映画ときどき海外ドラマ

ドラマや映画の感想・ネタバレなど、エンタメ全般を楽しむサイト。たま~に雑学も。

『同期のサクラ』キング牧師、オズの魔法使いとの関連を考察!「私には夢があります」感動のメカニズム

聴衆

acworksさんによる写真ACからの写真

高畑充希さん主演のドラマ、『同期のサクラ』。建設会社に勤める5人の同期の10年間を描き、感動を呼んでいます。初回8.1%だった視聴率もじわじわ上がり、第5話は11.8%。連続ドラマではめずらしい傾向です。

 

その要因は、“感動のメカニズム”にあると思います。

 

このドラマは、キング牧師の名演説や童話「オズの魔法使い」の物語構造を、エッセンスとしてうまく盛り込んでいると感じました。

 

この記事では、キング牧師・オズの魔法使いとの類似点を考察、さらに『同期のサクラ』オリジナルの要素にも迫ります。

 

 

 

名セリフ「わたしには夢があります」は、キング牧師の演説から?

 

 

 クライマックスで使われる、サクラの名セリフ

 

第1話。花村建設 入社後の研修で、建築模型を作ることになった、新入社員たち。

 

主人公・北野 サクラ(高畑充希)は、木島 葵(新田 真剣佑)、月村 百合(橋本愛)、清水 菊夫(流星 涼)、土井 蓮太郎(岡山 天音)とチームを作ります。サクラたち5人が作った橋の模型は、ねらっていた社長賞を取ることはできませんでした。

 

会社から出る際、肩を落とす4人に、サクラは言います。

 

「わたしには夢があります。故郷の島に、橋をかけることです。

わたしには夢があります。一生信じあえる仲間を作ることです。

わたしには夢があります。その仲間と、たくさんの人を幸せにする建物を造ることです。

それだけは諦められないので、わたしは自分にしかできないことをやります」

 

 

第2話以降も、「わたしには夢があります~」というサクラの名台詞は、クライマックスで使われています。

 

 

 

 これとよく似たフレーズが出てくる演説があります。アメリカの公民権運動の指導者、マーティン・ルーサー・キング牧師が、1963年にワシントンで行なった演説です。

 

 公民権運動とは、1950年代から1960年代にかけて、アメリカの黒人たちが憲法で認められた権利の保障や人種差別の解消を求めた運動です。

 

 

キング牧師は、奴隷解放宣言100年を記念する集会で、17分にもおよぶ演説を行ないました。それが、通称「I have a dream」(=私には夢がある)演説です。

 

 

演説の冒頭。キング牧師は、奴隷解放宣言から100年経ったのに、いまだに黒人に対する差別は残っていると指摘します。いまこそ黒人に公民権を与えるべきだと主張するいっぽう、白人もじぶんたちの兄弟であると訴えます。

 

 

演説の後半に、“私には夢がある”のフレーズが!

 

 演説の後半には、あのフレーズが出てきます。一部をご紹介します。

 

「・・・きっとこの状況は変えることができる。絶望の谷でもがくのはやめよう(中略)われわれは、これからも困難に直面するだろうが、わたしには夢がある。アメリカンドリームに深く根ざした夢が。

 

わたしには夢がある。いつかこの国が立ち上がり、“すべての人間が平等であることは、当然の真実である”、という我が国の信条を、本当の意味で実現するという夢が。

 

わたしには夢がある。いつかジョージア州の赤土の丘で、かつての奴隷の子孫とかつての奴隷所有者の子孫が、兄弟として同じテーブルにつくという夢が。

 

わたしには夢がある。いつか、不正義と抑圧の炎でうだるような熱さのミシシッピー州でさえ、自由と正義のオアシスに変わるという夢が。

 

わたしには夢がある。わたしの幼い4人の子供たちが、肌の色ではなく中身で評価される国に住むようになる夢が。

 

わたしには夢がある。邪悪な人種差別主義者のいるアラバマ州で、(中略)黒人と白人の子どもたちが兄弟や姉妹として、手を取り合う日が来るという夢が。

 

いま、私には夢がある。(⇦ ここで、聴衆の盛大な拍手)

 

わたしには夢がある。いつか(中略)、でこぼこした所は平らになり、曲がった道はまっすぐとなり、神の栄光は啓示され、生きとし生けるものがその栄光を見る、という夢が」

 

 

 

キング牧師の演説には、他にもくり返し使われるフレーズがあります。

・「今こそ~する時です!」4回

・「私たちは決して満足しない~する限りは」6回

・「帰ろう、〇〇(地名)へ!」5回

 

印象的なフレーズで声を強め、食い気味で次のフレーズを発します。聴衆は心をわしづかみにされ、どんどん歓声を強めてゆきます。このスピーチには、人々を感動させる言葉演説のテクニックが詰まっています。

 

『同期のサクラ』の脚本家・遊川和彦さんは、このスピーチから着想を得て、サクラのセリフを考えたと思われます。

 

 

スポンサーリンク

 

 

 

『同期のサクラ』物語の骨格は、「オズの魔法使い」のアレンジ?

