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映画化された海外文学、おすすめ5選

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※この記事は、約7分で読めます。 

海外の小説、読んでますか? 日本の小説と違って、とっつきにくいと感じる方も多いかもしれませんね。でも、決して難しいものばかりではありません。とくに映画化されるような小説は、映像をイメージしやすいものが多く、親しみやすいはずです。

 

そこで、映画の原作となった海外小説の中から、初心者でも読みやすい作品を5つ紹介したいと思います。ただ映画化されただけでなく、文学賞を受賞するなど、名作としても名高いものを集めました。

 

有名作品である上に読みやすい!短めのおすすめ海外小説はこちら

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1:『イギリス人の患者』(→ 映画名『イングリッシュ・ペイシェント』)

作者  マイケル・オンダーチェ

出版社 新潮社

 

第二次大戦時のイタリア。野戦病院として使われていた修道院に、全身やけどを負った男と、彼を看病する看護婦がいた。さらに彼女の父の旧友、インド人の工兵が訪れる。戦争によって身体や心に傷を負った4人。修道院で過ごす穏やかな時間は、彼らの傷をいやしてゆくのだった。

 

映画はアカデミー作品賞こそ受賞していますが、ありふれた恋愛ドラマという印象。これに対して原作は、詩のような美しい文体で、過去と現在が交錯して描かれてゆきます。原作者のオンダーチェは、詩人としても活動しています。

 

非常に寡作ですが、ため息が出るほど美しい文章を書く作家です。『ディビザデロ通り』という群像劇もあります。これはきっと、翻訳者の功績でもあるんだろうなあ。

 

 

 

2:『コールドマウンテン』(→ 映画名『コールドマウンテン』)

作者  チャールズ・フレイジャー

出版社 新潮社

 

南北戦争末期のアメリカ。南軍の脱走兵インマンは、故郷に残してきた恋人エイダに会うため、長い道のりを歩いてゆく。

 

映画版は、ニコール・キッドマン、ジュード・ロウら豪華キャストが出演し、王道のラブストーリーとして評価されています。原作では、追っ手を逃れ故郷へ急ぐインマンと、厳しい自然の中で暮らすエイダのエピソードが、章ごとに交互に語られます。エイダに大自然の中で生きる術を教える、ルビーという女の子がとても魅力的。映画では、レニー・ゼルウィガーが演じていました。

 

この小説は、単なる人間ドラマ・戦争ドラマではありません。「タフに生き延びる術」を提示してくれているのです。

 

インマンは軍を脱走したため、人目を気にしながら旅を続けます。その中で出会う南部の人々は、みな問題を抱えています。目が見えない商売人、夫をなくした妻、女の子に手を出してしまった聖職者・・・「生きる」ということは、喪失感や後悔と折り合いをつけることなのだと暗に示しています。

 

一方のエイダ。農場を経営していた父がなくなり、自分で生計を立てねばならなくなります。どの作物を育てればよいのか? 外出しにくくなる冬に備えてどう食物を蓄えればよいのか? 文字通り、大自然のなかでサバイブする方法を学んでゆくのです。男女2人の生きざまを通して、精神的・物理的両面からタフに生きる術を教えてくれる小説といえるのです。

 

 

3:『サイダーハウス・ルール』(→ 映画名『サイダーハウスルール』)

作者  ジョン・アーヴィング

出版社 文藝春秋

 

孤児院で、望まれない子としてこの世に生を受けたホーマー。彼は、孤児院の医師ラーチを手伝い、医術を学んでゆく。だが、ホーマーにはどうしても納得できないことがあった。それは、中絶手術に手を貸すこと。そんな彼の前に、中絶を希望するキャンディという女性が現れる。

 

原作者のジョン・アーヴィングは、現代のアメリカを代表する小説家。欠点を持った登場人物たちを、あたたかな眼差しで描く作家です。『ホテルニューハンプシャー』『ガープの世界』など、彼の作品にはある共通点があります。それは“痛み”をもった登場人物たちが、不幸に見舞われながらも自分らしく生きてゆく、ということ。全編がヒューマニズム・フェミニズムに溢れていて、村上春樹の作品に通ずるものがあります。

 

実は『サイダーハウスルール』は、映画の脚本もアーヴィングが担当しています。映画化にあたって登場人物を削ることに苦労したそうで、その時の苦労を『マイ・ムービー・ビジネス』という本(扶桑社)にまとめています。映画と原作、両方見比べてみるのも面白いかも。

 

www.youtube.com

 

 

4:『アンジェラの灰』(→ 映画名『アンジェラの灰』)

作者  フランク・マコート

出版社 新潮社

 

飲んだくれで、愛国者の父。懸命に一家を支える母。極貧生活にさらされながら、たくましく生きるこどもたち。

 

アイルランド出身の作者の、幼少時代を描いた自伝的作品。映画版は、かなり原作に忠実な内容となっています。エンディング間近には映画でなければできない映像表現があって、思わず「おおっ!」と叫んでしまいました。

 

それでも原作をおススメする理由は、その語り口にあります。どんな不幸が訪れても、決してユーモアを忘れないその姿勢。どうしようもない父親に対して、家族の誰ひとり悪口を言わない優しさ。心にゆとりを持つことで豊かに生きられる・・・そう思わせてくれる傑作です。

 

現代は他人のミスや不道徳な行為に対して、社会全体がとても不寛容に思えます。他人を“口撃”してしまう人たちは、どこか自身の生活に余裕がないのではないでしょうか? いや、自戒をこめての話なんですがね。『アンジェラの灰』の主人公やお母さんのような考え方ができたら、人生は楽しいだろうなあ。

 

 

5:『二十日鼠と人間』(→ 映画名『二十日鼠と人間』)

作者   ジョン・スタインベック

出版社  新潮社

 

大恐慌時代の南カリフォルニア。出稼ぎ労働者のジョージレニーはいつも一緒。頭の弱いレニーが問題を起こすため、ひとつの場所に留まることができない。そんな2人にはいつしか自分たちの農場を持つ、という夢があったのだが・・・

 

ノーベル賞作家・スタインベックの短編。1992年にゲイリー・シニーズ、ジョン・マルコビッチの共演で映画化されています。ゲイリー・シニーズは『フォレストガンプ/一期一会』でダン中尉を演じたことで有名です。小説は、深い余韻を残す傑作。ページ数も少なく、2~3日もあれば読了できるでしょう。

 

 

長編を読むのが苦でない方には、同じくスタインベックの『怒りの葡萄』がおススメ。故郷を追われた農民一家が、カリフォルニアをめざして苦難の旅を続けるお話。ピューリッツァー賞や全米図書賞を受賞した超大作。こちらは、ジョン・フォード監督、ヘンリー・フォンダ主演で映画化されています。

 

 

まとめ・・・海外文学、受難の時代

 

書店に出かけると、海外から入ってくる小説が減っているように感じます。ベストセラーの棚に、海外文学が並ぶことも以前より少なくなりました。

 

でも、日本とは異なる価値観があることを学べるのが、翻訳小説のよさです。何気なく手に取った1冊が、あなたの世界を広げるかもしれませんよ。