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ごめんね!完全なる手の平返し!『コンフィデンスマンJP』第2話のシナリオが凄い!

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※あらすじ&ネタバレは約10分、シナリオ分析だけなら約3分で読めます。

す、すんませんでした! 評価を上方修正させて頂きます。

長澤まさみ主演の月9ドラマ『コンフィデンスマンJP』の第1話を見た私は、思いっきり酷評しました。前半は映画『スティング』の劣化版、後半はそもそも詐欺として成立してないと思ったからです。

 

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ところが、第2話は違った。いや、違いすぎていました。5時間かけてシナリオを分析した結果(← 暇人なのね!)、「これ、ほぼ完ぺきな脚本だぞ!」という結論に至りました。

「冗談じゃねえや! 見くびってもらっちゃ困るんでい!」

寿司屋の大将のセリフが聞こえてくるようです。

でもね~。1点だけ引っかかる場所があるんですよ。

 

まずは、第2話のあらすじ&ネタバレです。よくわからなかった方のために、かなりのページを割いています。長文なので、第2話をご覧になった方は後半のシナリオの分析からお読みください。

 

ドラマの見逃し配信は、こちら。放送済みのエピソードを視聴できます。

 

 

 

 

『コンフィデンスマンJP』第2話の詳しすぎるあらすじ&ネタバレ

 

ロシアのマフィアをだまし損ねる。

 

ダー子(長澤まさみ)は美食家になりすまし、ロシアのマフィア・ウラジミールをガイドブックに載っていない名店に案内します。ウラジミールが連れてこられたのは、リチャード(小日向文世)とボクちゃん(東出昌大)がカウンターの中で寿司を握る、江戸前寿司のお店でした。

「らっしゃい!」

大将のリチャードと寿司職人のボクちゃんは、勢いよくウラジミールを出迎えます。

 

2人は本当に寿司を握っていた訳ではありませんでした。スーパーのパック寿司の中身を、お皿に移し替えていただけなのです。しかし、ウラジミールは出された寿司を絶賛! 「モスクワに出店しないか?」と大将(リチャード)に話を持ちかけます。リチャードは常連さんを見捨てることはできない、と渋い顔。

「自信がないのか? 2億円だすぞ」 ウラジミールは大将(リチャード)に言葉を投げます。

「冗談じゃねえや! どこの誰だろうと唸らせて見せらあ!」 と大将。

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「店は俺に任せて下さい。大将、モスクワで勝負してくだせえ!」 と寿司職人(ボクちゃん)。

 

すると、管理人らしき男が入ってきます。「おたくら何やってんの! このビル明日取り壊すんだよ」 ダー子たちは取り壊し予定のビルを勝手に使っていたのです。

 

あと少しの所でダー子たちの計画は失敗。ダー子とリチャードは一目散に逃げます。置いてきぼりにされたボクちゃんも、命からがら逃げ帰ります。

 

 

見捨てられたボクちゃんは、カンカン。

「君たちとは縁を切る!」と、出ていこうとします。

「待って。寂しいよ」と、ダー子。

「家族でも友達でもないんだ!」と、ボクちゃん。

「でも、恋人同士じゃん!」と、ダー子。

「いちばん違う!」

ボクちゃんは、部屋から出てゆきます。

 

ところが、2か月後。ボクちゃんはダー子とリチャードの前に戻ってきたのです。

 

老舗旅館を食い物にする、にっくきリゾート王

 

戻ってきたボクちゃんは、この2カ月間のあらましを語ります。

 

まっとうな生活をしようと仕事を探していたボクちゃん。地方の温泉町にある老舗旅館【すずや】で住み込みの仕事を得ます。美人女将の(みさお=本仮屋ユイカ)や従業員に温かく迎えられたボクちゃん。そのまま【すずや】で働き続けようと思っていた矢先のこと。

 

女将の操から、【すずや】が経営不振から売却されることになった、と話を聞かされます。売却相手は、『桜田リゾート』。やり手の女社長・桜田しず子(吉瀬美智子)の指示のもと、経営不振の旅館やホテルを次々と買い取っては経営をたて直している、大手のホテルチェーンです。ただし、裏では地上げや談合など汚い手段を用いていました。

 

【すずや】の買収にあたっても、一度買い取り話を断られていました。すると、しず子達は「口こみサイト」に悪意ある書き込みをして、【すずや】の評判をおとしめたのです。

 

