

③ さらに、新円への切り替えに期限を設定して、旧円が市場へ流れるのを止めます。お金が出回らなければ、物を高くしても売れません。

 

「預金封鎖」の目的は、

  • 財政を建て直す
  • 貨幣の流通量を制限し、インフレ(物価の急上昇)を防ぐ

ことです。 これに加え、戦後日本の預金封鎖は

  • 国民の財産がどれだけあるかを調べて、その資産に応じて財産税を課す

という、もう一つの狙いがありました。

 

政府は、預金封鎖をしているあいだに資産を確認して、お金を持ってない人から25%、

お金を持っている人からは最大90%の税金を課しました。 つまり、資産家ほど財産を没収されたことになります。

キプロスの預金封鎖とは?富裕層の財産を没収?

キプロスは地中海にある島国。所得税が低く、これに目をつけたロシアの富裕層が、こぞってキプロスの銀行にお金を預けました。

キプロスの銀行は、ギリシャの国債を使って資金を運用していました。ところが、ギリシャで経済危機が起こり、国債が暴落!キプロスの銀行は、大きな損失を出してしまいます。

 

「タスケテ~」

 キプロスはEUに金融支援を求めますが、EUは条件を出します。

 「まずは、自分たちでも損失の穴埋めしなさいよ」

 

そこでキプロス政府は銀行口座を凍結し、「預金封鎖」を行ないました。国内の1位と2位の銀行に預けている富裕層の財産を没収したのです。

  • 10万ユーロ(約1,230万円)以下・・・全額保護
  • 10万ユーロ(約1,230万円)以上・・・没収

 

国の借金を返すため、銀行に預けてある国民の資産を凍結し、お金持ちからたくさん税金を徴収する・・・これが「預金封鎖」です。つまり、富裕層にとって厳しい政策なのです。

『カイジ ファイナルゲーム』日本の財政より、脚本が破綻している?

「預金封鎖」は富裕層にこそ、厳しい政策。このことを踏まえて『カイジ ファイナルゲーム』のストーリーラインをまとめると、次のようになります。

 

破綻寸前の日本を救いたい資産家の老人(=東郷)は、
富裕層から財産を没収する政策(=「預金封鎖」)をくい止めるため、
政治家に賄賂を贈ろうとする。

その資金を調達するため、
かけ金が何十億もかかるギャンブルに、カイジや加奈子は参加することになる。 

ものすごく飲みこみづらいストーリーです。

 

貧しいカイジや加奈子が、富裕層にとって厳しい政策を止めようとする

 という構図。

 

日本を救うために賄賂を贈る

 という倫理観。

 

 

預金封鎖を事前に知ったエリート層が“勝ち逃げ”できる、という理屈もわかりません。「預金封鎖」は格差をリセットする改革。従来のシステムで成功した富裕層の優位性が失われ、貧しい人にもビジネスチャンスが拡がるはずです。

(⇦ 戦後日本の預金封鎖のあとも、旧財閥が衰退して、新たな企業が台頭した)

 

また、“派遣王”の黒崎は、政府が預金封鎖を準備していることを支持しています。

彼は、【帝愛グループ】の最高幹部。【帝愛グループ】はこれまで、「貧しくなったのは自己責任!」と主張してきた企業です。いわば、弱者を切り捨てる放任主義

 

その帝愛の黒崎が、みんなからお金を奪って国の借金を帳消しにする社会主義的な政策を後押しするのは矛盾しています。

預金封鎖はインフレを防ぐ政策なので、弱者を救うことになります。行動原理がメチャクチャなのです。

 

かなりのレベルで、脚本が破綻しています。

 『カイジ ファイナルゲーム』の脚本は、漫画の原作者・福本伸行 氏。漫画にはない、映画オリジナルのストーリーとなっています。

 

原作マンガはあんなに面白かったのに、なぜ・・・?

 

ひとつは、福本氏にとって本作が初のオリジナル脚本だということ。毎週のように山場がくる連載マンガと、三幕構成でつくる映画の脚本は根本的に違います。

(⇦ 「三幕構成」とは、①設定、②衝突、③解決を、1:2:1の比率で描くこと)

 

もうひとつは、国家や金融システムが絡んでくるスケールの大きな話なのに、プロが監修した形跡が見られないこと。

政治や金融は、かなり専門知識が必要な分野です。この分野に精通したアドバイザーをつけるなり、金融に詳しい脚本家にリライトさせるなり・・・福本氏をサポートする体制を整えるのも、本来はプロデューサーの役割だと思うのですが・・・