アンソニー・ホプキンスが教皇、ジョナサン・プライスが枢機卿を演じた映画『2人のローマ教皇』がNetflixで配信されています。
この記事では、映画『2人のローマ教皇』の簡単なあらすじをご紹介し、映画を観た感想を述べたいと思います。
実話? 映画『2人のローマ教皇』の概要
映画『2人のローマ教皇』とは?
映画『2人のローマ教皇』は、2019年に配信開始された、人間ドラマ。
2012年、現職のローマ教皇が自らの意志で引退、代わりに南米出身の教皇が誕生します。映画は、この歴史的な教皇の交代劇の舞台裏を描いています。
作品の冒頭、“実話に着想を得て”、というただし書きがあります。
2人のローマ教皇 | |
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原題 | The Two Popes |
製作国 | アメリカ、イギリス、イタリア、アルゼンチン |
配信開始 | 2019年 |
上映時間 | 125分 |
監督 | フェルナンド・メイレレス |
脚本 | アンソニー・マクカーテン他 |
出演 | アンソニー・ホプキンス、ジョナサン・プライス |
監督は、ブラジル出身のフェルナンド・メイレレス。『シティ・オブ・ゴッド』で犯罪に手を染めるストリート・チルドレンを描き、世界の映画ファンの度肝を抜きました。
アカデミー賞3部門にノミネート!
教皇ベネディクト16世を演じたアンソニー・ホプキンスが主演男優賞、彼と対話するベルゴリオ枢機卿を演じたジョナサン・プライスが助演男優賞にノミネートされています。
また、実話をもとに脚本を執筆した アンソニー・マクカーテンが脚色賞にノミネートされています。
Netflix映画『2人のローマ教皇』あらすじと感想
簡単なあらすじ
ローマ教皇、ヨハネ・パウロ2世がなくなり、次の教皇を決めるための選挙『コンクラーベ』が行われます。
有力とみられていたのは、2人。ドイツ出身の保守派ヨーゼフ・ラッツィンガーと、アルゼンチン出身の改革派ホルヘ・ベルゴリオです。3回の投票を経て、ラッツィンガーが票を集め、新教皇ベネディクト16世となります。
しかし、ベネディクト16世は、同性愛・中絶・避妊には反対の立場。彼の新教皇就任は、ローマ教会が改革を拒否したことを意味しました。
そんな中、2012年、教皇庁の内部告発文書が流出します。資金洗浄と司祭による性的虐待があきらかになったのです。しかし、ローマ教会は問題の司祭を異動させただけ。
現教皇のやり方に失望したベルゴリオ枢機卿は、辞意を決意。ベネディクト16世に辞意を伝えるため、ローマに向かいます。
ベネディクト16世としては、意見が合わないとはいえ、ベルゴリオ枢機卿に辞められたら困ります。「反対派を粛清した」というあらぬ憶測や陰謀論を生みかねないからです。
考え方がまったく正反対の2人は、対話をつづけますが・・・
なぜ、作品賞にノミネートされなかったんだ!
映画を見終わったあとの素直な感想です。とにかく、フェルナンド・メイレレスの演出が素晴らしい! アカデミー賞の作品賞や監督賞にノミネートされなかったのが悔やまれます。
神シーン! 真逆の2人のキャラクター性を浮かび上がらせる演出
ベネディクト16世となったヨーゼフ・ラッツィンガーは、お堅い性格。教義に忠実でめったに笑いません。
対するホルヘ・ベルゴリオ枢機卿は、ABBAの「ダンシングクイーン」を歌い、サッカーを愛する人物。ユーモアセンスも抜群で、彼が演説すると、聴衆はみんな笑顔になります。
そんな2人が、ベネディクト16世の庭で対話を始めた場面。ベンチに座るベネディクト16世の横で、ベルゴリオ枢機卿は靴ひもを結びます。カメラが同一画面で2人の顔をおさめるこのシーンで、ベネディクト16世はあからさまな不快感を表します。
ベルゴリオ枢機卿の靴は、革靴でした。
革靴は、馬や牛など動物の皮から作られます。保守派のベネディクト16世は、動物愛護の立場から皮の使用には反対。スタートから2人のあいだに大きな溝があることを、映像で見せる神演出です。
ためてためて、爆笑のエンディング!
この作品、物語の大部分は相反する2人の対話に終始します。しずかな人間ドラマが淡々とすすむ感じで、笑う場面などほとんどありません。
ところが、エンディング間近となって、急にコメディ映画と化します。しかも、それまで積み上げてきた2人のキャラクター性を生かした爆笑のシークエンス。
こんな大人の演出、なかなか見られませんよ!
名ゼリフの数々! アンソニー・マクカーテンの脚本も秀逸!
アンソニー・マクカーテンは、『ボヘミアン・ラプソディ』や『ウィンストン・チャーチル/世界を救った男』も執筆した、注目の脚本家。
2人のキャラクター性を代弁したセリフは、胸を打つものばかりです。
・ベネディクト16世
「時代精神と結婚すると、次の時代には取り残される」
「私に必要なのは、心の補聴器なのかもしれない」
・ベルゴリオ枢機卿
「この世に変わらないものはない。神でさえも」
「世界の人口の20%が、資源の多くを消費しています。貧しい国々と未来の世代から、資源を奪っているのです」
ここには記載しませんが、ラスト前にベルゴリオ枢機卿が民衆に語るシーンがあります。この作品が伝えたいテーマ、『世界に広がる“無関心”への危機感』を表した素晴らしいメッセージです。