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絶賛?期待外れ?『コンフィデンスマンJP』第1話の脚本の問題点を検証

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※この記事は約10分で読めます。あらすじの部分を飛ばせば、所要4分ほどです。

 

フジの月9ドラマ、長澤まさみ主演『コンフィデンスマンJP』が始まりました。大がかりなセットとハイテンションでテンポのよい演出。「規模が大きすぎる!」「面白い!」と興奮する視聴者が続出しています。

 

その一方で「荒唐無稽すぎる」「わからない」といった声もちらほら。私も出演者たちのオーバーな演技を楽しみながらも、違和感を覚えてしまったクチ。本ページでは『コンフィデンスマンJP』第1話のあらすじを振り返りながら、イマイチに感じた理由を検証してみたいと思います。

 

見逃し配信は、こちら。放送済みのエピソードを全て見ることができます。

 

 

 

 

『コンフィデンスマンJP』第1話のあらすじ&ネタバレ

信用詐欺集団の登場

ホストクラブの女社長・久美子とホストの心人(東出昌大)は、違法カジノの会場へ赴きます。カジノのオーナー・夜桜の麗の見ている前で、久美子と心人は丁半で勝ち続けます。ただし、2人の連勝には理由がありました。

 

丁半の壺ふり(ディーラー)をする政吉(小日向文世)を、あらかじめ買収していたのです。久美子たちは、夜桜の麗からお金を巻き上げるのが目的でした。

「そろそろお止めになった方が・・・」 夜桜の麗は、勝ちすぎる久美子たちに帰ってもらいたい様子。

「正直に言いなよ。金庫に金がないって」 心人が麗にプレッシャーをかけます。

「ここでは常に1億円以上用意しております」 麗も金庫のお金を見せて強がります。

ところが、久美子たちは引き下がりません。持参してきた1億円をかけ、麗に勝負を挑んだのです。

 

「わかりました。その代わり、壺をふる役を交代します」 麗が自ら壺をふります。

しかし、久美子たちは政吉から麗のふり方のクセまで聞いていました。

「半!」 久美子は見事に言い当てます。

「このお金は私のもの」「いや、私のよ」 麗と久美子がもみ合いになっていると、警察が入ってきます。

「夜桜の麗! 賭博の容疑で逮捕する!」

「これは私の金よ!」 麗は日本刀を抜いて刑事に歯向かおうとします。

刑事も銃を抜いて応戦。麗は撃たれて倒れてしまいます。死んだ? 驚いた久美子は、お金を置いたまま逃げていきます。

 

「いつまでやってんですか?」 刑事は死んだふりをしている麗に話しかけます。実は、刑事の男は中古車販売の会社社長。カジノ客になりすましていたのも、中古車販売の社員だったのです。社長が麗と心人に話を持ちかけ、久美子から1億円をだまし取る計画だったのです・・・カジノの金庫に入っていたお金は社長が貸したものでした。

 

と思いきや、さらに裏がありました。社長が会社に戻ってスーツケースを開けると、中身はぬいぐるみ。社長もお金をだまし取られていたのです。

 

久美子の持ってきた1億円と社長が用意していた1億円。まとめて2億かっさらったのはこの3人。

夜桜の麗。正体は、ダー子。

心人。正体は、ボクちゃん。

政吉。正体は、リチャード。

彼らは、信用詐欺集団だったのです。

 

ところがボクちゃんは、「もう人をだますのは嫌だ。足を洗う」とその場を去ってしまいます。

 

 

次のターゲットは、日本のゴッドファーザー

 それから5カ月後。リチャードは船長に扮して、公益法人の会長・赤星(江口洋介)の身辺を探っていました。赤星は、表向きは慈善事業に精を出すやさしいおじさん。しかし、裏の顔は日本の『ゴッドファーザー』として恐れられる経済ヤクザでした。

 

疑り深い赤星は、リチャードが金目的で近づいたことを見破ります。リチャードは赤星の部下に取り囲まれ、ボコボコにされてしまいます。

 

