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マンネリを打破するシリーズ構成、海外ドラマ『LOST』シーズン3

 

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アメリカのTVドラマは、人気が出るとシーズン3やシーズン4まで続くのは当たり前。シーズン10を越えるドラマも珍しくありません。ただ、長く続くドラマの多くは、刑事ドラマや医療ドラマなど、1話完結型です。

 

そんな中、連続ものでありながら、シーズン6まで続いたのが『LOST』です。『LOST』は、飛行機の墜落事故の生存者たちが、無人島でサバイバル生活をするドラマ。島には、彼ら以外にも“他の者たち”がいて、生存者たちが島から脱出しようとするのを妨げます。

 

物語の『型』を生み出した、画期的なシリーズ構成

 

『LOST』は、ジャック、ケイト、ソーヤー、ロックなど、主要キャラクターがなんと、十数人もいます。そして、各エピソードごとに主人公役が変わってゆくのです。

 

各エピソードのシナリオ構成も独特です。たとえば、シーズン1の第5話を例にあげましょう。

ジャックの過去 ⇒ 無人島でのサバイバル ⇒ ジャックの過去 ⇒ 無人島でのサバイバル ⇒ ジャックの過去 ⇒ 無人島でのサバイバル

 

このように、1話の中で『主人公役1人の過去』『生存者たちの現在の無人島での生活』が、交互に語られてゆくのです。

 

しかも、主要キャラクターの過去を探っているうちに、ある謎も浮かび上がってきます。それは、偶然飛行機に乗り合わせたと思われた生存者たちが、実は過去に接点があったらしいこと。しかし、なぜか皆そのことを覚えていないのです。

 

『LOST』の物語構成は、画期的でした。過去と現在の両面から謎を明らかにしてゆく手法は、全米の視聴者をクギ付けにします。また、批評家の評価も高く、優れたテレビドラマに贈られるエミー賞をいくつも受賞しています。

 

マンネリに変化を加えた、シーズン3の終盤

 

とはいえ、シーズンが進むごとに、この『LOST』の手法も飽きられてしまいます。現に、シーズン2で最高2300万人だった視聴者数も、シーズン3に入ると1200万人ほどに落ち込んでしまいます。

 

しかし、そこは優秀な脚本家が集まったアメリカのTVドラマ。シーズン3の終盤になると、マンネリ化していたパターンに大きな変化を加えるのです。

 

敵のボスが主役? 第20話『誕生』

 

そのひとつが、ジャックたち生存者を苦しめていた“他の者たち”が主人公役を務めること。第20話は、敵役である“他の者たち”のリーダー、ベンの視点で物語が語られます。

 

ベンの過去 ⇒ 生存者グループと“他の者たち”との争い ⇒ ベンの過去 ⇒ 生存者グループと“他の者たち”との争い ⇒ ベンの過去

 

第20話の脚本が巧みなのは、ベンの幼少時代のエピソードは語られるものの、肝心の謎は伏せられたままだということ。大人になったベンが、何の目的で無人島生活を続けているかは、まだ明かされないのです。

 

第21話の脚本は、シーズン屈指の出来!

 

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第21話の副題は、『グレイテスト・ヒッツ』。主人公役は、事故の生存者のひとりでミュージシャンでもあるチャーリー。チャーリーは、未来が見えるというデズモンドから、「君の命は長くない」と告げられていました。

 

無人島では、事故の生存者たちと“他の者たち”が激しく対立していました。というのも、“他の者たち”が妨害電波を使って、外部との連絡を邪魔していたからです。そこで、生存者たちは会議を開きます。敵のアジトに侵入し、妨害電波を切ったらどうか、という案が出ます。

 

命がけの任務に皆がためらっていると、チャーリーが立候補します。自分の最期が近いと悟ったチャーリーは、恋人のクレアや仲間を助けるべく、危険な役目を買って出たのでした。

 

任務実行前、チャーリーは砂浜に座ってメモを書きます。自分の人生で最高だった瞬間ベスト5を紙に書き残そう、というのです。ここからが、上手い。

 

チャーリーの人生ベスト5 ⇒ “他の者たち”撃退計画 ⇒ チャーリーの人生ベスト4 ⇒ “他の者たち”撃退計画  ⇒ チャーリーの人生ベスト3 ⇒

 

という感じで、チャーリーの人生最高の瞬間(=過去)と、生存者グループと“他の者たち”の戦い(=現在)が交互に語られてゆくのです。

 

視聴者は、チャーリーにとって人生最高の瞬間はいつだったのだろう? と想像しながらストーリーを楽しむことができます。いつものようにただ過去を見せるだけでなく、より感情移入できるように工夫を凝らしているのです。

 

また、副題の『グレイテスト・ヒッツ』はベストアルバムを意味します。まさに、チャーリーにとっての“人生のベストアルバム”が語られたエピソードでした。

 

まとめ

 

『LOST』は、とにかく語り口の上手いドラマ。シーズン6まで全122話見るとなると、大変に思われるかもしれません。でも、一度見出したら続きが気になって仕方なくなってしまう面白さ。まだ未見の方がいたら、ぜひ見てほしい海外ドラマです。