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つまらない?前衛芸術?X-MENスピンオフドラマ『レギオン』

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マーベルコミックのスーパーヒーロー映画『X-MEN』シリーズ。人類の突然変異で生まれたミュータントたちが、敵味方にわかれて超能力バトルを繰り広げるアクションエンターテインメントです。

 

その『X-MEN』初のテレビドラマシリーズが『レギオン』です。ところが前評判が高かったにも関わらず、すこぶる評判が悪い。インターネットでは「レギオン つまらない」と検索表示されてしまう始末。

 

はたして、『レギオン』は本当につまらないのか? なぜ、『レギオン』はつまらないと見られているのか? その原因を探ってみたいと思います。(ひどい導入文だな、コレ)

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『レギオン』のおおまかなストーリーとは?

 

本作の主人公はミュータントのデヴィッド・ハラー。『X-MEN』シリーズに出てくるテレパシーの使い手・プロフェッサーXの息子、という設定です。

 

医師から統合失調症と診断されたデヴィッドは、幼いころから精神病院を転々とします。しかし、病院でシドニーという女性患者に出会ってから変化が訪れます。

「自分はひょっとして病気ではないのでは?」

 

デヴィッドはやがて、自分がテレパシーやテレキネシスを使えることに気づいてゆきます。『レギオン』のシーズン1は、デヴィッドが超能力者として目覚めるまでを描いています。なんですけど・・・

 

どこまでが妄想? 見ているこっちもわかりません。

 

物語は、あくまでデヴィッドの視点で語られてゆきます。統合失調症というレッテルを貼られたデヴィッドの頭の中は、日々混乱状態。自分の見ている世界が妄想なのか現実なのか、分かっていないのです。

 

視聴者はそんなデヴィッドに延々と付き合わされます。デヴィッドと一緒に妄想を体験させられる、と言ったほうがよいかもしれません。

 

遅々として進まないストーリー。見せられるのは精神病患者の頭の中。

 

「何だよこれ! 訳わかんねーわ!」

「ごめん。無理」

「つまらん」

「・・・」

 

多くの視聴者が混乱して、脱落していくのも無理はありません。だって、そういう作りなんですから。

 

本国アメリカでも、視聴数はかんばしくありませんでした。と・こ・ろ・が! どういう訳か、早々とシーズン2の制作が決定します。なぜ?

 

『レギオン』は実験ドラマ? 批評家絶賛のわけ。

 

視聴者から評判のよくなかった『レギオン』のシーズン1。ところが、批評家からは絶賛の嵐。デヴィッドたちが現実と非現実を行き来するようすを、革新的な映像表現で描いているのが大きな理由です。

 

『2001年宇宙の旅』のスタンリー・キューブリック、『ツインピークス』のデヴィッド・リンチ、『未来世紀ブラジル』のテリー・ギリアム。そんな映画界の巨匠たちを彷彿とさせる映像と哲学的示唆に富んでいる・・・批評家たちは手放しでほめています。

 

確かに、『レギオン』のビジュアルは斬新です。よく見ると、色調とか部屋の置物の角度まで細かく計算されていることがわかります。

 

たとえば、デヴィッドがアルコール中毒の友人・レニーと話す場面。室内にあつらえたのは、メロン色のソファー、黄緑色のカーテン、黄身がかった茶色のタンス。色調は統一され、タンスの引き戸は大きく開け放たれています。この画面ひとつとっても、ダリなんかの絵画を見ているようです。

 

画面構成の異常なこだわりは、確かに『ツインピークス』を思い出させます。あのドラマでも、監督のデヴィッド・リンチは家具の置き方や部屋の色調にまで気を配っていました。

 

白黒床のモンタージュと、魚眼レンズで撮影したような小人。主人公の意識が混乱したときに登場する『赤い部屋』は、“悪夢”をそのまま映像化したようなインパクトでした。

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あえて“よい”ドラマの方程式を外した? 脚本家の狙いとは?

 

ところで、「面白いドラマ」「よいシナリオ」の定義って何でしょう? 人によって意見はそれぞれでしょうが、次のような項目があげられると思います。

① 主人公が明確な目的をもっている。(感情移入しやすくなる)

② 葛藤がある。(主人公が別のキャラクターと衝突・対立することで、ドラマが生まれる)

③ 伏線を貼って、その回収がきちんとなされている。

 

動画技術が進歩して簡単に作品を巻き戻せるようになってから、とくに③が重視されるようになってきました。ところが、この『伏線の回収』ってヤツがくせ者なんです。伏線って上手に貼らないと、展開が読めてしまってつまらないですよね。

 

「あ。こいつ、そのうち死ぬな」

「こいつはこの後、絶対にもう一度出てくる」

のように、視聴者は物語の先を予想できてしまいます。これによって、衝撃的な展開に驚く、ということが成り立ちにくくなります。いや、どんなに上手に伏線を貼っても、展開を読まれてしまうことは避けられないでしょう。

 

『レギオン』は混乱している人物を主人公にすることで、展開がまったく読めません。何の前触れもなく異形のものが出てきたりするので、心底ビックリするのです。

 

『レギオン』のシナリオを担当するのはノア・ホーリー。ドラマ『BONES』や『ファーゴ』の脚本も執筆しています。人気脚本家であるホーリーが、ドラマを盛り上げる公式を知らないはずがありません。わかってて、あえて外しているのです。

 

現にインタビューで彼は、「デヴィッドを“信頼できない語り手”として描きたかった」と語っています。

 

『ナレーションが嘘をついてはならない』というのはドラマの暗黙のルールですが、あえてそのルールを破っているのがわかります。

 

 

レギオン (字幕版)

 

 

まとめ

アート感覚あふれる革新的な映像と、従来とは異なるストーリーテリング。『レギオン』はテレビドラマの定義を変えようとして作られた、実験映画ならぬ実験ドラマなのです。

 

シーズン1は、わずか8話。ドラマとして面白いかどうか聞かれたら、確かにつまらない(← おいおい!)。でも、新しいゲージュツを見ているような高揚感はあるんです。

 

まあ、そんな実験ドラマを何も『X-MEN』シリーズでやらなくてもいいやん!というツッコミはもっともだと思いますが。