翌日、電話を受けたダー子が病院にかけつけると、瀕死の状態のリチャードが。

「私のせい。私が無理やり引っ張り込んだから・・・」 ダー子は泣き崩れます。

 

赤星は、不正や脱税で貯めこんだ金が数百億円にのぼると見られていました。警察の目をごまかすために、莫大な活動資金を海外に運びたいはず。ダー子はそう睨んでいました。

 

ところが、赤星のファミリーは鉄の結束で結ばれていて、ボロを出しません。裏切者に容赦ない制裁を加える赤星を、部下は恐れているのでしょう。そこで、ダー子はリチャードを送り込み、時間をかけて赤星との信頼関係を築かせました。

 

ついに、赤星がリチャードに貨物船で現金を運び出す計画を持ちかけてきます。ダー子たちは、その機会を狙って赤星のお金を奪い取ろう、と考えていたのですが・・・ダー子たちの企ては失敗に終わり、リチャードは瀕死の重傷を負ったのでした。

 

病院には、ボクちゃんもかけつけます。リチャードはボクちゃんにとっては父親のような存在。

「リチャードの仇は僕がとる!」 ボクちゃんはリチャードの仕事を引き継ぎ、ダー子とともに赤星をだます計画に加わることになります。

 

「船長」という手段はもう使えない。そこでダー子は猛勉強して3カ月でキャビンアテンダントの資格をとってしまいます。

 

赤星に接近

マニラ空港に赤星がいました。

 

CAに扮したダー子と航空会社のドラ息子に扮したボクちゃんが、赤星に接近を試みます。ダー子は赤星の見ている前で、ボクちゃんの荷物をわざと落とします。転がったかばんから、数千万円のお金が見えます・・・

 

ボクちゃんのお金に目をつけた赤星は、ダー子に接近します。お酒を飲ませて情報を聞き出そうとしたのです。

ダー子は、航空会社の息子(ボクちゃん)が借金まみれであること、親の裏金を海外に運び出そうとしていることを赤星に語ります。すると赤星は、ボクちゃんに興味を持ったようす。

 

赤星はダー子とボクちゃんを事務所に呼びつけ、「俺たちのファミリーにならないか?」と誘います。密輸の話を持ちかけたのです。ダー子とボクちゃんが協力を申し出ると、赤星はナイフを突き立て脅します。

「人生で一番大切なものは何だ? 信頼だよ」

 

かくしてダー子とボクちゃんは、信頼を得るために赤星の指令を実行することに。赤星から頼まれた荷物を、警備が手薄ないわき空港から運び出します。ところが、無事に出国してマニラに着くと、マニラの空港でボクちゃんが捕まってしまいます。荷物の中には覚せい剤が入っていました。

 

「誰に頼まれたか言え! 言わないと死刑だぞ」 ボクちゃん警備員に詰め寄られます。しかし、ボクちゃんは黙ったまま。そのまま拘置所に入れられます。すると赤星が現れ、お金の力でボクちゃんを釈放してくれます。最後まで赤星の名前を出さなかったボクちゃんは赤星の信頼を勝ち取り、ファミリーの一員に迎え入れられます。

 

20億の移送を任されることに

ダー子とボクちゃんは、再び赤星の事務所に呼び出されます。赤星は20個のスーツケースを渡し、すべて手荷物で運べと指示します。中には総額20億円となる現金が入っています。

 

舞台は、再びいわき空港へ。CAのダー子の後に続き、赤星とその部下たちが20個のスーツケースを持って搭乗口へと向かいます。すると警視庁の査察部の男が現れ、「その荷物、確認させていただきます」とスーツケースを開けます。しかし、中身はすべて衣料品。

 

査察部の男が帰った後で、赤星の部下によりスーツケースの中身が入れ替えられます。おそらく総額20億円にのぼる現金でしょう。

 

赤星たちは無事、離陸に成功。ダー子たちもホッとしますが、赤星はダー子に詰め寄ります。「情報が査察部に漏れていたのは、バラした奴がいるからだ」と、ダー子とボクちゃんを追求します。

