エル・ファニング主演の映画『パーティで女の子に話しかけるには』が、初めて地上波テレビで放送されます。独特な作風のため、かなり観る人を選ぶSF恋愛映画です。
この記事では、『パーティで女の子に話しかけるには』のあらすじと評価をご紹介します。また、ぶっ飛んだ設定が何を意味しているのか、考察してみたいと思います。
※なお、極力ネタバレは避けています。
テレビ放送はいつ?
『パーティで女の子に話しかけるには』のテレビ放送は、2020年7月14日(月)の深夜(=火曜日の午前)から。日本テレビ系列「映画天国」にて。
25:59 ~ 27:59
関東ローカルのみの放送となります。その他の地域にお住いの方は見られません。
今夜は地上波初放送#パーティで女の子に話しかけるには
— スタンリー@映画天国公式 (@eigatengoku) July 13, 2020
『#ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』ジョン・キャメロン・ミッチェル監督作
斬新なのに懐かしい刺激的だけど切ない<ボーイ・ミーツ・ガール>#エル・ファニング #アレックス・シャープ #ニコール・キッドマン pic.twitter.com/hE2HjX4jKk
『パーティで女の子に話しかけるには』概要と原作小説
『パーティで女の子に話しかけるには』は、2017年公開の風変わりなSF恋愛映画。
パーティで女の子に話しかけるには | |
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原題 | How to Talk to Girls at Parties |
製作国 | イギリス、アメリカ |
公開年 | 2017年 |
上映時間 | 102分 |
監督 | ジョン・キャメロン・ミッチェル |
原作 | ニール・ゲイマン |
出演 | エル・ファニング、アレックス・シャープ |
ファンタジー作家ニール・ゲイマンの同名の短編小説が原作です。この作品は、角川文庫から出版されている短編集『壊れやすいもの』に収められています。原作は、宇宙人の女の子と地球の男の子の不器用な恋、という印象。いわゆる、《ボーイ・ミーツ・ガール》的なお話です。
映画化にあたっては、監督と脚本家が大幅に加筆しています。パンク・ロックや宇宙人の奇妙な習慣は、映画オリジナルの要素です。。
監督は、『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』のジョン・キャメロン・ミッチェル。性転換したロック歌手の半生を描いた同作は、カルト的な人気を誇っています。
『パーティで女の子に話しかけるには』あらすじ
1977年のロンドン。
パンク好きの高校生エンは、友人とともに風変わりなパーティに潜りこみます。みんな、同じ色のパッツパツの服を着て、儀式めいたことを行なっています。
「こいつら、カルト集団?」
エンは、その集団の中の少女ザンにひと目ぼれ。大好きなパンクロックに興味をもってくれる彼女に、恋してしまいます。
しかし、ザンの正体は宇宙人。厳しいルールに縛られており、48時間後には故郷の惑星に帰らねばならなかったのです・・・
『パーティで女の子に話しかけるには』評価
厳しめ? 大手映画サイトの評価
Yahoo!映画:★★★☆☆ 3.2
映画.com:★★★☆☆ 3.3
フィルマークス:★★★☆☆ 3.4
多かった意見
・何を伝えたいのか、わからない。
・思ってたのと違った。10分で見るのをやめた。
わからない ⇨ つまらない
という感想につなげる人、多いですよね。でも、そのスタンスだと、世にある映画の半分は楽しめなくなります。映画には2つのタイプがあることをご存知でしょうか?
「ハイ・コンセプト」と「ソフト・ストーリー」
映画の脚本には、おおざっぱに分けると2種類あります。
- ハイ・コンセプト・・・ハリウッドの娯楽映画のような、起承転結のはっきりしたタイプ。内容を2行で説明できる。
- ソフト・ストーリー・・・ヨーロッパの芸術映画のような、作家性の強いタイプ。心の機微を描くなど、ひと言では説明できない作品。
『パーティで女の子に話しかけるには』は、あきらかに後者。フランス映画を抵抗なく見られるような人じゃないと、キツイでしょう。逆にお決まりのパターンより、ぶっ飛んだ作品が好きな人は、ドハマりする可能性があります。
考察:宇宙人は反面教師?
この作品に出てくる宇宙人の習慣・モットーは、カルト集団のような異様さです。これは、自分たちと異なる社会システム・しきたりの中で暮らす人たちのメタファーである、と考えられます。
宇宙人の異様な習慣:子どもを食べる親
高校生のエンが出会った不思議な集団は、宇宙人。彼らは、“コロニー”と呼ばれる6つの集団に分かれて生活しています。基調とする服の色も、6種類。白、黄色、オレンジなど。
宇宙人全体として統一されたルールと、“コロニー”ごとにまとまった思想があります。“コロニー”には「ペアレント・ティーチャー」(PT)と呼ばれる親と、その子供たちがおり、PTは“自分の子供を食べる”というしきたりがあります(!!)。
PTのひとりが、地球人のエンにこんな台詞をしゃべります。
「(地球人の親は)いろんなものを諦めて、子供を育て、学ばせる。そして、手放す」
ニール・ゲイマンが原作を発表したのは、44歳のとき。
「中高年がいつまでも社会の重要ポジションに居座ってないで、若者に活躍の場を与えなさい」
というメッセージにも見えるし、
「子どもの人生にいつまでも介入してないで、自分の人生を生きなさい」
というメッセージにも聞こえます。
宇宙人の異様なモットー:「個性の尊重」という共産主義
宇宙人の少女ザンが所属する【第4コロニー】のモットーは、「個性の尊重」。メンバー全員が同じ黄色い服を着ているのに、“個性”と言うことがすでに皮肉になっています。
コロニーの子供たちは、飲酒することも異性に触ることも、おでこをなでることも禁じられています。がんじがらめにルールで縛られているのに、「ペアレント・ティーチャー」たちは平等な社会だと思いこんでいます。
宇宙人たちのリーダー・PTファーストが
「“摂食”(=子供たちを食べる習慣)は続けよう。数を減らして品位と慈悲を忘れなければ、(中略)心を乱すことはない」
と語ると、地球人の高校生エンは
「なに言ってんだ? スウェーデンの自殺の話か?」
と、突然キレ出します。
これだけだと、会話の意味がわかりません。『パーティで女の子に話しかけるには』の舞台となるのは、1970年代。実は、スウェーデンは1960年代には先進国の中でも自殺率の高い国でした。
福祉が充実し、幸福な国だと思われがちな北欧諸国でも、命を絶つ人は少なくありません。上の会話のやり取りは、北欧の手厚い社会福祉・ゆき過ぎた公平さを批判している、と見ることもできます。
もう少し解釈を広げれば、どんな社会システムのもとに生まれたって、幸福を感じるかどうかは自分次第、と言い換えることもできます。
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※2020年7月12日時点
まとめ
わたしの考察は、まったくの的外れかもしれません。全然違う感想を持つ人もいるでしょう。ですが、広い解釈ができるのが「ソフト・ストーリー」の良いところ。テーマがわかりづらいからこそ、自由な感想を持てるのです。
みんなが同じ感想を抱くような「ハイ・コンセプト」ばかりじゃ、映画はつまらないよ。