2月14日から大河ドラマ『青天を衝(せいてんをつけ)がスタートします。主人公は渋沢栄一。激動の幕末・明治をかけぬけ、「日本資本主義の父」と呼ばれる人物です。
名前だけは聞いたことはあるけど、何をやった人かはいまいち・・・
そこで、ドラマにさきがけ、彼の生涯についての詳細が書かれた『小説 渋沢栄一』を読んでみました。
『小説 渋沢栄一』の著者・津本陽とは?
『小説 渋沢栄一』を書いたのは、時代小説家・津本陽。膨大な資料をリサーチし、小説の中でも時おり資料を提示しながら書き進めてゆくタイプです。武術への造詣が深く、剣豪小説を得意としています。
【書評】『小説 渋沢栄一』(上)・・・カッとなりやすいけど柔軟!そんな人物像が面白い!
タイトル:『小説 渋沢栄一』(上)
著者:津本陽
出版社(レーベル):幻冬舎文庫
文庫本のページ数:399ページ
上巻のサブタイトル
- 第一部 青い淵
- 第二部 彼方に。航西一万里
- 第三部 駿河の春
- 第四部 飛翔
1840年。栄一は、藍玉(あいだま)の製造・販売をする渋沢家に生まれます。幼い頃は従兄の漢学者のもとで学び、14歳頃からは父の藍葉の仕入れを手伝うようになります。
「無能な役人がのさばっている体制を変えたい」
と思った栄一は尊王攘夷を志し、横浜の外国人居留地を焼き討ちしようとしますが失敗。
ここからが面白い!
ひょんなことから、栄一は一橋家の家来となります。滅ぼそうと思っていた幕府側の人間になるのです。
栄一は、慶喜の弟の随行員としてフランスへ渡航し、イギリス・オランダ・ベルギーなどを視察します。そこで目にしたのは、市中に敷かれた上下水道やガス管、紙幣でお金を貸す銀行、ひろく民間からお金を集める“株式会社”・・・
栄一はヨーロッパのすすんだ経済システムに驚き、英仏に対抗するためには彼らの文明を学ばねばならない、と心に誓うのです。
上巻でいうと、「第二部 彼方に。航西一万里」の部分。ここが圧倒的に面白い!
若いころは、“夷狄”(いてき)として外国人を襲おうとした栄一。そんな彼が素直に彼らの文明を認め、スポンジのように制度や仕組みを学んでゆきます。
この、カッとなりやすいけど柔軟な考えも持っている、という人物像がいい!
第四部になると大隈重信も出てきて、栄一は大蔵省に入省します。ここからはやや難しいかな。
読みやすさを5段階であらわすと・・・
難易度:★★☆☆☆
けっこう専門用語(とくに役職名)も出てくるので、けっして読みやすいとは言えません。でも、なにより本人が魅力的なので、ついページを読み進めてしまいます。
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【書評】『小説 渋沢栄一』(下)
タイトル:『小説 渋沢栄一』(下)
著者:津本陽
出版社(レーベル):幻冬舎文庫
文庫本のページ数:422ページ
下巻のサブタイトル
- 第五部 蒼穹~高ク志シテ
- 第六部 遠き道~孔子の訓(おしえ)と実業道と
- 第七部 仁と愛~又(また)日に新たなり
- 第八部 国民外交の秋(とき)~グランド・オールド・マン
読了後に、あらためて感想をまとめます。
読みやすさを5段階であらわすと・・・
難易度:
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まとめ
渋沢栄一の、<熱くなりやすいけど判断を誤らない>という性格。この柔軟性を形作ったのが、幼少の頃の先生・尾高 惇忠(おだか あつただ)です。彼の教育法がおもしろくて、暗唱させることはせず、好きなように本を読ませてどういう意味か自分で判断させる、というものでした。
栄一はとくに小説が好きで、山東京伝に滝沢馬琴、『三国志』などを読んだとか・・・やっぱり成功者は読書家なのね。