 

すると突然、飛行機が揺れ出します。

ダー子はアナウンスします。「当機は2度のバードストライク(鳥が機体に衝突すること)を受け、エンジンを失いました。重量のある手荷物を放出します」

ダー子と客室係に変装したリチャードは、赤星のスーツケースを次々と機外へ放り投げてしまいます。

赤星「や、やめろ!」 

ダー子たちはパラシュートで逃げ出そうとしますが、赤星がひったくります。部下にパラシュートを突きつけ、「お前、行け!」と命令しますが、部下はおびえて動けません。

 

 

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赤星は自らパラシュートを身に着け、

「俺が成功した理由を教えてやる。誰も信用しなかったからだ!」

そう叫び、スーツケースを追いかけてスカイダイビング!

「俺の金だ! 俺の金だ!」

しかし、鳥取砂丘に降りたった赤星は呆然。スーツケースの中身は、ただの紙きれだったのです。

 

本物の金は、飛行機の中に隠してありました。空港の職員、機内の客、パイロットまですべてダー子の手配した人間たちでした。なんと! いわき空港自体も作り物だったのです。さらに赤星の部下たちもお金で買収していたのでした。

 

『コンフィデンスマンJP』元ネタは『スティング』?

 

『コンフィデンスマンJP』は、いわゆるコンゲームもの。ターゲットに架空の話を信じ込ませて、お金をだまし取るタイプの物語です。騙し騙されたり、二転三転するストーリーが魅力的なジャンルといえます。

 

映画で例えると、『スティング』『オーシャンズ11』、『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』などが挙げられるでしょう。

 

『コンフィデンスマンJP』第1話の前半の賭場のくだりは、完全に『スティング』の馬券場と同じです。このドラマは、脚本家・古沢良太氏のオリジナル作品です。ただし、日本版スティングを目指して作られていることは間違いないでしょう。

 

ちなみに、映画のパロディネタも詰め込まれています。『ゴッドファーザー』『スティング』は、言うまでもないでしょう。賭場で夜桜の麗が丁半の壺をふるところは、富司純子の『緋牡丹博徒』シリーズですね。また、ダー子がおかっぱ頭で「国税局しゃしゃちゅぶ」と言うところは、『マルサの女』のパロディでしょう。

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シナリオの問題? 演出の問題? どうにも残る違和感

 

パズル的シナリオのために犠牲となった、末端キャラの心情

 

前半の賭場、後半の空港。2種類の騙しに共通していることがあります。それは、「1人を大勢で騙している」こと。これは映画『スティング』の賭博場のくだりと、構造的には同じです。

 

しかし、 『コンフィデンスマンJP』には致命的な欠点があります。それは、「この計画に参加している全員が騙しのプロではない」ということ。ダー子、ボクちゃん、リチャードの3人は信用詐欺を生業とするプロ。賭場での詐欺を企てた中古車販売の社長も、強い動機があります。久美子を騙すために必死になるのは理解できます。しかし、それ以外は金で雇われたアルバイトです。

 

彼らが劇団員など、演技にたけた連中ならばまだ話はわかります。しかし、前半でカジノの客を演じていたのは、中古車販売会社の社員たち。後半の空港や機内で赤星を騙していたのは、赤星の部下たち=ヤクザです。彼らは騙しのプロではありません。

 

金をもらっただけで、簡単にカジノの客になりきれるでしょうか? 金をもらっただけで、泣く子も黙るゴッドファーザーを騙せるでしょうか? 演技の素人ばかりでは、どこでボロが出るかわかりませんよね。

 

映画『スティング』は違います。賭博場で騙しに参加する人間は、ほぼ全員が詐欺師。騙しのプロです。また、彼らには街を牛耳る大物ギャング・ロネガンに一泡ふかせてやりたい、という動機もありました。命をかけるだけのモチベーションがあったのです。

 

赤星の部下に、ひとりでも感情のあるキャラがいたら違っていた?