【すずや】に現れたしず子は、現在の資産価値を0円と査定。従業員も「使い物にならない」と再雇用しない方針を告げます。

「いくらあれば、【すずや】を売らなくて済むんですか?」 ボクちゃんは操に尋ねます。

「1億5000万円」 操は力なく答えます。以上が、ボクちゃんが経験した2カ月。

 

「桜田しず子から1億5000万、ぶんどりたい!」 ボクちゃんは決意を語ります。

「どうせなら2億いただきやしょう!」 ダー子も気合が入ります。

 

ダー子、桜田リゾートの社員になる

 

さて、桜田しず子には野望がありました。それは、日本を『第2のマカオ』にすること。カジノを誘致して、国の統合型リゾート開発事業に食い込もうと企んでいたのです。しかし、国内には『大山ホテル』という、有力なライバル会社がいました。なんとか『桜田リゾート』に仕事を持ってきたい!

 

しず子は所管の国土交通大事の気を引こうと、接待を繰り返していました。ところが、前任者がスキャンダルで失脚。後任となった水内大臣とはパイプがありません。しず子は裏社会の男・五十嵐を雇って、水内の弱みを握ろうと情報収集をすすめていました。

「せめて、統合型リゾート施設の建設予定地だけでも分かれば・・・」

 

一方のダー子は、しず子の側近になるべく猛勉強をしていました。しず子に接近するには、『桜田リゾート』に就職するのが手っ取り早い、と考えたからです。ガリ勉な大学院生・【松山美咲】になりすまし、見事入社します。ダー子は、桜田リゾートの運営する旅館で仲居として勤務。下働きをしながら、しず子と接近する機会を待ちます。

 

同じ頃。ボクちゃんは、離れ小島にある民宿・【八五郎の宿】に泊まっていました。長らく島の所有者である老人によって運営されていたその宿は、今は孫に引き継がれていました。

 

そのころしず子は、クリーンで知られる水内大臣の黒い噂が出回っていることを知ります。水内の地元・真鶴の建設会社が連日、水内の関係者から接待を受けている、というのです。

「もしや、統合型リゾート開発と、何か関連があるのでは?」

しず子の経営者としての勘がはたらきます。

 

実は、これはダー子たちが撒いたエサ。ネットの噂はボクちゃんが書き込み、真鶴の建設業者を接待していたのはリチャードだったのです。

 

ダー子、渾身のサル芝居

 

そうとも知らず、しず子は松山美咲(ダー子)を呼びつけます。しずこは美咲(ダー子)が、松山建設の社長の娘であることを突き止めていました。松山建設は、水内の地元の建設会社。かつて、松山建設の社長は、水内の後援会の会長を務めていました。美咲(ダー子)が水内とパイプがあることを知ったしず子は、美咲を利用しようと思い付いたのです。

 

もちろん、これはダー子のフェイク。しず子の部下・五十嵐が監視していることに気づいていた美咲(ダー子)は、

「ただいま~」

松山建設の事務所に入っていきます。その姿を確認した五十嵐は、美咲が松山社長の娘だと早とちり。

美咲(ダー子)がそのすぐ後、事務所内で「あ。“ただいま”なんて言っちゃいました? リフォームの相談に来ただけなんです」とごまかしていた事まで知りません。

 

しず子は、美咲(ダー子)に女の武器を使ってでも水内の関係者から、リゾート施設の建設予定地を聞き出すように命じます。しず子と美咲の前に呼び出されたのは、水内の私設秘書を名乗る男(リチャード)。すると、美咲(ダー子)は突然泣き出します。かつて私設秘書(リチャード)から、選挙カーの中でセクハラを受けたと語り出したのです。大げさな芝居で、涙をこぼすダー子。

 

動揺した私設秘書は、「(建設予定地は)真鶴だ!」と答えます。

 

オフィスに戻ったしず子は、真鶴に個人所有の島があることに気づきます。先回りしてその島を押さえておけば、リゾート開発の先手を打てると考えたのです。実は、しず子にその考えを与えるきっかけとなったのは、美咲(ダー子)の書いたレポートだったのですが。

 

鬼社長の心境に変化? ボクちゃんの熱い言葉

しず子たちは、【八五郎島】の視察に向かいます。しず子たちが民宿【八五郎】を訪ねると、島の所有者・小松たけおに扮したボクちゃんが出迎えます。しず子は夕食の席でたけお(ボクちゃん)に2億で島を買い取りたい、と申し出ます。

