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ドラマ『下町ボブスレー』に見る日本の幻想

 

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ジャマイカの代表チームから不採用とされたことで、『下町ボブスレー』が話題となっています。元々は、2011年に東京大田区の町工場を中心に、ボブスレーで使うソリを開発するプロジェクトが立ち上がったのが始まり。

 

2014年のソチオリンピック日本代表チームに使ってもらう事をめざしますが、問題点が見つかり、結局は採用されませんでした。

 

今度は、平昌オリンピックでの採用をめざします。この頃から、プロジェクトは徐々に巨大化します。有名企業が次々とスポンサーに加わり、『下町ボブスレー』は書籍化、ドラマ化などメディアミックスを展開してゆきます。安倍首相が世界に挑戦するものづくりプロジェクトのひとつとして、国会で紹介したこともありました。

 

しかし、日本代表はドイツ製のソリを使うことを決定、プロジェクトはとん挫してしまいます。この後、日本の大使館が『下町ボブスレー』を世界にアピールします。これにジャマイカのボブスレー連盟が興味を持ち、ジャマイカ代表チームに採用されたという経緯です。

 

ドラマ『下町ボブスレー』に見る、マイナースポーツの現状

 

2014年、NHKで『下町ボブスレー』というドラマが放送されました。プロジェクトの立ち上げから、ソチオリンピック直前までを描いた物語です。脚本は『結婚できない男』などの尾崎将也。主演は、青柳翔、南沢奈央。

 

あらすじは、こんな感じでした。

 東京大田区。親子2人でやり繰りする町工場。2代目の健太郎(青柳)は、飲み屋でのんだくれている柳田美樹(南沢)と出会う。美樹は、ソチオリンピックをめざすボブスレーの選手。彼女は競技で使うソリを作ってほしいと、健太郎に申し出るのだった。

 

このドラマを見ると、マイナースポーツであるボブスレーの選手がいかに冷遇されているかがわかります。ドラマから浮かび上がる実情をあげてみると・・・

① 選手自ら、スポンサーを探すため、各企業を回っている。

② そりは海外発送するだけで150万円かかる。

③ ヨーロッパではF1メーカー、アメリカではNASAが代表チームのソリを開発。

 

ドラマの中で、普段は前向きで明るい美樹がつぶやいた一言。

世の中の人は、ボブスレーなんかどうだっていいんです。フィギュアみたいに必死に見ないから」

 

『下町ボブスレー』も『下町ロケット』も『はやぶさ』も。なぜ町工場が開発するの?

 

同じ技術があるなら、開発資金をねん出できる大手メーカーがやればいいのに。私もそう思っていました。しかし、メーカー側が乗り気でないのには理由があるようです。

 

それは、ボブスレーもロケットも1点ものだ、ということ。大量生産できる製品とは違います。まして、オリンピックに出られる保証はない。打ち上げに成功する保証はない。費用対効果が小さいのが、大手メーカーが二の足を踏む理由のようです。

 

しかし、技術はあってもビッグプロジェクトのノウハウがないのが、町工場。ドラマ『下町ボブスレー』でも、主人公の技術者・健太郎は成功体験がなく自信を持てない人物として描かれています。

 

また、プロジェクトを推進する工場の経営者・間宮は、ノー天気で先走りがちな人物。代表チームがオリンピック出場を決める前から、『下町ボブスレー』のロゴを用いたあげパンを開発してしまいます。

 

ドラマの中では、中長期的な見通しが立っていないまま計画が動き出したことが描かれています。実際のプロジェクトも、多分にこの要素はあったように思われます。

 

肥大化するプロジェクト イメージとはまるで異なる『下町ボブスレー』

 

現実の『下町ボブスレー』プロジェクトは、2013年に中小企業庁(=経済産業省の外部機関)から支援を受けています。100を越える企業がスポンサーとなって、Tシャツが販売されたりロゴをあしらった国際便『下町ボブスレージェット』が運航したり・・・地図をもとにチェックポイントを回るロゲイニングも行われました。

 

いつの間にか、『下町』から連想するイメージとはかけ離れてゆく実態ソリは10号機まで作られていますが、下町工場が制作しているのはソリの一部分のみ。実際には、大手メーカーや大学も設計・開発に加わっているのです。

 

問題なのは、下町の町工場にほとんど利益が還元されていないこと。何のための『ものづくり推進プロジェクト』なのか? 区や国が出した補助金は、どこに消えてしまったのでしょうか? 

 

まとめ

 

今回の騒動は、あくまで結果論。ジャマイカ代表チームだって、プロジェクトに参加した町工場だって最善をめざして行動していたわけで、彼らを責めるのは意味のないことだと思います。

 

私が危惧するのは、「町工場スゲー!」「日本の技術スゲー!」という作られた幻想。近年、日本がいかに世界の人々から賞賛されているか、紹介する番組が多いように感じます。しかし、必要以上に持ち上げていては国際競争力は高まりません。『産業のガラパゴス化』を生むだけではないでしょうか。