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海外文学・初心者におすすめ!短くて読みやすい名作小説7選【文庫版】

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海外文学・初心者におすすめ!短くて読みやすい名作小説7選【文庫版】

※この記事は、2022年5月に更新しました。

たまには海外の小説も読んでみたいけど、長いのはちょっと・・・そこで、海外文学の初心者でも読みやすい名作を集めてみました。

海外文学の古典は、ハードル高そう ⇦ そんなことない!初心者でも楽しめる

 小説、まして海外文学はとっつきにくそう・・・そう思われているかたも多いかもしれません。でも100年、200年と時代をこえて読み継がれている古典には、現代の私たちにも通ずる“何か”があります。

 というわけで、文庫で気軽に読める、短めの小説をご紹介します。

 

本の紹介では、文庫本の総ページ数も記載しています。ちなみに、マンガ1冊の平均は200ページ前後です。

『異邦人』アルベール・カミュ

出版社(レーベル):新潮文庫

総ページ数:143ページ

あらすじ

「きょう、ママンが死んだ」。母の葬式で涙をみせなかったムルソーは、翌日には何事もなかったようにコメディ映画を観にゆく。その後、「太陽がまぶしかったから」という理由で、アラブ人を殺害してしまう・・・

見どころ

人間らしさが欠如したムルソーは、現代でいう“サイコパス”に当たるのでしょう。この作品は、「不条理小説」として有名です。不条理とは、物事の筋道が立たないこと。

しかし、常識の通用しない主人公だからこそ、物語の展開が予想できないとも言えます。

 

ムルソーを悪いやつだ、と糾弾することは簡単です。もちろん、殺人は許される行為ではありません。でも、私たちだっていつも理にかなった行動をしている訳ではありません。その意味ではムルソーと同じです。

 一般的な道徳観からはみ出しているからといって、個人を攻撃してもよいのか? そんなことを考えさせてくれる小説です。

『老人と海』アーネスト・ヘミングウェイ

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出版社(レーベル):新潮文庫

総ページ数:192ページ

あらすじ

 老漁師のサンチャゴは、天候不順のせいもあって84日間も魚を獲ることができなかった。周囲の人々は、サンチャゴに漁師をやめるように助言する。それでもサンチャゴは、小さな舟で大海原に漕ぎ出すのだった。そんな老漁師がしかけたエサに、大物マグロが食いつくが・・・

見どころ

『日はまた昇る』『武器よさらば』でも知られる、ヘミングウェイの短編。三日三晩にも及ぶカジキマグロとの死闘が描かれています。ですが、サンチャゴが相手にしているの目の前の獲物だけではありません。

 

自分をバカにする周囲の声、自身の「老い」や「孤独」とも闘っているのです。人間の尊厳をかけて大自然と奮闘するじじいに、涙。まさに人間賛歌。アメリカ文学の金字塔です。 

『夜間飛行』アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ

『夜間飛行』サン=テグジュペリ

出版社(レーベル):光文社古典新訳文庫

総ページ数:186ページ

あらすじ

郵便物を飛行機で運んでいた時代。支配人のリヴィエールの厳しい指導の下、飛行士たちは命がけの夜間飛行に臨んでいた。ある夜のこと。優秀な飛行士・ファビアンの操縦する機体が、暴風雨のため遭難してしまう・・・

見どころ

宮崎駿 監督が本作の世界観にあこがれて、『天空の城ラピュタ』を作ったと言われています。確かに飛行シーンの緻密な描写は、空へのあこがれをかき立ててくれます。

 

ただ、それ以上に感じるのは、働く者たちの仕事に対する姿勢です。みんなの安全のために、ベテラン整備士を泣く泣く解雇するリヴィエール。絶望的な状況下でも、任務遂行をあきらめないファビアン。いつの時代も、仕事に真剣な人はカッコいい! 

夜間飛行 (光文社古典新訳文庫)

『変身』フランツ・カフカ

出版社(レーベル):角川文庫

 総ページ数:224ページ

あらすじ

ある朝。夢からさめたグレーゴルは、巨大な毒虫に変身していた。いったい、どうしてこんな事になってしまったのか? 心配した家族が様子を見にくるが、グレーゴルは言葉を発せない。最初は世話をしてくれた家族の心も、しだいに離れていき・・・

見どころ

“海外文学の最高峰”との呼び声も高い、カフカの『変身』。主人公の疎外感は、ユダヤ人であるカフカ自身が受けてきた差別を表現している、という説もあります。

 

でも、深読みしなくとも楽しめるのが『変身』です。

最初は、変わり果てた自身の姿に驚いていたグレーゴル。そんな彼が、状況に順応してゆく姿がユーモラスです。

 手はどこまで届くのか? 体を転がすことができるか? 変わり果てた体を冷静に分析する主人公・・・こんな状況でなぜ落ち着いているんだ、グレーゴル? あんた科学者か! と、思わずツッコミたくなります。

『地下室の手記』フョードル・ドストエフスキー

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出版社(レーベル):新潮文庫

総ページ数:216ページ

あらすじ

20年も地下室に閉じこもっている役人の男。彼は、社会に絶望したという。どうして彼は、世間を拒絶するようになったのか・・・

見どころ

主人公はあまりにも自意識過剰なため、一般社会から離れることを選択します。理性で社会を変革することは無理だと決めつけ、社会をしんらつに批判します。

 