 

その夜、しず子はたけお(ボクちゃん)の皿洗いを手伝います。

お泊りが多くてつらいものね」

「いえ。宿泊してくれた方が嬉しいです」

「ここはタヌキが多いのかしら?」

「タヌキは出ないスけど」

しず子は続けて桜田リゾートに入ってからの苦労話を語ります。

「自分が悪役に見られても構わない。外資から老舗旅館を守りたいの」

意外なしず子の一面に、素のボクちゃんの心は動かされます。

 

その後、しず子はたけおの部屋で『大山ホテル』の社員の名刺を見つけます。すでにライバル会社の手が回っていると知ったしず子は、意地でも島を買い取るために5億円もの大金を用意させます。『大山ホテル』の名刺も、ダー子が仕込んでいたものだとは知らずに。

 

再び民宿【八五郎】を訪れたしず子は、たけお(ボクちゃん)に5億を差し出します。しかし、ボクちゃんはためらいます。

「本当にいいんですか? 何もない島ですよ?」

打ち合わせにない行動に動揺する美咲(ダー子)を無視して、ボクちゃんは続けます。

「桜田さん。どんな小さな宿にもたくさんの人の想いが詰まっている。お金で頬をたたくような相手に売り渡したくない。あなただってそうでしょう? あの時の気持ち、忘れたんですか?」

 

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ボクちゃんは小さな写真を取り出します。それは、しず子の実家の民宿の写真でした。しず子は、夫婦2人で切り盛りする小さな民宿のひとり娘だったのです。その民宿は差し押さえられ、幼いしず子は取り壊される建物を見つめながら、「絶対この家を買い戻す」と決意したのでした。

 

 

そこへ、五十嵐が慌ててかけこんできます。五十嵐は本物の小松たけおを連れてきました。ボクちゃんがたけおになりすましている事がバレてしまったのです。

 

「危うくだまされるところだったわ。松山! どういうことだと思う?」 しず子は美咲(ダー子)に尋ねます。

「この男(=ボクちゃん)は詐欺師だったということです!」 あっさりボクちゃんを見捨てるダー子。

しず子もボクちゃんに違和感を感じていました。先日の夜、しず子と会話を交わした際、ボクちゃんは業界用語を知らなかったからです。

お泊りとは、前日に仕入れて売れ残った魚のこと。

タヌキとは、夕食抜きのお客のことだったのです。

 

ボクちゃんは外に連れ出され、縄でしばられます。五十嵐は拳銃をボクちゃんの額につきつけると、発砲。

しず子は、五十嵐が連れてきた小松たけおと、5億でサインを交わします。

 

 

あいつもあいつもグルだった! (← ネタバレに気をつけて!)

 数日後。しず子が出社すると、何やら社員が騒いでいます。社内のテレビでは、水内大臣の会見が生中継されていました。

「統合型リゾートの建設地は、沖縄に決まりました」

「お、沖縄?」

しず子は血相を変えて、【八五郎島】に戻ります。すると、しず子が契約した小松たけおとは全く別の人物がいました。その男こそ、正真正銘、本物の小松たけおだったのです。

 

実は、しず子の忠実な部下と思われた五十嵐はダー子とグルだったのです! さらに、五十嵐が連れてきた小松たけおは五十嵐の舎弟、つまり偽物でした。

 

その頃ホテルでは、ダー子やリチャード、五十嵐やニセたけおが祝杯をあげていました。五十嵐たちのことを知らされていなかったボクちゃんはカンカン。ダー子は、ボクちゃんが情に流されたときのために保険をかけていた、と語ります。

「それなら、ボクは初めから必要なかったんじゃ?」 ボクちゃんが質問すると、

「あ! そうかも」 ダー子は平然と答えます。

 

ボクちゃんは「今度こそあんたらとはおさらばだ!」 と分け前の1億5000万円をもって、旅館【すずや】に向かいます。女将の操と暮らそう、と思って【すずや】に入ると、操は料理長と抱き合っている最中でした。恋破れたボクちゃんは、お金だけ置いて立ち去るのでした。

 

1年後。桜田リゾートに売却されていた老舗旅館【すずや】は、今風の旅館に生まれ変わっていました。

 

また、事業失敗の責任を取って桜田リゾートを辞めたしず子は、海辺の小さなペンションにいました。ボクちゃんの言葉が心に響いたしず子は、夫婦で再スタートを切ったのだ。

 

第2話の視聴率は?

