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映画『黙秘』感想!傑作サスペンスとなった理由は、回想シーンのシャッフルにあり

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映画『黙秘』感想!傑作サスペンス

ハリウッド映画は、回想シーンをほとんど使いません。大きな理由は、回想シーンを入れるとぶつ切りになってしまい、観客の感情移入が途切れてしまうからです。

 

そんな中、ほぼ回想シーンだけで構成された珍しい映画があります。サスペンス映画『黙秘』です。

映画『黙秘』の概要と上映時間

 『黙秘』は、1995年のアメリカ映画。さえない家政婦が、雇い主の老女を殺した容疑にかけられるというサスペンスです。上映時間は、2時間12分。 

黙秘
原題 Dolores Claiborne
製作国 アメリカ
製作年 1995年
上映時間 132分
監督 テイラー・ハックフォード
脚本 トニー・ギルロイ
出演 キャシー・ベイツ、ジェニファー・ジェイソン・リー

 原作は、スティーヴン・キングの小説『ドロレス・クレイボーン』。容疑者となって事情聴取を受けるドロレスが、ひたすら読者に不満をぶつけるという一人称の小説です。

 

映画『黙秘』の主演は、キャシー・ベイツ。同じS・キング原作の『ミザリー』では、狂った推理小説ファンを演じて、全世界を震え上がらせました。

映画『黙秘』のあらすじと評価

 内容

 アメリカのメイン州にある小さな島。大富豪の屋敷をおとずれた郵便配達員は、驚愕します。床には血だらけになった女主人が横たわり、家政婦のドロレス(キャシー・ベイツ)が今にもこん棒を振り下ろそうとしていました。

 女主人はその後、絶命。ドロレスは殺人容疑で逮捕されます。ドロレスには20年前にも夫殺しの容疑で逮捕され、不起訴になった過去がありました。

 

事件を聞きつけ、ドロレスの娘・セリーナ(ジェニファー・ジェイソン・リー)も島に帰ってきます。いっぽう。取り調べを受けるドロレスは、黙秘を続けますが・・・ 

評価 

ヤフー映画:★★★★☆ 4.3

Filmarks:★★★☆☆ 3.7

映画.com:★★★★☆ 3.9 

感想:傑作となった理由は、回想シーンのシャッフルにあり

『黙秘』は、映画としてはとても珍しい作りです。全体の70~80%は回想シーン。ただし、語る順番を変えることによって、謎解き要素を深めています。

 

① ⇨ ⇨ ③ ⇨ ④ ⇨ ⇨ ⑥ ⇨ ⑦

 

 時系列順にエピソードを並べた場合、に“物語上の謎”が隠されているとします。このままの順番で語ったら、⑤のエピソードが語られた時点で、観客の興味は薄れてしまいます。

 

『黙秘』では、

 

⑦ ⇨ ③ ⇨ ⑥ ⇨ ① ⇨ ④ ⇨

 

のように、回想シーンの順番をシャッフルすることによって、サスペンスを生みだしています。S・キングの原作が語る順番を計算して書かれているのも勿論ですが、脚本家トニー・ギルロイの功績も大きい。

(⇦ ギルロイは、マット・デイモン主演の『ボーン』シリーズの脚本も担当)

 

事件の真相が公になるだけではありません。母と娘のわだかまりが解けていったり、大富豪と使用人との秘話が明かされたり・・・人間ドラマとしても味わい深い。

 

何より、キャシー・ベイツの演技に引きこまれます。夫に容姿をからかわれながらも、主婦業や家政婦の仕事を淡々とこなす姿に、人生の重みを感じます。原作では饒舌に語られている部分を、たたずまいで見せる演技力! 

観たあとに、深い余韻が残ります。

  

同じように過去をシャッフルすることでサスペンスを醸造した映画に、アトム・エゴヤン監督の『スウィート ヒアアフター』という傑作があります。 

順番どおりに語ったら何てことない話なんだけど、時系列をシャッフルすることでサスペンスにしてしまう。脚本の世界には絶対マネできない天才がいるけど、アトム・エゴヤンはそういうタイプだと思います。