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朝ドラ『スカーレット』主題歌「フレア」歌詞の意味を考察

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窯元

bluemamaさんによる写真ACからの写真

戸田恵梨香さん主演の朝ドラ『スカーレット』が始まりました。創作活動、子育てにエネルギーを注いだ女性陶芸家のお話です。主題歌は、音楽ユニットSuperfly(スーパーフライ)の歌う「フレア」。

 

この記事では、『スカーレット』の主題歌「フレア」の歌詞と発売日、配信日をご紹介。後半では、陶芸や信楽の歴史をひもときながら、歌詞の意味について考察してみたいと思います。 

 

ドラマタイトル『スカーレット』の意味は?

 ドラマのタイトル『スカーレット』とは、「緋色(ひいろ)」を意味します。やや黄色味がかったのことです。

 陶芸の世界では、緋色は理想の色のひとつです。それだけ、到達するのが難しい色でもあります。 

主題歌のタイトル「フレア」には2つの意味が!

 英語で【 flare 】の意味は、「揺らめく炎」「めらめら燃える炎」。陶芸家が向き合う、窯(かま)の中の炎を表します。

 また、【 flair 】は、「創造力」「(生まれつきの)才能」を意味します。 

Superfly「フレア」の歌詞

 ドラマの冒頭で使われている部分の歌詞を、引用します。

 

涙が降れば きっと消えてしまう

揺らぐ残り火 どうかここにいて

 

私を創る 出会いやサヨナラも

 

 

 日々 恋をして 胸を焦がしたい

いたずらな空にも 悔やんでいられない

 

ほら 笑うのよ 赤い太陽のように

 いつの日も 雨に負けるもんか

今日の日も 涙に負けるもんか

 

 

やさしい風に吹かれて 炎はふたたび舞い上がる

 

 作詞・作曲を担当したのは、Superflyのボーカルの越智 史帆(おち しほ)さん。カントリー風のシンプルなメロディラインの曲です。 

「フレア」の発売日と配信日は?

『スカーレット』の主題歌「フレア」の発売日は、2020年1月15日(水)。Superflyのニューアルバム『0』に収録されます。

 

発売に先がけ、11月1日より、MVがデジタル配信されています。

配信サイト:https://superfly.lnk.to/flare

 

越智さんのパワフルで優しい歌声を、フルバージョンで聴けます。

ドラマとの関連は? 「フレア」の歌詞の意味を考察

 『スカーレット』の物語は、信楽で活躍する陶芸家・神山 清子(こうやま きよこ)さんの半生を参考にしています。

 

 シンプルに見える「フレア」の歌詞ですが、陶芸の世界・信楽焼の歴史について調べると、深い意味が見えてきます。

「揺らぐ残り火 どうかここにいて」

「残り火」とは、一般的には「燃え切らないで残っている火」「消したつもりで、消えずに残った火」という意味です。

 また、「恋愛の残り火」「青春の残り火」のように、比喩的に使う場合もあります。この場合は、【 叶わなかった願望に対する未練/いちどは情熱を注いだものの、今は燃えカスとなったもの 】という意味合いです。

 

 一般的には、ネガティブな意味で使われることの多い「残り火」。陶芸の世界では、少しニュアンスが違います。

 焼き物をやくときの温度は、約1200~1300℃もの高温となります。火は空気を遮断して消すのが一般的ですが、とうぜんすぐには消えません。

(⇦ 酸素がなくなると、自然に火は消える)

 消化には、数日かかることもあります。このため、この「残り火」が陶器に独特の風合いをつけたり、土の耐久性を強化してくれることもあります。

「日々 恋をして 胸を焦がしたい」

 ヒロイン・喜美子の恋愛対象となりそうな人物が、3人います。

 1人目は、同級生の大野 信作(林 遣都)。喜美子は一家で滋賀県・信楽に移り住んできますが、信作とはそのときに知り合います。 

 