第2話の視聴率は、7.7%。オーマイゴッド! 第1話の9.4%から2ポイント近く

下がっています。でも、私の評価はV字回復!

 

とはいえ、心配な数字だなあ。映画化するんでしょ? 大丈夫?

 

ここが素晴らしかったよ、第2話のシナリオ

 

ボクちゃんの真心が、女社長の氷の心を溶かす。

 

第2話の脚本でもっとも秀逸だったのが、次の点です。それは、離れ小島の民宿【八五郎の宿】の小松たけおに扮したボクちゃんが、しず子に説得を試みるシーンです。

「桜田さん。どんな小さな宿にもたくさんの人の想いが詰まっている。お金で頬をたたくような相手に売り渡したくない。あなただってそうでしょう? あの時の気持ち、忘れたんですか?」

 

このボクちゃんのセリフが冷酷な女社長・しず子の心に突き刺さります。しず子は、小さな民宿を手伝っていた幼少時代を思い出します。そして、エンディングで彼女は夫婦2人で小さなペンションを始めるのです。桜田リゾートの社長時代には否定していた、昔ながらの伝統的なおもてなしをするペンションを・・・

 

ボクちゃんのこのセリフが素晴らしいのは、人をだますための嘘ではなく、心の底から出ている言葉だったからです。2か月間、老舗旅館【すずや】で実際に働いたボクちゃんの経験から来るセリフだったのです。だから真実味がある。

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「情に流されやすい」という詐欺師として致命的な欠陥を持っているボクちゃん。しかし、詐欺師として未熟だからこそ、相手の心をうつセリフが言えたのでしょうね。この、いちばん役に立たない奴が、実はいちばん相手の感情を揺り動かす、という構造はシナリオとして見事というほかありません。

 

ツッコミどころと思わせておいて、そこも計算済み! ガクブル!!

第2話でもっとも驚いたのは、裏社会の男・五十嵐もダー子の仲間だったということ。

 

物語の途中、松山美咲に扮したダー子がバスに乗って松山建設を訪れる場面があります。この時、五十嵐はダー子を尾行しているのです。

 

ダー子は松山建設の事務所に「ただいま~」と言いながら入っていきます。五十嵐は、この後よく確認をせず、ダー子が松山建設の社長の娘だとしず子に報告するのです。五十嵐があと10秒でも監視を続けていたら、ダー子の嘘はバレるのに

 

「ただいま~」の一言だけで決めつけるなよ! もう少しきちんと裏付けしろよ! 放送中、私は思わずツッコミを入れてしまいました。こんなの成り立たない。詐欺としてはあまりに都合良すぎる・・・と思っていたら、この尾行までフェイクだったなんて!

 

あえて粗のある脚本と見せておいて、最後でひっくり返すとは! 完全に騙されました。

 

それでもあえて言わせて! 第2話には、致命的なシナリオの欠陥がある!!

 

本当は手放しで絶賛したかった。しかし、2度目に見直したときに気づいてしまいました。第2話でもっとも引っかかるマイナスポイント。それは、しず子がボクちゃんの死が偽装だったと知らされる描写がない、ということ。作中では、五十嵐とダー子とグルであったことを、しず子が気づく場面がないのです。(← もちろん、視聴者は知らされていますよ)

 

これって、よく考えるとおかしくありませんか? しず子は五十嵐がボクちゃんを射殺したと思い込んだままエンディングを迎える訳です。ひと一人見殺しにしておきながら、平然と新しい人生を歩もうとしていることになってしまうでしょ? そう考えると釈然としません。全然きれいな終わり方じゃないのです。ま、普通に見ていたら、気づかないでしょうけど。

 

まとめ

ちょこっと文句を言いましたが、第2話は満足のゆく出来でした。

 

ボクちゃんが守ろうとした老舗旅館【すずや】が最後には今風のリゾートホテルに生まれ変わるところなんか、いかにも古沢脚本らしい皮肉の効いたラストでしたね。

 

第1話からスケールダウンしたと感じる人もいるかもしれません。でも、無理に大風呂敷を広げることがなかった分、脚本としては実にまとまっていたと思います。第3話以降も、この調子でいって欲しいな。