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映画『八日目の蝉』原作との違いを解説【時系列が複雑なのに泣ける!脚本がうますぎる】

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映画『八日目の蝉』脚本を解説【時系列が複雑なのに泣ける!“回想シーン”の繋ぎがうますぎる】

ハリウッド映画では、回想シーンはほとんど使いません。現在進行形で物語を進ませながら、セリフや態度で人間関係やバックグラウンドを説明してゆきます。

過去と現在を行ったり来たりするような複雑なシナリオは、観客を感情移入させるのが難しいからです。

 

そんな中、時系列が複雑なのに思わず泣けてしまう、見事な日本映画があります。映画版『八日目の蝉』です。

映画『八日目の蝉』地上波テレビ放送(2022)はいつ?ジャンルは?上映時間は?

 『八日目の蝉』は、2011年の日本映画。

不倫相手の赤ちゃんを誘拐した女が、「母性」に目覚めてゆく姿を描く人間ドラマ、サスペンスです。

映画『八日目の蝉』
製作年 2011年
ジャンル サスペンス、人間ドラマ
上映時間 147分
監督 成島 出(なるしま いずる)『ソロモンの偽証』
原作 角田 光代(かくた みつよ)『八日目の蝉
脚本 奥寺 佐渡子(アニメ映画『時をかける少女』)
出演 井上真央、永作博美、小池栄子

 原作は、直木賞作家・角田光代さんの同名小説。

2010年には、檀れいさん主演でNHKで連続ドラマ化されています。

 

映画『八日目の蝉』のテレビ放送は、2022年8月12日(金)。テレビ東京「午後のロードショー」にて。
13:20 ~ 15:40

(※ いつもの「午後ロー」とは、放送時間が変わります)

 

>> 【2022年 放送予定】地上波テレビ映画の放映スケジュール一覧

映画『八日目の蝉』のあらすじと評価

 内容

1995年、東京地裁。

被告人の野々宮 希和子(永作博美)は、傍聴席の秋山 恵津子(森口瑤子)に感謝の言葉を述べます。

「4年間、子育てする喜びを味わわせてもらった秋山夫妻に感謝しています」

 

希和子は、恵津子の娘(=秋山 恵理菜)がまだ赤ん坊のころに誘拐し、宗教団体【エンジェルホーム】の施設で育てていたのです。

もともと恵津子の夫と希和子は、不倫関係にありました。

希和子は赤ちゃんの命を奪おうとしたものの、赤ちゃんの笑顔を見て

「この子を守る・・・私がこの子を守る」

と思い直し、衝動的に不倫相手の赤ちゃんを連れ去ってしまったのです。

 

4年の逃亡生活の末、希和子は逮捕され、恵里菜は実の両親のもとに戻されました。

 

 

2005年。恵津子の娘・恵理菜(井上真央)は、21歳の大学生となっていました。バイトが終わった恵理菜の前に、フリーライターの千草(小池栄子)が現われます。

誘拐事件のこと、宗教団体のことを取材したい、というのです。

 

恵理菜は誘拐事件から介抱されあと、実の両親との関係がギクシャクしました。さらに、恵理菜自身も子供を身ごもりますが、くしくも相手は妻子のある男でした。

ある日のこと。

ライターの千草は、過去を告白します。

「恵里菜が誘拐されたころ、自分も宗教団体【エンジェルホーム】の施設で一緒に暮らしていた」

と、いうのです。

恵里菜は過去のおもかげを求めて、宗教団体の施設跡や、希和子と過ごした小豆島(しょうどしま)に渡りますが・・・

▲クリックすると動画が読み込まれます。

評価 

ヤフー映画:★★★★☆ 3.9

Amazon:★★★★☆ 4.2

映画.com:★★★★☆ 3.7

  • 内容は濃いのですが、理解するのが難しい
  • 希和子は犯罪者なのだが、感情移入して大泣きした
  • いままで一度も原作を買ったことがなかったけど、初めて小説を買ってしまった

映画『八日目の蝉』原作との違いを解説【時系列が複雑なのに泣ける!“回想シーン”の繋ぎがうますぎる】

原作小説の『八日目の蝉』はシンプルな構成です。

  • 第1章・・・希和子が不倫相手の赤ちゃん(=恵里菜)を誘拐し、宗教施設に身を隠し、さらに小豆島(しょうどしま)に渡って住み込み生活をする。
  • 第2章・・・大学生となった恵里菜がフリーライターの千草に連れられ、希和子とともに過ごした思い出の地をめぐる

檀れいさん主演のドラマ版も、原作に近い構成となっています。

 

 

ところが、映画版は大きく構成を変えています。

誘拐犯の希和子パート(1985~1988年)と、大きくなった恵里菜パート(2005、1990、2006年)を交互に行ったり来たりします。

映画『八日目の蝉』脚本を解説【時系列が複雑なのに泣ける!“回想シーン”の繋ぎがうますぎる】

過去と現在。誘拐犯と大きくなった女児。2人の主人公のエピソードを同時進行させながら行ったり来たり・・・

観客に集中力が要求される、ややこしい構成。この複雑な構成が意味を持ってくるのが、後半です。

 

 

原作では、恵里菜が希和子の足跡をたどり、小豆島に降り立ったところで幕を閉じます。

ところが、映画版は違う。

  • 希和子と恵里菜が、島の人たちと“虫送り”という祭に参加した段々畑。
  • 希和子と恵里菜が、2人だけの“家族写真”を撮った写真館。

恵里菜は記憶をたどりながら、幼児だったころに希和子と過ごした地を訪れます。しかも、ピンポイントでその場所に立ちます。

 

希和子と幼児だった恵里菜がひとときを過ごした場所 ⇆ 大学生になった恵里菜が同じ場所に立つ

映画『八日目の蝉』脚本を解説【時系列が複雑なのに泣ける!“回想シーン”の繋ぎがうますぎる】

まるで(血のつながっていない)母と娘が、時空を越えた対話をしているかのようです。

 

なんという脚本のテクニック!

原作から大胆に構成を変えながら、これほど原作のメインテーマ「母性」を如実に表しているなんて!!

 

映画版『八日目の蝉』の脚本を書いたのは、奥寺 佐渡子(おくでら さとこ)さん。

>> 『時をかける少女』(アニメ)あらすじ!“泣ける名作”になったのは,脚本家のおかげ?

回想シーンの繋ぎ、現在と過去を往来するような時系列のジャンプ。こういったシナリオを書かせたら、日本でも屈指の脚本家です。

 

  • 『時をかける少女』(アニメ)・・・筒井康隆 原作
  • 『Nのために』(ドラマ)・・・湊かなえ原作
  • 『コーヒーが冷めないうちに』・・・川口俊和 原作

奥寺さんは、タイムリープ系のように時系列が複雑な脚本を得意としています。

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時間の限られた映画では、原作小説のすべてのエピソードを映像化できません。

脚本家には、作品の“主たるテーマ”をどう抽出するか? という難題が課せられます。

 

映画『八日目の蝉』の場合、「母性」というメインテーマを描くために、本来ならサスペンスフルで見ごたえのある「不倫」「逃亡の瞬間」はあえて簡略化しています。

 

そして、過去(=誘拐犯の逃亡)と現在(=成長した女児が足跡をたどる)を同時進行させながら、誘拐犯と不倫相手の女児の“親子愛”が時空を越えて交わるという・・・

凄すぎる! 神シナリオです!!