 

 ※この項目は、『同期のサクラ』第2話~第5話のネタバレを含んでいます。ドラマ本編をご覧になってから、お読みください。

 

 

童話「オズの魔法使い」の物語の構造

 

 

オズの魔法使い

シグ子さんによるイラストACからのイラスト

 

 

『同期のサクラ』を見て、童話「オズの魔法使い」を思い出しました。物語の構造が、とてもよく似ているからです。

 

 「オズの魔法使い」は、カンザス州の農場で暮らす少女ドロシーが竜巻にまきこまれ、不思議な「オズの国」に飛ばされてしまうというお話。ドロシーはカンザスに帰してもらうため、大魔法使い“オズ”に会いにゆきます。

 

ドロシーは旅の途中で、3人の仲間と出会います。

・脳みそがないカカシ

・ハートを持たないブリキ

・臆病なライオン

カカシは知恵をもらうため、ブリキは心が欲しくて、ライオンは勇気が欲しくて、大魔法使い“オズ”に会いにゆきます。

 

ドロシーたちは様々なピンチに見舞われますが、カカシの知恵、ブリキの優しさ、ライオンの勇気で、困難を乗り越えてゆきます。

 

実は、3人はすでに求めるものを持っていたのです。ちゃんと才能を持っていたのに、気づいていなかったのです。

 

 

『同期のサクラ』第2話から第5話の物語構造

 

 

ドラマ 『同期のサクラ』の第2話から第5話は、同期の4人それぞれにスポットを当てたエピソードでした。各話で得られる教訓を、抜き出してみます。

 

第2話。

 

営業部の菊夫は部長に命じられ、下請け業者に「工期を1か月早めてください」と無茶なお願いをします。菊夫は現場に何度も出かけ、作業員を励まします。上司と下請けの板ばさみとなった菊夫は、悩みます。

 

他人を応援してばかりの菊夫に、サクラは

「いま菊夫くんが応援すべきなのは、あなた自身では?」

と、アドバイス。

 

菊夫は、下請け会社に無理強いする部長に、初めて意見します。 ⇨ 第2話の教訓:「応援する」という才能を、いまは自分のために使え!

 

 

 

第3話。

 

広報部の百合は、接待でセクハラを受けます。はっきりした目標もなく、たまたま一流企業に受かった百合。我慢して笑顔をふりまく日々に嫌気がさした彼女は、結婚して会社をやめる決意をします。

 

そんな百合に、サクラは

「女だから仕事を任せてもらえないのは、あなたが努力してないからだ。あなたが、女性が働きやすい職場に変えればいいじゃないですか!」

と、意見します。

 

百合は退職を取り消し、花村建設でやりたいことを見つけようとします。 ⇨ 第3話の教訓:あなたは才能にあふれてるんだから、芽が出るように種をまけ!

 

 

 

第4話。

 

一級建築士をめざす、設計部の蓮太郎。部署の仲間とうまく人間関係を築けず、イジメられていました。サクラは、そんな蓮太郎の設計の才能に気づいていました。

 

会社をサボって家にひきこもる蓮太郎に、サクラは

「あなたには才能があります。今は辛くても、諦めないでください」

と、声をかけます。

 

蓮太郎は同僚に頭を下げます。他人を見下し、心に壁を作っていたことを素直に謝ったのです。 ⇨ 第4話の教訓:才能を発揮できないのを、環境のせいにするな!

 

 

第5話。

 

「社長をめざす!」と、公言する都市開発部の葵。お世辞がうまい葵は上司や社長に取り入り、大きなプロジェクトを任されます。

 

しかし、葵の父親は、国土交通省の高級官僚。実際は、父親のコネを期待されての抜擢でした。

 

「口先ばかりで、オレには何の価値もない」という葵。

 

サクラは、

「あなたの言葉には、人を動かす才能がある」

と、励まします。

 

葵は、民間企業を見下す父親に抗議。「オレは、人に頼られる人間になりたい」と決意します。 ⇨ 第5話の教訓:嘘っぽい言葉だってお世辞だって、人を動かす才能だ!

  

 

「オズの魔法使い」に通じる物語の型

 

 

『同期のサクラ』の第2話から第5話を改めて見ると、共通点が浮かび上がってきます。菊夫、百合、蓮太郎、葵。4人は、それぞれ才能を持っています。しかし、その才能に気づいていないか、環境のために才能を発揮できていません

 

物事の本質が見えているサクラが、そのことを指摘します。

 

 

こうして比較すると、“才能に気づく”という物語のパターンは「オズの魔法使い」とよく似ています。

 

作家のライマン・フランク・ボームが「オズの魔法使い」を出版したのが、1900年。それ以来120年もの間、世界中の読者に親しまれてきました。『同期のサクラ』はそんな名作と似た物語構造なので、私たちを感動させるのでしょう。

 

 

 

『同期のサクラ』オリジナル要素:成長速度の違い、質の違い

 

 

 

 

類似点ばかりではありません。このドラマならではの、注目すべきポイントもあります。興味深いのが、“成長の速度の違い”です。

 

 菊夫、百合、蓮太郎、葵の4人は、1話のなかで劇的に成長します。レベルが5個ぐらい、一気に上がったかのような変貌ぶりです。

 

これに対して、サクラの成長は一歩一歩という感じ。

・「くん」「さん」づけしていた同期を、呼び捨てにする。

・反論する前の「すーっ」と息を吸うクセが減り、口パクになる。

(⇦ 嘘はつきたくないので、しゃべるのを我慢する)

 

 

特筆すべきはサクラの場合、成長の質も違うということ。本音を言いたいのに我慢するところなどは、他の4人とは成長の方向が逆です。

 

サクラには、思ったことをズバズバ言う、嘘をつけないという才能があります。

 

サクラが「ふるさとに橋をかける」という夢を実現するには、土木部に配属されるのが近道。そのためには、空気を読んで社内の暗黙のルールに従う必要があります。

 

面白いことに、サクラは才能を発揮しないほうが、目的達成に近づくことになります。