 

第1話では、赤星の部下のヤクザたちは全員が単なるモブキャラでした。でも、この中に1人でも名前のあるキャラクター、つまり感情のきちんと書き込まれたキャラがいたら、どうでしょう?

 

仮にそのキャラをAとします。Aは、ボスである赤星とは固い絆で結ばれていた。あるいは裏切ったら殺されるという恐怖に支配されていた。そんなAに、ダー子たちは裏切りを持ちかける。Aが寝返るか、赤星に仁義を通すかは最後までわからない。ギリギリの状況のなかで最後にリチャードが現れ、Aの感情を揺り動かし、Aはついに赤星を裏切る・・・リチャードの瀕死が偽装だったという設定も生きてくるし、何よりドラマに緊張感が生まれます。

 

登場人物の心の葛藤を描いてこそ、ドラマであると私は考えます。『コンフィデンスマンJP』の第1話は、伏線とその回収にばかり焦点を当てたため、人間ドラマとしての盛り上がりに決定的に欠けているのです。

 

実は、古沢良太氏の脚本はときどきこの傾向があります。「実はこうでした、実はこうでした」とパズル的な作りを優先するあまり、その時その時のキャラクターの心情が置き去りにされているのです。

 

伏線の回収と感動的な秘話が見事にハマり、見るものを唸らせるような脚本もあります。『相棒』などはその典型でしょう。その一方で、『キサラギ』『エイプリルフールズ』のように「これ、道徳的にどうなの?」とか「この時こいつはどういう気持ちで行動をとってるの?」と言う疑問が生じることがあるのです。

 

豪華キャストが仇になった? 断捨離して下さいよ!

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第1話の放送前、長澤まさみは不安をもらしていた?

 

さらに、演出上の問題もあります。主演の長澤まさみを含め、役者陣は第1話のオンエア直前まで映像を見ていないそうです。長澤まさみは、「ダー子というキャラクターがどういう風に映るか心配」と撮影中に不安を抱えていたと話しています。

 

これは、「この演技テンションで全編通して、本当にいいの?」という役者の勘からきた発言ではないでしょうか?

 

『コンフィデンスマンJP』は、全編ずっとガチャガチャした演出が続きます。短いカットを繋いでテンポよく、テンションは高くコメディ調。フジのドラマお得意の演出ですね。なるほど、確かに楽しい雰囲気だし、『リーガルハイ』などはこの手法で成功しています。

 

しかし、『コンフィデンスマンJP』はあくまでコンゲームです。騙し騙されという、スリリングな場面ですら、一本調子のコメディ演出はどうなんでしょう? 長澤まさみや東出昌大は、常に大げさな演劇調のお芝居をしています。赤星にナイフを突き立てられ、生命の危機を感じる場面でもこの調子。

 

これでは、全然緊迫感が生まれません。『ゴッドファーザー』のドン・コルレオーネのような威圧感は、赤星からは1ミリも感じられません。これは赤星を演じる江口洋介の問題というより、受け手のダー子とボクちゃんの演技テンションの問題だと思います。「大げさに怖がっているから、どうせこの場面もフェイク(騙しの部分)なんだろう」と読めてしまいます。やるかやられるか、命がけの場面ではシリアスに、種明かしの場面ではコメディタッチでテンポよく、というように演出を使い分けるべきです。

 

そうでないと、真相を明かされたときのカタルシスが半減してしまいます。『スティング』も『オーシャンズ11』もみんなそうやっているのに。

 

長澤まさみの演技力の問題でありません。彼女はこれまで、幅広い役をこなしています。

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まとめ

 

『コンフィデンスマンJP』はアジア各国での放送も予定されていて、映画化も決まっているそうです。ダー子。ボクちゃん。リチャード。3人のキャラが立っていて、楽しいドラマであることは間違いありません。ここ数年は視聴率で苦戦するフジの月9だけに、応援したい気持ちもあります。

 

第2話以降、ここで挙げたような矛盾点が改善され、気持ちよく視聴者を騙してくれることを期待しています。