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ドラマ『アンナチュラル』第4話にみるシナリオの力

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 ※この記事は、約4分で読めます。

石原さとみ主演の法医学ドラマ『アンナチュラル』が好調のようです。視聴率の高さもさることながら、注目すべきは視聴者の満足度の高さ。ストーリー構成のうまさが、幅広い支持につながっているようです。

 

そこで、よくある事件ものとはどう違うのか? 第4話『誰がために働く』のシナリオを分析して、その秘密を探ってみました。

 

第4話のあらすじは

 

三澄ミコト(石原さとみ)の勤務する法医学ラボに、ミコトの母・夏代(薬師丸ひろ子)が現れる。夏代は、バイク事故でなくなった佐野(坪倉由幸)の解剖を頼みに来たのだった。佐野は、巷で人気の『はちみつケーキ』の製造工場で働いていた。解剖の結果、佐野のくも膜下出血が疑われる。しかし、いつ発症したものかはわからない。過労によるものか? バイクの故障によるものか? 持病によるものだったのか?

そんな中、法医学ラボに脅迫状が届く。はたして、脅迫状は誰にあてたものなのだろうか?

 

法医学ものプラスα

 

ドラマにおいて1話完結タイプの事件ものは、これまでもたくさん制作されています。『相棒』や『ガリレオ』など、挙げたらキリがありません。このタイプの事件ものには、決まった流れがあります。

 

事件が発生 ⇒ 容疑者に聞き込み ⇒ 犯人を暴く

 

法医学ものの場合、必ずしも犯人がいるとは限りません。上の公式にあてはめるとするなら、

 

事故が発生 ⇒ 関係者への聞き込み ⇒ 事故原因を特定

 

となります。

ただ、『アンナチュラル』の場合、事故原因を特定してそれで終わり、ではありません。事故が起こったことで浮き彫りになる『社会問題』にも、焦点をあてています。

第1話では、ウィルスを国内へ持ち込んだと疑われた被害者の遺族が、いわれなのないバッシングを受けてしまいました。

第4話では、テレビでも取り上げられるようになったケーキの製造工場が、従業員に過酷な時間外労働を課していたことがわかります。

 

 

  

構成の秘密

 

さらに、構成上の特徴がもうひとつ。第4話では、佐野の事故の究明とは別に、語られるストーリーがあります。ラボで働くもう一人の解剖医・中堂(井浦新)の過去をめぐる話です。ラボに届いた脅迫状は中堂にあてられたものでした。中堂が過去に承諾もないまま解剖したことで、恨みをかっていることがわかります。

 

通常、1話完結の事件ものの場合、『事件の解決』そのものにウェイトがおかれます。こちらがメインプロット。これに対し、レギュラーメンバーの恋愛や過去のエピソードなど『主要キャラクターをめぐるドラマ』は、あくまでサブプロットとして、おまけ程度に描かれるものです。

 

『事件の解決』  >  『主要キャラクターをめぐるドラマ』

 

 ところが、『アンナチュラル』はこの比重が異なります。『事件の解決』より、むしろ『主要キャラクターをめぐるドラマ』にウェイトがおかれているのです。第4話では、中堂のエピソードの他にも、六郎(窪田正孝)がミコトに恋心を抱くエピソードが描かれていました。

 


『事件の解決』  <   『主要キャラクターをめぐるドラマ』

 

他のドラマでしたら、事件解決に関係ないサブプロットにここまで時間は使わないでしょう。『アンナチュラル』が、1話完結タイプでありながら、連続もののような構成になっているのがわかります。

このため、密度の濃い物語となって、視聴者に満足感を与えているのではないでしょうか。

 

脚本家が使った時間短縮のテクニック

 

それを可能にしているのが、シナリオを担当している野木亜紀子氏の手際のよさ。

たとえば第4話では、弁護士であるミコトの母・夏代は、すでに関係者への聞き込みを済ませた状態でラボを訪れます。通常なら、

 

事故が発生 ⇒ 関係者への聞き込み ⇒ 死因を特定

 

となる流れですが、関係者の証言を夏代が回想を交えながらミコトに伝える、という形で、サラッと処理してしまうのです。ですので、

 

事故が発生   ⇒   死因を特定

 

『関係者への聞き込み』に費やす時間を大幅にカットできます。代わりに、『中堂の過去をめぐる話』に尺をとれるわけです。

 

野木亜紀子氏といえば、『重版出来!』『逃げるが恥だが役に立つ』を手掛けた人気脚本家。原作ものを脚色する手腕は、高く評価されています。しかし、『アンナチュラル』は原作がありません。野木氏初のオリジナル脚本なのです。ドラマ業界に新風を吹き込んだ彼女の脚本。目が離せそうにありません。