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本当はどんな話?なつぞら『白蛇伝説』元ネタは鹿追町と中国の民間伝承?

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NHK朝ドラの『なつぞら』には、『白蛇伝説』という物語が登場します。蛇が若い女性に姿を変えるというモチーフは、ドラマの中で繰り返し使われることになります。

 

なつの高校時代の演劇の演目として。

なつが制作することになる、アニメーション作品として。

 

 

この物語の元ネタと思われるものが、2つあります。

① 北海道・十勝にある鹿追町(しかおいちょう)に伝わる『白蛇姫物語』。

② 中国に古来から伝わる、民間伝説『白蛇伝』。

 

この記事では、それぞれの簡単なあらすじについて、ご紹介します。

 

 

 

倉田先生の書いた演劇、『白蛇伝説』のあらすじ

 

()内は、ドラマでの役名です。

 

 

みずから犠牲となる、ペチカ

 

むかしむかし、ある村のお話。たくましい青年ポポロ(演:雪次郎)は、山道で子どもたちが白い蛇をいじめているのを見かけます。

 

ポポロが白い蛇を助けてあげると、近くの川からめずらしい魚が次々と飛び跳ねてきます。食べてみると、格別の美味しさでした。

 

 

 

それから、しばらく経ってからのこと。村では、原因不明の眠り病がはやるようになります。村長(演:門倉)は、サケの皮を煎じて飲むようにと、知恵をさずけます。

 

ところが、サケは川下にある村でしか獲れません。

 

タイミングの悪いことに、ポポロの住む村と、川下の村は敵対関係にありました。村長が話し合いにゆくと、川下の村のリーダーは、村長の娘・ペチカ(演:なつ)を差し出すように要求してきます。

 

ペチカのことが好きだったポポロは、断固反対します。

しかしペチカは

「争えば、多くの血が流れます。自分のことだけ考えるわけにはいきません」

と、運命に従うことに決めます。

 

 

白蛇の化身、あらわる

 

 

絶望するポポロの前に、ペチカそっくりの女性が現われます。それは、以前に助けた白蛇(演:なつ)が変身した姿でした。

 

「望みをかなえてあげます」という白蛇。

 

ポポロは

「ペチカをお嫁にゆかせたくない!」

と、頼みます。

 

 

すると、ペチカは眠り病にかかって目を覚まさなくなります。サケの皮を手に入れることもできなくなり、村人たちも眠ってしまいます。

 

自分のことだけを考えていたと気づいたポポロは、反省します。そのとき、再び白蛇が現れます。

 

白蛇は

「わたしの皮を煎じて飲めば、病気は治ります。川下の村の人たちにも分け与えて、仲良くしてください」

と、その身を差し出すのでした。

 

 

 

 

 

【元ネタ①】鹿追町に伝わる『白蛇姫物語』のあらすじ

 

北海道・十勝地方の鹿追町(しかおいちょう)に伝わる民話です。

 

 原因不明の不作が、村をおそう

 

 北海道・十勝地方の鹿追町。

 

アイヌの人々が平らな地形を利用して、鹿を追いこんで、捕まえていたころのお話です。

 

この地には緑ゆたかな林があり、鹿だけでなく、熊やウサギなどたくさんの動物がかけ回っていました。平らな土地に畑を作り、獲物もたくさんとれたので、人々はおだやかに暮らしていたのです。

 

 

ところが、ある年のこと。異常気象が起こります。春になっても寒さがおさまりません。大地は実らず、夏になると大雨が降り続きます。

 

動物たちは、草木の豊かな土地に移動してしまったようです。アイヌの人々は動物の毛皮を手に入れられず、寒さのため外出もできなくなります。

 

 女神の使い、白蛇

 

 

困った人々は、神さまにお祈りすることにします。神さまを祀る祭壇をつくり、わずかとなった食べものをお供えし、お祈りを続けたのです。

 

疲れはてた人々は、みな眠ってしまいます。すると、人々の夢の中に、女神があらわれます。

 

食べ物がないのに他の人々と争いもせず、祈りをささげるあなた達は立派です。わたしの使いを送りましょう。

あなた達の目の前に、白蛇が現われるはずです。この蛇を追いかけなさい」

 

 

女神はそう言い残すと、消えます。

 

アイヌの人々は同時に目を覚まします。驚くべきことに、みんなが同じ夢を見ていたのです。すると、お告げの通り、草むらに白い蛇がいるのが見えます。

 

白蛇がどこへ向かうか、わかりません。険しい道をゆくかもしれません。そこで村長は、村の代表として健康な若者を選んで代表者とします。

 

 

 

 

白蛇は、高い山をのぼってゆきます。若者たちははげまし合いながら、白蛇を追ってゆきます。

 

山頂にたどりつくと、そこには※が広がっていました。すると、白蛇は湖へ向かってゆきます。

 

※現在の然別湖(しかりべつこ)

 

 

格別においしい魚、オシュロコマ

 

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湖のほとりには、ザリガニがたくさんいました。ところが、若者たちは白蛇の姿を見失ってしまいます。

 

