公開当時に話題とならなかったため、埋もれてしまう映画ってありますよね。
今回ご紹介する『クライム&ダイヤモンド』も、そんな隠れた名作のひとつです。TSUTAYAの発掘良品などでも紹介されていますが、知名度はいまひとつ。
ハリウッドの古きよき名作にオマージュを捧げながらも、軽妙でテンポの良いクライムムービーです。
『クライム&ダイヤモンド』あらすじ【ネタバレなし】
詐欺師のフィンチ(クリスチャン・スレーター)は、“毒舌ジム”というあだ名の殺し屋(ティム・アレン)につかまり、ホテルの一室に監禁されていました。
“毒舌ジム”は、1950年代~1970年代のレトロ映画が大好き。最近の映画はCGに頼りがちで、ストーリーがないと嘆きます。
そこで“毒舌ジム”は、フィンチに語りかけます。
「お前の語る物語が面白かったら、命を助けてやろう」
フィンチは、ここに至るまでのいきさつを話しはじめます・・・
刑務所に入れられていたフィンチは、奇術師のマイコー(リチャード・ドレイファス)と知り合います。マイコーは、収監される25年前に400万ドル相当のダイヤを盗み出し、ある場所に隠していました。
獄中で意気投合したフィンチとマイコーは、一緒に脱獄してダイヤを取り戻そうとするのですが・・・
2人の行く先には、まるで映画のような奇想天外な展開が待ち受けているのでした。
見どころ
本作を面白くしているのは、なんといっても殺し屋 “毒舌ジム” のキャラクターでしょう。
「悪党しか殺さない」
というモットーをもち、大のレトロ映画フリークでもあります。彼は、自分の信条とするモラルはいまや古典的名作映画の世界にしかない、と考えています。
そんな変わり者の殺し屋から、面白い話をしゃべるように命じられたフィンチ。
ただ、フィンチが体験した宝石探しにまつわる物語は、いまも現在進行形です。
そこで、“毒舌ジム”はこの事件を、往年のラブロマンス映画ふうのハッピーエンドに導こうと働きかけるのです。
いくつわかる? 名作映画からの引用・オマージュが!
『クライム&ダイヤモンド』では、劇中の様々な場面で名作映画がたくさん出てきます。セリフの中や、ジムが劇場や家でみる作品として、サラっと登場します。
引用された作品について、簡単にご紹介します。古典映画に詳しいかたなら、もっと発見できるかも。
『脱出』(1972年)
川下り遊びにきた、4人の男たち。だが、地元住民とのトラブルが引き金となって、命を狙われることに・・・バート・レイノルズ主演。
『ティファニーで朝食を』(1961年)
「束縛されるのが大嫌い」
そんな自由奔放な女性と、しがない物書きの恋の物語。オードリー・ヘップバーンの魅力全開! 挿入歌『ムーン・リバー』は、映画史に残る名曲。
『大脱走』(1963年)
ドイツ軍の捕虜収容所に入れられた、連合国具運の将校たちが大がかりな脱走計画を企てる。
『深夜の告白』(1953年)
不倫の絡む保険金殺人を描いた、犯罪映画。
はじめから犯人や犯行過程をみせる、いわゆる“倒叙型サスペンス”の先がけとなる作品。名監督にして名脚本家、ビリー・ワイルダーの腕が冴えわたる!
『雨に唄えば』(1952年)
作りかけのサイレント映画を、無理やりトーキー(声・音楽のある映画)にすることになった映画会社。
ところが、出演女優のリナは致命的なほど声がよくない。そこで会社の重役たちは作品をミュージカルに変え、リナの声を吹き替えにしようとするが・・・