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名作・白黒映画おすすめ8選【ヨーロッパ編】

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※この記事は、2021年7月に更新しました。

 古いヨーロッパの映画って、割とスルーされがち。映画好きな人でも、自分から歩み寄らないことには接点がないでしょう。でも、実はこの分野にこそ傑作が眠っていたりします。

 この記事では、ヨーロッパのモノクロ映画からおススメ作品をチョイス、製作した国別にご紹介します。決してわかりやすくはないかもしれません。ただ、映画好きなら一度は観ておきたい作品ばかりです。

名作・白黒映画【フランス編】

天井桟敷の人々(1945年)

  • 監督:マルセル・カルネ/ジャンル:恋愛
  • 出演:アルレッティ ジャン=ルイ・バロー
  • 上映時間:190分
  • 受賞歴:1979年発表、セザール賞名誉賞&フランス映画史上ベストワン

19世紀のパリ。大勢の人々がゆきかう街の大劇場を舞台に、4人の男たちが美しい女芸人ガランスをめぐって恋のかけ引きを繰り広げます。4人はそれぞれ、まったく異なるタイプ。

・パントマイム芸人のバチストは、口下手だけど優しい青年。

・シェイクスピア俳優のフレデリックは、女ったらし

・表向きは代筆業だが、強盗や人殺しをしているフランソワ

・大富豪のモントーレ伯爵伯爵

 

映画は2幕構成になっていて、前半でガランスは4人のうちのひとりと結ばれることになります。

 後半になると、4人の男たちの運命がガランスひとりのために狂わされてゆきます。オーソン・ウェルズの『市民ケーン』と並び、“映画史上No.1”の呼び声が高い傑作!

 

「愛なんて本や夢の中だけよ」

「愛し合ってるもの同士にはパリは狭いわ」

など、素晴らしいセリフもたくさん出てきます。

恐怖の報酬(1953年)

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  • 監督:アンリ=ジョルジュ・クルーゾー/ジャンル:サスペンス
  • 出演:イヴ・モンタン、シャルル・ヴァネル
  • 上映時間:131分
  • 受賞歴:カンヌ映画祭グランプリ

ベネズエラのさびれた街。職を失い、食うのにも困った移民たちは暇を持て余していました。ある日のこと。500km先の油田で火事が起きてしまいます。

 石油会社の重役たちは、ニトログリセリンを使って火を消そうと考えます。これは“爆破消火”といって、燃えさかる炎の横で爆薬を爆破させ、空気中の酸素を奪って火を消すやり方です。

 

ニトログリセリンをトラックで運ぶことを思いつきますが、トラックには安全装置がほどこされていません。命がけの任務となります。そこで、石油会社の重役たちは、街の失業者たちに2000ドルを払ってニトログリセリンを運ばせることするのですが・・・

選ばれた4人の男たちをめぐる人間ドラマ。白黒であることを忘れるほど、手に汗にぎるサスペンス。今なお色あせない名作です。

死刑台のエレベーター(1958年)

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  • 監督:ルイ・マル/ジャンル:サスペンス
  • 出演:モーリス・ロネ、ジャンヌ・モロー
  • 上映時間:92分

ジュリアンとフロランスは不倫関係にありました。ジュリアンは、フロランスの夫である会社社長を、自殺に見せてなき者にします。

 

ところが、証拠隠滅をはかるため現場に戻ったジュリアンは、不運に見舞われます。会社の電源が落ち、エレベーター内に閉じ込められてしまうのです。フロランスは約束の時間になっても現れないジュリアンを心配して、パリの街を出歩きます。

 やがて物語は、たったひとつのミスから思いがけない方向へ展開し・・・

 

マイルス・デイヴィスによるトランペットの即興演奏も必聴。2010年には日本でもリメイクされていますが、まったくの別物だと思ったほうがよいでしょう。 

名作・白黒映画【イタリア編】

ドイツ零年(1948年) 

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  • 監督:ロベルト・ロッセリーニ/ジャンル:人間ドラマ
  • 出演:エドモンド・メシュケ、エルンスト・ピットシャウ
  • 上映時間:78分

第二次大戦直後の荒廃したベルリン。12歳のエドモンドはとてもデリケートな少年。病弱な父、キャバレーで働く姉、元ナチスの兄と暮らしていました。

 ある日、そんな彼のもとに小学校時代の先生が現れます。先生は、エドモンドにナチの思想をとうとうと説きます。

「弱い人間は、強い人間に滅ぼされるべきだ」

エドモンドは先生の言葉に影響され、父親に毒を盛ろうとするのです・・・

 

“イデオロギーの変更は、子供の純粋な心まで変えてしまう”というのが本作のテーマ。SNSに囲まれ危険な思想に染まりやすい現代だからこそ、見るべき1本と言えるのではないでしょうか。