社会のあり方について考えさせられる小説です。しかし、別の見方もできます。中二病にかかったニートが、延々と自分に都合の良いことをまくしたてているだけだ、と。 

 そう考えると、堅苦しい名作文学にも親近感がわいてきます。小説の楽しみ方なんて、人それぞれ。別に、高尚な受け取り方をしなくてもいいのです。

『動物農場』ジョージ・オーウェル

出版社(レーベル):角川文庫

総ページ数:280ページ

あらすじ

ろくにエサももらえず、農場主から虐げられていた「荘園農場」の動物たち。ある日、2匹の豚をリーダーとして革命を起こす。人間を追い出し、動物たちだけで平和に暮らすことを目的に・・・ところが、いつの間にか新たなヒエラルキー(=階級制度)が生まれてゆく・・・

見どころ 

革命が成功したあと、指導者が私利私欲におぼれて新たな独裁者になってゆく・・・現実の社会でも起こっていることですね。このように、強烈な社会風刺がこめられた作品です。

 

動物たちのキャラクターづけは、旧ソ連の政治体制をモチーフにしていると言われています。イソップ童話など動物を擬人化した寓話(ぐうわ)はたくさんありますが、メッセージの鋭さでは本作がピカイチ。

 ロシア、カンボジア、トルコなどの政治体制の知識があると、より心に刺さります。何度読み返しても、深イイ。

『予告された殺人の記録』ガブリエル ガルシア=マルケス

『予告された殺人の記録』ガブリエル ガルシア=マルケス、海外文学、初心者

出版社(レーベル):新潮文庫

総ページ数:158ページ

あらすじ

サンティアゴ・ナサールは、朝の五時半に起きた。サンチャゴは船でやってくる司教を迎えにゆくため、港に向かおうとする。その後、自分がめった刺しにされるとも知らずに・・・

見どころ

これは、よくあるフーダニット系(=だれがやったのか?)の推理小説ではありません。サンチャゴが2人の兄弟から命を狙われていることは、町中の人間が知っていたのです。にも関わらず、どうして事件を防げなかったのでしょうか?

 

兄弟の裁判が行われるうちに、町の住人たちが隠し持っていた差別や嫉妬、憎悪といった負の感情が浮かび上がっていきます。

 犯人はわかっているんです。でも、犯行そのものよりもむしろ、閉鎖的な町だからこその濃ゆい人間関係や群集心理のほうが怖い。 そんな複雑な人間模様が、霧が晴れるように収束してゆくラストは必見! 

いつかチャレンジしたい、おすすめの海外文学【長編】

いつかチャレンジしたい、おすすめの海外文学【長編】

実は、このページで紹介した作家は、他にも有名な長編を書き残しています。短めの作品を読んで「面白い!」と感じた方は、ぜひ同じ作家の長編にも挑戦してはいかがでしょうか?

 

太字で示したのは、教養として読んでおきたい名作小説です。

アルベール・カミュ

・『ペスト』・・・中世のヨーロッパで大流行した伝染病がテーマ。無慈悲な病気と、それに抗う人々を描いた不条理文学。

アーネスト・ヘミングウェイ

・『日はまた昇る』・・・スペインの祭りの狂乱のなか、若者たちの交錯する思いを描いたロスジェネ文学の最高峰。 

・『武器よさらば』・・・第一次大戦のイタリアを舞台に、アメリカ人兵士とイギリス人看護師の交流を描く恋愛小説。 

・『誰がために鐘は鳴る』・・・スペイン内戦に義勇軍として参戦した青年の恋と勇気を描いた戦争文学。

サン=テグジュペリ

・『星の王子さま』・・・砂漠に不時着した飛行士と、どこかの星からやってきた王子さま。生きる上で大切なことを教えてくれるファンタジー。 

・『人間の土地』・・・15年間、飛行士として活動したサン=テグジュペリのエッセイ集。本当の勇気や使命感について考えさせてくれる。

フランツ・カフカ

・『城』・・・いつまで経っても「城」の中に入ることができない測量技師を描いた、不条理文学。この小説は、“一元描写”という小説技法で書かれています。完全に主人公の視点なので、より感情移入がしやすくなっています。 

・『審判』・・・よくわからない理由で裁判を起こされた男の、不可解なてん末。 

ドストエフスキー

・『罪と罰』・・・極貧の大学生がつい出来心で罪を犯し、苦悩するさまを描く。格差社会の不公平感をあらわにする社会小説。
・『カラマーゾフの兄弟』・・・性格のまったく異なる三兄弟を通して、人間の欲望と衝動、表裏一体の愛と憎しみを描いた長編。プロの作家で、この作品を「No.1小説」に挙げる人は数知れず。

ジョージ・オーウェル

・『1984年』・・・思想のすべてが監視される独裁国家の恐怖を描いた、ディストピア小説の名作。

 (⇦ 「ディストピア小説」とは、ユートピアとは逆に、自由や人間性を奪われた恐ろしい未来を描いた小説のこと)

ガルシア=マルケス

『百年の孤独』・・・ラテンアメリカのある村の開拓者一族を通して、百年にわたる栄枯盛衰とそれぞれが抱える“孤独”を描いた、超・長編。「20世紀文学の最高傑作のひとつ」という呼び声が高い。難しいけど。 

・『コレラの時代の愛』・・・内戦とコレラに揺れるコロンビアを舞台に、初恋の女性を待ち続ける男を描いた恋愛小説。