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NHKの『あさイチ』は、いのっちと有働由美子アナの相性が抜群で、楽しい番組でした。MC2人の組み合わせによっては、面白さが何倍にもなるときがありますよね。
将棋中継も同じです。解説と聞き手の組み合わせによっては化学反応が生まれて、独特の空気感に笑ってしまうことがあります。
将棋に詳しくない“観る将”が見ても楽しめる、解説の棋士と聞き手の女流棋士の組み合わせを集めました。
女流棋士についてはこちら。
- 親子トークにほっこり! 塚田泰明 九段 × 塚田恵梨花 女流初段
- マシンガントーク健在! 加藤一二三 九段(ひふみん) × 山田久美 女流四段
- スルーして欲しいのに、いちいち拾う。 佐藤伸哉 七段 × 鈴木環那 女流二段
- ぶっちゃけトークにたじたじのA級棋士! 三浦弘行 九段 × 竹部さゆり 女流四段
- 怪物くん✕ナイフのような毒舌 糸谷哲郎 八段 × 伊藤沙恵 女流三段
親子トークにほっこり! 塚田泰明 九段 × 塚田恵梨花 女流初段
塚田泰明 九段は、過去に『王座』のタイトルを獲ったこともあるベテラン棋士。『塚田スペシャル』という超急戦(=速攻のこと)の戦法を編み出したことでも有名です。
奥さんは女流棋士の高群佐知子さん。2人の娘さんが恵梨花 女流です。塚田家は、家族そろって将棋のプロという、サラブレッド一家なのです。
そんな恵梨花 女流はまだプロになったばかり。番組の進行もたどたどしかったりします。お父さんの泰明 九段は、そんな娘をしっかりフォロー。漢字が読めないときは教えてあげ、進行に詰まると段取りを仄めかしたりします。ときには、娘の不勉強を叱ることも。娘さんが、家ではお父さんを“パパ”と呼んでいることも判明しました。
一方の恵梨花 女流も負けてはいません。家でのお父さんの素顔を暴露したり、お父さんの執筆した本にダメ出しをしたり・・・素直でハキハキとした性格は好感がもてます。
将棋の解説そっちのけで、親子のやりとりが微笑ましいコンビ。泰明九段が恵梨花 女流を番組内で「あなた」と呼ぶのは、照れの裏返しでしょうか?
マシンガントーク健在! 加藤一二三 九段(ひふみん) × 山田久美 女流四段
将棋の棋士という枠をこえ、“ひふみん”の愛称でバラエティに引っ張りだこの加藤一二三 九段。現役を引退したため公式戦で指すことはありませんが、解説者としてはまだまだ現役。80近いとは思えない頭の回転の早さで、次々と局面の検討をしゃべり続けていきます。
しかし、そこは数々の逸話が残る“レジェンド”ひふみん。解説でも、毎回のように伝説を残してゆきます。“ひふみん”といえば、マシンガントーク。過去のタイトル戦での武勇伝(自慢おおめ)・かわいがっている猫の話・キリスト教の話・滝を止めた話・ストーブを対戦相手に当てた話など、話は暴走機関車のように脱線します。
当たり前ですが、将棋番組にも“段取り”というものがあります。対局者の紹介、初手からの振り返り、スポンサーのお知らせ・・・でも、ひふみんの辞書には『段取り』という言葉はないのです。
テレビのバラエティは編集済みなので表には出ませんが、将棋番組は生放送で長丁場。ひふみんのノンストップ・トークの破壊力は、将棋の解説でなければわかりません。聞き手には、そんなひふみんのトークを軌道修正する高いスキルが求められるのです。
また、ひふみんは高齢のため、立ったままでの解説が困難です。将棋の解説は、通常は解説と聞き手の2人で大盤の駒を動かします。しかし、ひふみんの場合、体調を考慮して椅子に座って解説している時間が多いのです。そのため、聞き手は1人で駒を動かさなくてはなりません。ひふみんが早口なので、余計動かすのは大変なはず。
そんな仕事を手際よくこなすのが、山田久美 女流。若い頃はアイドル的存在で、雑誌に取り上げられたこともありました。現在は女流棋士会の会長も務めるベテラン。さばさばした性格から、『姉御』と呼ばれて親しまれています。山田女流は手をいっぱいに広げて、目にも止まらぬスピードで駒を動かしてゆきます。まさに、名人芸。
ひふみんの年齢を感じさせない、元気な姿。そして、テキパキとした『姉御』の有能さ。両方を堪能できる組み合わせです。
スルーして欲しいのに、いちいち拾う。 佐藤伸哉 七段 × 鈴木環那 女流二段
ひふみん程ではありませんが、佐藤伸哉 七段もバラエティ番組に出演することがあります。ふさふさのイケメン姿で現れたと思うと、突然カツラを外し、ツルツルの頭を惜しげもなく晒す棋士です。
解説では桂馬がはねると、そのタイミングに合わせてカツラを飛ばします。「桂馬がとんだ」⇒「桂がとんだ」⇒「カツラがとんだ」 どうです? 寒いでしょう?