 2人目は、喜美子が大阪で知り合う、医学生の酒田 圭介(溝畑 順平)。

 そして3人目が、十代田 八郎(とよだ はちろう=松下 洸平)。陶芸の会社【丸熊 陶業】ではたらく若い陶工です。

 

 歌詞の「日々」は、陶芸の大敵である「ひび割れ」とかけているのでしょう。陶芸では、器の厚みが均質でないと収縮する部分の違いにより、ひび割れの原因となってしまいます。

また、「ひび」という言葉は、喜美子の失恋を暗示しているのかもしれません。 

「ほら笑うのよ 赤い太陽のように」

 「赤い太陽」といえば、「夕陽」のこと。一般的には、夕陽の空を表すときは「茜色(あかねいろ)」という言い方をします。この茜色は、『スカーレット(緋色)』にきわめて近い色です。

 厳密にいうと、緋色は「鮮やかな赤」、茜色は「くらい赤」と区別することもありますが、ほぼ同色です。

 

第12話で、こんなエピソードがありました。就職のため信楽をはなれることになった喜美子は、父・常治に教えられて、小高い丘の上から夕陽をみます。このときみた美しい夕陽の『赤色』こそ、のちに喜美子が陶器づくりで目指す色となるのではないでしょうか。

 「いつの日も雨に負けるもんか 今日の日も涙に負けるもんか」

 シンプルなフレーズですが、雨や涙は、湿気の比喩ではないかと思います。

 絵画や掛け軸など、紙製の古美術品は湿気に弱くなっています。同じように陶器にも吸水性があるので、保存には湿度も考慮する必要があります。

 

 もちろん、保存だけではありません。窯焚き(かまたき)は毎日行なうものではなくて、数か月ごとのサイクルで行ないます。久しぶりに窯を使うときには、窯にこもった湿気を抜いてやる必要があるのです。

「やさしい風に吹かれて 炎はふたたび舞い上がる」

 ここでは、『やさしい風』という言葉に注目してみます。信楽や焼き物について調べると、2つの事柄との関連性がみえてきます。

1.風の弱い、信楽盆地の特徴?

 信楽は、盆地です。周りを山に囲まれ、平らな土地が広がっているので、風はおだやかです。“やさしい風”が吹く土地柄といえます。

 その代わり、盆地は周りに海がないため、寒暖の差が大きくなりがちです。

(⇦ 比熱の高い海が近くにあると、寒暖の差をやわらげてくれる)

2.“風変わり”を意味する職人ことば、『へちもん』

信楽の職人ことばに、『へちもん』というものがあります。これは、「変わりなもの」という意味です。

 信楽焼は、画一化された大量生産品とは異なります。焼き物ひとつひとつが個性をもっています。均質でないものを大切にする、職人のまごころを表した言葉です。

 

「やさしい風に吹かれて」のは、この『へちもん』を暗示しているのかもしれません。

「涙が降れば」「涙に負けるもんか」

 歌詞の冒頭と、サビ。『涙』という単語が2回でてきます。なにか、特別な意味があるのでしょうか?

 

 陶芸で使う設備のことを『窯』(かま)といいます。焼き物をやくため、土や石でまわりを囲んだ建物のことですね。窯は、おおざっぱに分けると、

 

穴窯(古墳~鎌倉) ⇨ 大窯(室町~安土桃山) ⇨ 登窯(江戸時代~)

 

 のように分類されます。

 

このうち穴窯(あながま)は、地中に穴を掘って窯をつくる全地下式と、山などの傾斜を利用して窯をつくる半地下式に分かれます。

 喜美子のキャラづくりに影響を与えたであろう神山 清子さんは、この半地下式の穴窯で焼き物をつくっていました。『古信楽』(こしがらき)という古い時代に作られた陶器の美しさに魅せられ、それを再現しようと試みたからです。

 

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これは、半地下式の穴窯を、横から見た図。煙が上にのぼる性質を利用して、山などの斜面に窯をつくります。

 

この半地下式の穴窯を、真上からみると次のようになります。

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 真上からみると、窯全体が、「涙のかたち」をしていることがわかります。