「女神さまのお告げの場所は、ここに違いない。この湖で魚を獲ってみよう!」

 

若者たちは小枝と鹿の肉で、釣り竿をつくります。彼らが釣り糸を水面にたらすと・・・

 

次々と魚がえさに食いつきます。みんなは夢中になって、魚やザリガニを捕まえます。夜もふけたので、たき火をしながら釣ったばかりの魚を焼きます。

 

 

その魚は、これまで食べたことがない程おいしく、すぐにお腹も満たされました。

 

 

すると、若者たちの前に、女神があらわれます。女神は大きな白蛇を連れ立って、空中に浮かんでいます。

 

「この魚はオシュロコマという、この湖にだけ生息する魚です。この先、凶作になったときだけ捕まえるのを許します。

決して、むやみやたらに捕ってはいけませんよ

 

 

 若者たちはその場にひざまずき、女神の言葉に聞き入っていました。彼らが空を見上げると、女神も白蛇も、姿を消していました。

 

翌朝。若者たちはオシュロコマとザリガニをたくさん持って、集落に戻ります。村は、厳しい食糧不足から救われたのです。

 

 

神の教えにそむいてしまった、和人

 

それから、何百年も後のこと。※和人がこの地を訪れるようになります。

 

 ※和人とは、アイヌ以外の日本人のこと。

 

 

 

和人たちは凶作でもないのに、然別湖のオシュロコマを乱獲してしまします。オシュロコマは急激にその数を減らし、ザリガニもいつの間にか姿を消してしまいました。

 

 

<ドラマとの違い> 

 

なつたちの『白蛇伝説』のお芝居は、牛のような格好をしたよっちゃんが「牛じゃねえ。どうみても白蛇だ」と笑いをとって、終わりでした。

 

おかしいけれど、やや中途半端に感じた人もいるのではないでしょうか?

 

 

その理由は、モデルとなった鹿追町の『白蛇姫物語』から、もっとも重要な部分、つまりラストを削ったことにあります。

 

 

 

鹿追町に伝わる『白蛇姫物語』のテーマは、“自然と人間の調和”です。

 

物語のラストでは、本土から移り住んできた和人たちが、神の教えを守らず乱獲してしまったため、オシュロコマが絶滅してしまいます。

 

「 自然を大切にすればこそ、人間は生きてゆける」というのが、このお話の教訓です。

 

 

 

ただし、 このラストをドラマでそのまま描くと、問題が出てきます。

 

泰樹じいちゃんたち開拓移民は、悪者となってしまうのです。山や野を切りひらくことは、十勝の自然を破壊する、という意味でもあるからです。

 

 

 

そこで、倉田先生の書く『白蛇伝説』の台本では、鹿追町の『白蛇姫物語』のラストをばっさりカットしています。

 

そして、よその村と争いを避けるためにペチカが自分を犠牲にする、という部分を強調します。こうして、“自分だけの利益より、みんなの利益を考えよう”というふうに、テーマを変更したのです。

 

 

 

 

 

 

 

【元ネタ②】中国の民間伝承『白蛇伝』のあらすじ

 

 『なつぞら‐アニメーション編』では、なつは【東洋動画】に入社し、初の長編アニメ映画『白蛇姫』の制作に加わることになります。

 

これは、【東映動画】(=現在の東映アニメーション)が1958年に公開した『白蛇伝』がモデルとなっています。

 

 

そして、【東映動画】の『白蛇伝』は、中国に古来から伝わる民話・説話の『白蛇伝説』を元ネタにしています。

 

実は、中国に伝わる『白蛇伝』には、時代や地域によってさまざまなバージョンがあります。ここでは、現代のわたしたちにも親しみやすい『京劇 白蛇伝』のあらすじをご紹介します。

 

 

美青年にひとめぼれ

 

 

白娘(ぱいにゃん)は、一匹の白い蛇。峨眉山(がびさん)で千年にわたって修行して、美しい女性に変身できるようになります。また、青い蛇・小青(しゃおちん)は、五百年の修行を経て、活発な女の子に変身できるようになります。

 

白娘は品のある美女に、小青はその侍女に姿を変え、にぎわう西湖(さいこ)の街に遊びにきます。2人は、こわれかかった橋のたもとを通りかかります。

 

 

白娘は、人ごみの中に端正で美しい顔立ちの青年がいるのを見て、一目ぼれします。青年の名は、許宣(きょせん)。薬屋の番頭で、お墓参りから帰る途中でした。

 

 

 

そのとき、大雨が降ってきます。許宣は傘をさしながら、船で帰ろうとします。白娘と小青は、船に同乗させてほしいと頼みます。

 

許宣は快くそれに応じ、3人を乗せた船は向こう岸につきます。雨はまだ降りやまなかったので、許宣は傘を白娘に渡し、自分はずぶぬれになりながら帰ってゆきます。

 

白娘は許宣のやさしさに胸をうたれ、許宣もまた、美しい白娘を思うと夜も眠れないほどでした。

 

 

白蛇姫のほうからグイグイいく!

