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Netflix『WASPネットワーク』感想!オリヴィエ・アサイヤス監督の新境地!ドキュメンタリー・タッチなのに躍動的なカメラ

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Netflix『WASPネットワーク』感想!オリヴィア・アサイヤス監督の新境地
動画サービスNetflixで、キューバ人スパイの苦悩を描いた映画『WASPネットワーク』が配信されています。

 

ひとことで表すなら、ドキュメンタリーの皮を被ったエンタメ。わかりやすい起承転結を求める人には向かないけれど、いっぷう変わった作品を観たい人にはオススメの映画です。

 

映画『WASPネットワーク』の概要

 

『WASPネットワーク』は、スペイン・フランス・ブラジル合作の社会派サスペンス。アメリカへ亡命した活動家が、マイアミで反キューバ組織に加入。打倒カストロを掲げ、スパイ活動に身を投じる姿が描かれます。

 

WASP ネットワーク
原題 Wasp Network
製作国 スペイン、フランス、ブラジル
公開年 2020年
上映時間 128分
監督 オリヴィエ・アサイヤス
出演 ペネロペ・クルス、エドガー・ラミレス

 

ブラジル人作家フェルナンド・モライスの著作『冷戦の最後の戦士たち』が原作。日本では劇場未公開。2020年6月より、動画配信サービスNetflixのみで公開されています。

www.netflix.com

 

 

Netflix『WASPネットワーク』ストーリー

 

1990年代。

 

キューバに住むパイロット、レネ・ゴンザレスには愛する妻・オルガと娘・イルマがいました。

 

ある日のこと。レネは小型飛行機に乗り、海を渡ってアメリカのマイアミに渡ります。レネはアメリカで会見を開き、貧しい生活から抜け出すために亡命したことを明かします。

 

マイアミには、反カストロ政権を掲げるテロ組織がありました。パイロットとしての腕を見こまれたレネは、組織に加入します。

 

マイアミには、この他にも反カストロの活動家たちがおり、彼らを支援する「キューバ系アメリカ人財団」のようなNPO組織も存在していました。

 

 

いっぽう。キューバに残された妻・オルガは、亡命した夫のせいで裏切者あつかいされていました。

 

ところが、ある日のこと。彼女は真実を知らされます。

「あなたのご主人は英雄です!」

 

 

感想:ドキュメンタリー・タッチなのに躍動的!オリヴィエ・アサイヤス演出

 

ハリウッドとは真逆! 観客をつき放したスパイ映画

 

『WASPネットワーク』は、分類するならスパイ映画(または社会派サスペンス)です。しかし、ハリウッド製のお決まりのスパイ映画とはまるで違います。

 

『WASPネットワーク』では、アメリカとキューバの諜報戦が淡々と語られてゆきます。あくまで会話劇が中心です。

 

爆破とか暴行とかスリリングな場面はほとんどなく、「ここ、泣くシーンだよ」とこれみよがしに音楽が流れることもありません。群像劇なので、誰か一人に感情移入することも難しくなっています。

 

中盤に大きな仕掛けがありますが、プロット(=話のすじ)が混み入っているために、サスペンスとしての爽快感も感じづらくなっています。

 

物語を理解するうえで必要なキューバの歴史も、ほとんど説明されません。

 

 

前提となるキューバの知識

カストロとキューバ危機

 

1959年にキューバに社会主義を信奉するカストロ政権ができて以降、アメリカとの関係が悪化します。キューバはソ連と親交を深め、国内にソ連のミサイル基地を建設しようとします。

 

アメリカは海上を封鎖してこれに抗議。戦争の一歩手前までゆきますが、ソ連がミサイルを撤去したため、戦争は避けられます。

 

しかし、水面下でキューバとアメリカの争いは続きます。1961年、ケネディ政権は、反カストロ分子のキューバ侵攻を支援します(ピッグス湾事件)。1962年、アメリカはキューバに対して経済制裁を発動。キューバ国民の生活は苦しくなってゆきます。

 

そして、1991年にソ連が崩壊すると、キューバは完全に経済的に孤立します。困窮した民衆は、アメリカに亡命するようになったのです。

 

 

映画の中ではそこまで描かれていませんが、アメリカは自国に反キューバのテロ組織がいることを知っていても、それを黙認している面もありました。

 

躍動的なカメラと、オリヴィエ・アサイヤス監督の新境地!

 

感情移入しにくい作り。「勉強しておけ」とばかりに、歴史の解説もなし。おそろしく不親切で、観客をつき放した作品です。それでも、不思議と見入ってしまいます。

 

『WASPネットワーク』は、会話中心にも関わらず、カット割りが異常に細かくなっています。向かい合って会話する2人を、正面 ⇨ 背中越し ⇨ 正面のように、1~2秒単位でアングルを変えています。

 

歩く人物を撮る時はカメラをパン(=横移動)させ、全身を映したと思ったら、高速ズームで手をアップにします。目を飽きさせない画面作りがなされています。

 

 

監督オリヴィエ・アサイヤス&撮影ヨリック・ル・ソーの2人は、『カルロス』(2010年)でもコンビを組んでいます。ベネズエラの実在のテロリストを描いたこの作品は、上映時間なんと5時間30分!

 

 

明確な起承転結もなく、テロリストの半生を見せるだけ。それでも、スリリングなカメラワークにより、5時間30分見せきる力があります。『カルロス』では、完全に個人にスポットを当てていました。

 

 

『WASPネットワーク』は複数の視点で描かれています。アメリカへ亡命した、反カストロ分子の男たち。残された妻。スパイを監視する者。

 

これがわかりづらさに拍車をかけています。しかし、この入り組んだ視点こそが、むしろ歴史に翻弄される個人を浮かび上がらせています。

 

ペネロ・ペクルス演じるオルガは、メインキャラクターの一人。夫が突然いなくなったと思ったら、今度は英雄の妻あつかい。自分の立ち位置に戸惑いつつ、娘を抱く彼女に、凛とした強さがあります。

 

もっとも同情すべきオルガに、安っぽい救いを与えないところに、アサイヤス演出の真骨頂があります。