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映画『超高速!参勤交代』感想・福島いわきの復興を願う

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時代劇コメディ映画、『超高速!参勤交代』のあらすじと感想、ちょっとした考察です。

 

また、原作とオリジナル脚本の関係についても記載しました。世間では、原作小説があるという認識がありますが、それは誤解なんです。

 

 

『超高速!参勤交代』のあらすじ(ネタバレなし)

 

 

 また参勤交代?幕府の地方イジメ

 

 

ときは江戸時代。8代将軍・吉宗のおさめる享保20年のこと。

 

陸奥の国の小さな藩・湯長谷藩の藩主・内藤 政醇(ないとう まさあつ)たちは、参勤交代を終えて、江戸から帰ってきたばかり。

 

ところが、「5日以内にふたたび参勤せよ」という命令がくだります。これは、悪徳老中・松平 信祝(まつだいら のぶとき)の策略によるものでした。

 

 

理不尽な命令でしたが、政醇は、参勤することを決意します。とはいえ、湯長谷藩は4年前の飢饉のため、藩の財政はひっぱくしていました。大人数を連れて、江戸までゆくお金がないのです。

 

 

行列の人数をごまかせ! 型破りなアイディア

 

 

そこで政醇は、家臣でいちばんの知恵袋、相馬 兼嗣(そうま かねつぐ)に意見を求めます。

 

江戸までの道のりには、各所に宿場町があります。幕府の役人は、この宿場町で監視の目を光らせています。各藩がちゃんと参勤交代しているか、チェックしているのです。

 

相馬のアイディアは、こうです。宿場町の近くにきたら、下級武士をやとって人数を水増しすれば、行列に見えます。この方法なら、藩から出す人数は最小限で済みます。

 

一行は、抜け忍(=組織をぬけた忍者)の雲隠段蔵(くもがくれ だんぞう)に道案内を頼み、大急ぎで江戸をめざすのですが・・・

 

 

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『超高速!参勤交代』の感想(ネタバレあり)

 

 

 しめっぽさからの脱却!コメディに振り切った!

 

 2000年代以降の時代劇のヒット作をみると、ある共通点があります。『たそがれ清兵衛』(2003年)、壬生義士伝(2004年)、『武士の一分』(2006年)など、ひたむきに生きる人間たちにスポットをあてた人情ものが多いこと。

 

これらは、時代劇ファンを満足させたかもしれませんが、それ以外のファン層を開拓するには至りませんでした。

 

 

『超高速!参勤交代』は、時代劇ではめずらしいコメディ。それも、最初っからこの路線にふり切っています。西村雅彦さん演じる相馬 兼嗣の出すアイディアは、どれも「そんな方法、うまくゆくの?」というものばかり。

 

案の定、失敗ばかりで笑わせてくれます。本作のヒットで、コメディ寄りの時代劇が作られるようになりました。テレビドラマでも映画でも、時代劇の数が激減していただけに、ジャンルの危機を救ってくれた作品といえるでしょう。

 

 

福島いわきの復興を願う

 

しかし、作品が訴えるテーマは、切実です。主人公・内藤 政醇(ないとう まさあつ)の属する藩は、湯長谷藩(ゆながやはん)。

 

これは、現在の福島県いわき市にあたります。いわき市といえば、東日本大震災の影響を、ダイレクトに受けた場所。事故のあとは、風評被害に悩まされています。

 

映画の終盤。将軍吉宗が、湯長谷藩から献上された大根をおいしそうに食べるシーンがあります。これは、風評被害に苦しむ福島県の農家へのエールでしょう。

 

 

ココが不満だよ!参勤交代!

 

映画はとても楽しかったのですが、残念な部分もあります。

 

深田恭子の誘いを断るなんて!

 

牛久宿についた政醇(まさあつ)は、飯盛女のお咲(演:深田恭子)を部屋に呼びます。飯盛女とは、宿場町で仲居と同じような仕事をする人のこと。なかには、娼婦のような役割をする女性もいました。

 

映画では、お咲はサービスのために呼ばれたと思い、着物の帯をとこうとします。しかし、政醇(まさあつ)は「それが目的ではない」と服を脱ぐのを止めてしまうのです。

 

も、もったいねえ、男だろぉ!

 

 

家臣は武芸百般の猛者ばかり・・・ってなぜ?

 

家老の相馬 兼嗣をはじめ、荒木 源八郎(寺脇康文)、秋山平吾(上地雄輔)、今村清右衛門(六角精児)、鈴木吉之丞(知念侑李)という個性豊かな湯長谷藩の家臣たち。

 

彼らは、ひとりひとりが一騎当千。つまり、それぞれが並外れた武芸の持ち主で、強いという設定です。

 

ただ、彼らがどうしてそこまで強いのか、作中では明確な説明はないんですよね。そのため、どうしても「なぜ?」という思いが消えません。強さの源に、地方ならではの理由があれば、納得度はだいぶ違います。

 

 

 

『超高速!参勤交代』の小説は、原作ではない!

 

 

 大きなかん違い! 映画のほうが小説より先!

 

講談社より、『超高速!参勤交代』の小説版が発売されています。小説を読んだ人の感想をみると、「映画は原作に忠実」「映画化しただけあって、読みやすい」という意見があります。

 

しかし、この小説は、映画の原作ではありません。みなさん、かん違いされています。

 

小説が発売されたのが、2015年。映画の企画がスタートしたのは、2011年の暮れごろ。映画がヒットした後に、小説が書き下ろされたのです。順番が逆なんです!

 

もともとは、原作者の土橋 章宏(どばし あきひろ)さんが、城戸賞という映画の脚本コンクールに応募したのが、きっかけ。この脚本が入選を獲り、映画化の企画がスタートしたのです。

 

 

コンクールのオリジナル脚本 ⇨ 映画脚本 ⇨ 小説

 

執筆者はすべて土橋さんですが、順番はこのようになります。

 

 

小説より面白い? 『超高速!参勤交代』のオリジナル脚本

 

 

土橋 章宏さんが城戸賞に応募したときのオリジナル脚本は、のちの映画版と大きく異なる部分があります。

 

それが、忍者の雲隠段蔵(くもがくれ だんぞう)のキャラクターです。土橋さんはこのキャラクターへの思い入れが強かったらしく、オリジナル版には段蔵の悲しい過去に、かなりのページが割かれています。

 

また、オリジナル脚本の最大の見どころは、段蔵の忍術であらわれる土グモの存在です。忍法で呼んだ巨大グモが、城内で大暴れするのです。

 

残念ながら、映画ではまるまるカットされています。予算の関係か? CG技術の問題か? 削除の理由はわかりませんが、ぜひ映像で観たかったなぁ。

 

 

あとは、ある重要キャラクターの生死も変わっています。わたしは、映画版よりも小説よりも、断然このオリジナル脚本版が好きですね。

 

このオリジナル脚本は、2012年の『キネマ旬報』1月下旬号で読めます。図書館でなら、比較的みつかりやすいと思いますよ。

 

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 シナリオ形式に慣れていないと、読みづらいかもしれません。

 

ただ、映画化にあたって、メジャーな娯楽作にするため、どんな調整が行われているかわかります。また、お金のかかりそうな描写をカットしていることから、日本映画の限界点も見えてきます。