 

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坤 张によるPixabayからの画像

 

翌日。許宣(きょせん)は傘を受け取りに、白娘(ぱいにゃん)の家をたずねます。

 

白娘は許宣を盛大にもてなすと、

「あなたとは前世からの運命を感じます。あなたと夫婦になれたら、どんなに幸せでしょう」

と語ります。

 

 

 許宣にも、白娘と結ばれたい、という気持ちがありました。しかし、結婚するためのお金がありません。小青(しゃおちん)はこっそり術を使って役所から銀を盗み、許宣にあげます。

 

あくる日、盗難が発覚。疑いをかけられた許宣は逮捕され、遠方の地・鎮江(ちんこう)へ飛ばされてしまいます。白娘と小青は許宣のゆくえを必死に探し、見つけ出します。

 

お金に関して白娘は、

「なき夫の遺したもので、出どころは知りませんでした」

 と釈明します。

 

許宣は、白娘を信じることにします。

 

白娘と許宣は鎮江の地で薬屋をひらき、貧しい人々のために働き、住民から喜ばれます。

 

 

 悪・役・登・場!

 

 

鎮江にある金山寺には、法海(ほうかい)という高僧がいました。法海は、白娘(ぱいにゃん)が白蛇の化身であることを見破り、彼女の正体を確かめる方法を許宣(きょせん)に教えます。

 

それは、端午の節句の日(=現在の5月5日)に黄酒を飲ます、というもの。この習慣には、邪気を追い払う意味合いがありました。

 

許宣は、白娘に無理やりお酒を飲ませます。すると、彼女は白蛇の姿に戻ります。許宣はショックのあまり、命を落としてしまいます。

 

白娘は“人を生き返らせる力がある”という薬草を求め、伝説の山・崑崙山(こんろんさん)へ向かいます。みごと薬草を手に入れた白娘は、許宣をよみがえらせます。

 

妻の真実の愛に気づいた許宣は、夫婦として幸せに暮らします。

 

 

 妖術 vs 法術!

 

 

しかし、2人の幸せを快く思わない者がいました。法海(ほうかい)です。彼は、許宣(きょせん)をだまして金山寺におびきよせ、閉じ込めてしまいます。

 

おこった白娘(ぱいにゃん)と小青(しゃおちん)は水族(=貝や魚、エビたち)に協力を頼み、大津波を起こして金山寺を沈めようとします。法海も負けてはいません。天界の兵士たちを呼び、これに対抗します。

 

子どもを身ごもっていた白娘は法海にせり負け、小青ともに逃げ帰ります。彼女たちがこわれた橋の前にやってきた時、ちょうど金山寺から逃げ出してきた許宣と合流します。

 

(⇦ 白娘と許宣は、はじめて出会った場所で再会をはたしたのです)

 

 

しかし、白娘はやすやすと法海の言葉を信じた許宣を責め立てます。小青は許宣を「裏切者!」とののしり、剣を構え、斬りかからんとする勢いです。

 

 

許宣は自分のあやまちをわび、許しを請います。小青の表情はやわらぎ、剣を納めます。三人は和解し、新しい生活へ向けて歩み出すのでした。

 

                             (終わり)

 

 

『白蛇伝』の物語の変遷

 

 

『白蛇伝』のラストには、さまざまなパターンがあります。

 

① 法海が白娘と小青を塔に閉じこめ、許宣が法海の弟子となるバージョン

② 白娘と小青を塔に閉じこめられるが、小青だけ脱出。峨眉山(がびさん)で修業をつんだ小青が白娘を救い出すバージョン。

 

 

『白蛇伝』はもともとは、“白蛇の妖怪が、若い男を食うお話”でした。

 

それが、許宣が法海の弟子となって、白娘と小青を塔の中(または湖の底)に閉じこめるという妖怪退治のお話”へと変化します。

 

 

さらにそれが、“白娘と許宣の身分違いの恋物語”へと変化してきました。これは、美男・美女に活躍してほしいという、大衆や観客の心理によるものでしょう。

 

 

 

 <アニメ映画との違い>

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skeezeによるPixabayからの画像

 

 

それでは、【東映動画】は子ども向けアニメーションを作るにあたって、中国版『白蛇伝』にどんな変更を加えたのでしょうか?

 

 

大きな変更点は、白蛇以外の動物キャラクターの登場です。

 

 

代表的なキャラクターが、ジャイアントパンダのパンダと、レッサーパンダのミミィです。この2匹は、許宣と心を通わすことのできる動物として描かれています。

 

 

 動物たちを擬人化して描く手法は、まさにディズニー映画にそのもの。子どもたちが『白蛇伝』に親しむことができたのも、この2匹の存在が大きいでしょう。

 

 

 

また冒頭には、許宣が子供のころ、白蛇をかわいがって飼っていたというエピソードが追加されています。

 

これによって、白娘は許宣にひとめぼれしたのではなく、恩返しのために現れたことになります。

 

日本には、『鶴の恩返し』をはじめ『白狐の恩返し』『鹿の恩返し』など、助けた動物がお礼にやってくる昔話がたくさんあります。なじみ深いストーリー展開に変更したのも、ヒットした理由かもしれません。