 本作はイタリアの巨匠、ロベルト・ロッセリーニの戦争三部作のひとつ。後のふたつは、『無防備都市』『戦火のかなた』です。

道(1954年)

  • 監督:フェデリコ・フェリーニ/ジャンル:恋愛
  • 出演:アンソニー・クイン、ジュリエッタ・マシーナ
  • 上映時間:104分
  • 受賞歴:アカデミー外国語映画賞

旅芸人のザンパノは芸のサポートをする女がいなくなったため、その姉妹のジェルソミーナをお金で買い取ります。知恵遅れのジェルソミーナは、事あるごとにこき使われます。

 

ところが、純粋な彼女は「わたしは必要とされてるんだわ!」と思って、健気にもザンパノについてゆくのです。ザンパノがムシャクシャしていれば八つ当たりされ、ザンパノが女を買えば置いてけぼりにされ・・・

 

それでもただただ、ザンパノに尽くすジェルソミーナのなんと不憫なことか。決して美人とはいえないジェルソミーナですが、感情移入してしまうこと間違いなし。イタリアの巨匠、フェデリコ・フェリーニの最高傑作!!

ニーノ・ロータの奏でる悲しいテーマ曲が、深く胸に残ります。元フィギュアスケーターの高橋大輔さんも、フリーの演技でこの曲を使用していました。

鉄道員(1956年)

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  • 監督:ピエトロ・ジェルミ/ジャンル:人間ドラマ
  • 出演:ピエトロ・ジェルミ、エドアルド・ネヴォラ
  • 上映時間:118分

 まだ幼い末っ子のサンドロは、機関士の父・アンドレアを心より尊敬していました。アンドレアは長男や長女には口やかましくて、嫌われていました。それでも一家は、なんとか平和を保っていました。

 ところが、長女のジュリアが妊娠してしまい、家を出ることになります。いっぽうのアンドレアは運転中に事故を起こしそうになり、左遷されます。アンドレアは労働組合に訴えますが、相手にされず。やがてお酒に逃げ、家にも帰らなくなります。 

 

そんなうだつの上がらない父でしたが、幼いサンドロにとっては、やっぱりヒーローでした。彼は父を探しに、街をさまよい歩き・・・

 

家族愛とはいつの時代も不変のもの。白黒だろうがカラーだろうが、関係ありません。世界の映画ファンをあたたかな感動で包んだ、珠玉の一作。

名作・白黒映画【イギリス編】 

第三の男(1949)

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  • 監督:キャロル・リード/ジャンル:サスペンス
  • 出演:ジョゼフ・コットン、オーソン・ウェルズ
  • 上映時間:105分
  • 受賞歴:カンヌ映画祭グランプリ

舞台は第二次大戦後のウィーン。売れない作家のホリーは親友ハリーの誘いで、アメリカからウィーンに呼び出されます。

 ところがホリーがハリーの家を訪ねると、管理人は

「ハリーは事故死した」

と告げるのです。

 

ハリーの葬儀に参列したホリーは、そこでイギリス人のキャロウェイ少佐と出会います。少佐はハリーが密売人だったと明かしますが、ホリーには信じられません。そこでホリーは、独自に調査を始めるのですが・・・

 

プロット(=話の筋)が複雑なので、初見ではすべてを理解するのは難しいかも。しかし、光と影を巧みに使った演出、戦争の十字架を背負ったキャラクター造形の見事さは、今なお一見の価値があります。 

名作・白黒映画【ポーランド編】

地下水道(1956年)

  • 監督:アンジェイ・ワイダ/ジャンル:人間ドラマ
  • 出演:タデウシュ・ヤンチャル、テレサ・イジェフスカ
  • 上映時間:95分
  • 受賞歴:カンヌ映画祭 審査員特別賞

 第二次大戦末期のワルシャワ。ポーランド軍はドイツ軍の激しい攻撃にさらされ、絶望的な状況に追い詰められていました。ドイツ軍に追われたレジスタンス(=抵抗軍)たちは、地下水道に逃げ込みます。

 ところが、暗闇と悪臭、そして迫りくる恐怖のために、皆バラバラになってしまいます。かといって、地上に出ればドイツ軍に殺されてしまいます。

過酷な状況のなか、 地下に閉じ込められたレジスタンスたちは、弱さや醜さを露呈してゆき・・・

 

見ているこっちまで息苦しくなってしまう!!  汚れた地下道をカラーで撮っていたら、こんな閉塞感と孤独感は表現できなかったかも。

『地下水道』はポーランド映画の先駆者、アンジェイ・ワイダの代表作です。彼の監督作では、『灰とダイヤモンド』も抑えておきたい作品です。

 

ハリウッド映画が好きでも、ヨーロッパ映画を敬遠している人は多いでしょう。でも、食わず嫌いをやめて、挑戦してみると、“人生を変えるような一本”に出会えるかもしれませんよ!