しかし、佐藤 七段は将棋界のダンディ坂野。むしろ、スベリ芸を楽しんでいるぐらいの強心臓の持ち主。ギャグが寒いと自覚していて「スルーしてもらって構わない」と発言しています。ところが、そんな佐藤 七段に天敵が!
それが、鈴木環那 女流です。つぶらな瞳と女子アナ顔負けの滑舌のよさ。しかし、見た目のカワイさから想像もつかない程、独特の空気をもった女流棋士なのです。
佐藤 七段の顔をまじまじと見つめ、
「先生、ほんとイケメンですよね~」
佐藤 七段が解説で指し手が当たると、
「先生、すごぉい」「さすがですね、先生」
しゃべりに独特の間があるため、本気で褒めているのかわからないのです。ギャグも含めて相手の会話を全力で受け止め、ときには予想もつかない方向へ話を無茶ぶりしたりします。これが、名キャッチャー古田敦也でも取れない大暴投。
これには、スベリ慣れている佐藤 七段もタジタジ。調子が狂ってやりヅラそう。
この空気感を文章で説明するのは難しいので、ぜひその目で確かめて下さい。
ぶっちゃけトークにたじたじのA級棋士! 三浦弘行 九段 × 竹部さゆり 女流四段
現在、将棋のプロ棋士の人数は160名前後です。その中でも名人に次ぐトップ10人の実力者たちを、『A級棋士』と呼びます。三浦 九段はそんなA級棋士のひとり。同僚の結婚式の会場で、詰め将棋を解いていたという逸話が残るほどの将棋の虫。将棋にストイックに打ち込む姿から、宮本武蔵にあやかって『武蔵』と呼ばれています。
そんな三浦九段。朴訥な性格で、あまり人前で話すのが得意ではありません。最近は、多少はっちゃけていますが、素は生真面目なまま。
一方の竹部さゆり 女流は、二言も三言も余計なことをしゃべってしまう爆弾娘。強烈な毒舌が持ち味で、人によって好き嫌いがわかれてしまう程。たとえば、
「〇〇先生は、カワイイ子にばかり話しかける」
「あのパーティは参加費が高くて、コスパ悪かった」
「結婚なんて、所詮は見栄」
次々と口をつく爆弾発言。しゃべるボンバーマン。聞いている三浦 九段は、受け一方になってしまいます。竹部 女流がぶっこみ発言をする度、
しどろもどろになって言葉を濁す三浦 九段。
コーヒーを吹きこぼしそうになる三浦 九段。
せきこむ三浦 九段。
挙句の果てに竹部女流、三浦 九段に向かって
「先生は、(バレンタインの)チョコをもらえない人の気持ち、わかりますよね?」
「・・・」
怪物くん✕ナイフのような毒舌 糸谷哲郎 八段 × 伊藤沙恵 女流三段
糸谷哲郎 八段は、“竜王”を保持していたこともある実力者。また、メガネに小太りという外見とは裏腹に、多芸の持ち主でもあります。大阪大学で哲学を学んだインテリでありながら、ポケモンをやったりスイーツに詳しかったりと、キャラの濃い棋士の一人です。
対して、伊藤 女流は近年力をつけてきた女流棋士のひとり。各棋戦で活躍し、タイトル挑戦の常連になりつつあります。普段はゆっくりしゃべるタイプで、見た目にもおっとりしています。
ところが実際は違います。踏み込んではいけない所まで土足で踏み込んでしまう、毒舌の持ち主なのです。棋士は、負けた対局のことは触れて欲しくないもの。にも関わらず、対局で負けたばかりの糸谷 八段に、そのことを涼しい顔で問い出します。
また、対局している棋士がダイエットをした、という話題になったときのこと。伊藤 女流、小太りの糸谷 八段を横目で見ながら、
「先生は・・・?(ダイエットしないんですか?)」
番組中にカラオケの話になったとき。伊藤 女流、
「せんせ♡」と甘い声で
糸谷 八段にアカペラを要求。糸谷 八段も断りきれず、いきものがかりの「ありがとう」や「もののけ姫」を披露するハメに。しかも、エコーもつけられる、というおまけ付き。
聞き終わった伊藤 女流、自ら歌わせたクセに笑い出し、
「美声でしたね~」
と心のこもってない声でねぎらうのでした。