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『なつぞら』スピッツ主題歌の歌詞「たどり着いたコタン~♪」の意味は?

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 広瀬すずさん主演の朝ドラ、『なつぞら』が始まりました。北海道・十勝の大地で豊かな感性を身につけた女の子が、やがて上京、アニメーターをめざす物語です。

 

ドラマの主題歌は、スピッツの「優しいあの子」です。この記事では、歌詞の最後に出てくる言葉“コタン”について解説し、ドラマとの関連について考察してみたいと思います。 

スピッツ「優しいあの子」の歌詞

 スピッツの草野マサムネさんは、楽曲を作るにあたって実際に十勝を訪れたそうです。

 ドラマで使われている部分の歌詞を、引用します。

 

重いとびらを 押し開けたら

暗い道が 続いてて

めげずに歩いた その先に

知らなかった世界

 

氷を散らす 風すら

味方にも できるんだなあ

切り取られる ことのない

丸い大空の 色を

  

優しいあの子にも 教えたい

ルルルル ルルルル ルル ルルル~

 

 

口にするたびに 泣けるほど

憧れて 砕かれて

消えかけた火を 胸に抱き

たどり着いた コタン

 

 

最後の言葉は「たどり着いた 答え」ではなく、「たどり着いた コタン」となっています。“コタン”とは、何のことでしょうか? 

 “コタン”とは、「集落」や「宅地」を意味するアイヌ語 

 “コタン”とは、アイヌ語で「集落」を意味する言葉です。漢字では、「古潭」とあらわします。5~7軒の家が集まったもので、アイヌの社会を形成する基本単位となります。

 

ただし、一般的な「集落」とは少しニュアンスが違います。というのも、アイヌの人々は狩猟民族です。 

狩猟民族は、獲物がとれる場所に移動しながら生活します。アイヌは魚への依存度が高かったため、河川沿いの場所に住んでいました。魚の獲れる季節だけ、一か所に住むこともありました。 

このため、家が1軒あるような場所も、一定期間だけ仮住まいする場所も“コタン”と呼ぶことがあります。

“コタン”と、ドラマ本編の関連は?

アイヌ文化を体現する、阿川親子

 『なつぞら』の公式ページをみると、気になる登場人物がいます。それが、十勝の深い森に住んでいるという、阿川 弥一郎(中原丈雄)と砂良(北乃きい)の親子です。

 木彫りの熊など、民芸品を作って生計を立てる弥一郎。その娘で、狩りや漁をして暮らす砂良。アイヌ民族の暮らしぶりを思わせる2人です。

 

 

消えかけた火を 胸に抱き
たどり着いた コタン

 

この歌詞は、なつが森で暮らす親子と出会うことで、アイヌ文化と触れ合うことを意味するのでしょう。

 

ところが、阿川 弥一郎と砂良は、生粋のアイヌではありません。弥一郎はかつては東京に住んでいたものの、娘とともに十勝に移住してきたという設定なのです。

東京から移り住んできたのに、先住民のような暮らしぶり。

なぜ、こんなまどろっこしい設定なのでしょうか?

考察:【先住民 VS 開拓移民】を避けるための設定?

推測するに、制作側はなつが異文化と交流するシーンを作りたかったはずです。しかし、アイヌ民族を登場させてしまうと、テーマが複雑になってしまいます。

というのも、開拓移民の多くは、別の土地から北海道に移り住んできた人たち。山や森を切り拓く過程で、もともとこの地に住んでいたアイヌの人々を追い出してしまった側面があります。

 

アイヌの人々は、日本人とは違う独特の言語と文化をもっていました。しかし日本政府は彼らのもつ固有の文化を否定したばかりか、狩猟や漁労で生活していたアイヌの人々を農業に転職させたのです。

子どももお年寄りも視聴する朝ドラで、アイヌ民族をめぐる問題点を取り上げるのはハードルが高かったのでしょう。なつが北海道で学んだ開拓者精神で、アニメーションという“未開の地”に挑むという構成の狙いも、ブレてしまいます。

 

開拓者のスピリットを描きたい。アイヌの人々がもつ異文化も描きたい。でも、【先住民 VS 開拓移民】という対立構造にはしたくない・・・阿川親子の設定は、そのための苦肉の策ではないでしょうか?